「花の蜜をなめる“働きバエ“は清潔な証」

ところで、実際にビーフライを使用する生産者は、“ハエ”を扱うことに戸惑いはなかったのだろうか?

──生産者さんの反応はどうでしたか?
中野さん
「高齢の生産者さんは懐疑的でしたが、意外にも若い世代の方はすんなりと受け入れてくれました。

昔は道端に落ちているフンにハエが群がっている光景が見受けられましたが、今は世の中が衛生的になっているので、ハエに悪いイメージを持っている人があまりいないようですね」

岐阜・飛騨高山で代々続く農家の9代目、野尻さんは、現在26歳。大学卒業後、イチゴの栽培を始めるにあたり、出会ったのがビーフライだという。

m Berry Farm代表 野尻麻央さん
「飛騨高山は豪雪地帯として有名な世界遺産白川郷にも近く、冬季は、雪や曇天の日が大半を占めます。そのため、気温も低く、日射量も限られます。そんな中でも、ビーフライは低温や限られた日射量のなかでも素晴らしい働きをしてくれるんです」

まさに「働きバエ」と言って間違いはないような働きっぷりだ。さらに野尻さんはビーフライを利用することで、新たな気づきもあったという。

「ゴミなどがある場所は、ハエが好む餌が沢山ありますから、それでお腹がいっぱいになって、ビーフライとしての受粉活動はしないんです。

逆にビーフライが花の蜜をなめるということは、ハエが好む餌となるものがない、清潔な農園だと証明していることになっているんですよね」

ビーフライと共に働いているからこそ、見つけることができた秘めた魅力。最後に野尻さんは彼ら(?!)のことを大切な「仲間」だとも話してくれた。まさに種を超えた真の友情なのだろう。

メルヘン無双でさらなる普及 ビーフライ応援キャラ“ひろずきんちゃん”

販売元のアピ株式会社の中野さんによると、現在、ビーフライによる授粉は、各地の大学・研究機関で研究が進んでおり、農水省助成金事業としても認められているという。

そこで中野さんは、さらなる普及を目指して、“ひろずきんちゃん“という応援キャラクターを誕生させた。

“ミツバチがひと休みしているあいだに果実を実らせてくれる妖精のような存在になってほしい”という願いが込められているという。

メルヘン無双な世界観でビーフライが農業分野へ活躍の場を広げることができるか、小さな妖精の大きな挑戦が続いている。