イチゴの受粉に必要不可欠なミツバチ。ただここ数年、ミツバチの供給が不安定になっているという。そこで救世主として白羽の矢が立ったのが、まさかのハエ。果物にハエ。汚いイメージを持つ人もいるかもしれないが、全く汚くなく、かなりのメリットがあるらしい。にわかには信じられないが、本当なのか話を聞いてみた。
ミツバチ不足の救世主は“ハエ”? 併用で効果も

子どもから大人まで幅広い年代に愛されるイチゴ。そのイチゴの受粉といえば、ミツバチが、花の上をくるくると飛び回る姿が目に浮かぶ。ところが、ここ数年ミツバチの代わりに活躍しているのが“ハエ”だというから驚きだ。イチゴという人気者の“相棒”がハエとは一体どういうことなのか。国内最大手の花粉交配用昆虫の販売メーカーにそのワケを聞いてみた。
──なぜ、ハエなのでしょうか?
アピ株式会社 蜂産品特販部ミツバチ課 中野剛さん
「ミツバチ不足を補うためです。ミツバチは養蜂家の高齢化や、生育に適した自然環境が減少したり、温暖化など気候変動の影響で、供給に不安定な部分があるんです。そのため新たな花粉交配用の昆虫として期待されているのが“ハエ”なんです」

──ミツバチは『働きバチ』と言われますが、ハエは『働きバエ』となりますか?
「ミツバチとハエにはそれぞれ、違った特性があります。ミツバチは多くの果実や野菜の受粉の手助けを行っています。働きやすいといわれる気温は15~25度で、これより暑くても、寒くても巣箱に閉じこもってしまう習性があるんです。また曇りや雨の日など日照不足でも上手く働くことができないんです。
一方、ハエは主にイチゴやマンゴーなど限られた作物しか授粉しない。さらにお腹が空いたときにだけ働く『気分屋』さん。でも活動しやすい気温は10~35度と幅広く、寒い日や、日照不足でも働いてくれます。またミツバチとは違って刺される心配もありません。
ミツバチとハエを併用すると、お互いの足りないところを補い合えるので、授粉不良がなくなり、収穫量を増やすことができるのです」
なるほど。とはいえ、ハエには「不衛生」というイメージがつきまとう。ハエが農作物の『授粉業』に従事することに問題はないのだろうか。
中野さん
「ハエはハエでも、自然界にいるようなハエとは異なり、医療目的のために飼育されたハエなので汚くはありませんし、不快な匂いも発生しませんよ」
医療用のハエ…?