プーチン大統領は、日本企業も出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を事実上、ロシア政府の管理下に置く大統領令に署名した。日本が輸入する液化天然ガスのうち約1割を「サハリン2」に頼っているため、今後の調達に懸念が広がっている。今冬、電力不足が懸念される日本は、このエネルギー危機とどう向き合うべきなのか?
■エネルギーを武器に“揺さぶり”をかけるロシア

ウクライナ侵攻以降、ロシアはエネルギー資源を武器に各国にゆさぶりをかけ続けている。プーチン大統領は、ロシアとヨーロッパを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の運転を停止することを示唆した。

さらにロシアの揺さぶりは、日本にも。極東ロシアのサハリンで進められている石油・天然ガス開発事業「サハリン2」には三井物産や三菱商事も出資しているが、プーチン大統領は、全ての事業主体をロシアの新会社に移管する大統領令に署名し、日本にも動揺が広がっている。
■「受けられない条件であれば断念もありうる」
日本は「サハリン2」に液化天然ガスの輸入量の約1割を頼っており、日本政府はガスの安全調達に「サハリン2」は欠かせないとして権益維持を支援する姿勢を明確にした。
萩生田光一経済産業大臣
「企業が単独で判断するのではなく政府としてもしっかりサポートしたい」
一方、「サハリン2」に出資する三井物産のトップは“撤退”も有りうるとの考えを示した。

三井物産 安永竜夫代表取締役会長
「ロシア側からどういう形で出てくるかを見て対応する。受けられない条件であれば我々としては断念することもあり得ます。ただ、安定供給を確保するためには権益を維持していくことがやはり重要だと考えています」
ただ、日本側が出資を希望しても、受け入れるかどうかの判断はロシア側にあり、不透明な状況が続いている。
■全てのオプションを使わないと届かない
また専門家は、日本が「サハリン2」から調達する全量を輸入でまかなうのは難しいと指摘する。
日本エネルギー経済研究所 小山堅首席研究員
(天然ガス調達先の)比率で見ると9%はあまり大きくないように見えるが、日本は世界で中国と1位2位を争う最大の天然ガスの輸入国で、9%はLNG・約600万トンという非常に大きな数字。日本としてはすべてのオプションを使わないと600万トンには届かない。ヨーロッパも追加的なエネルギー調達に必死になるので、ヨーロッパの主要消費国と日本が調達を巡って競争するということが冬にかけて起こるかもしれない。