耳を塞ぎたくなるヘイトスピーチ
「韓国は日本に対して謝罪しろー!このような凶悪な民族がすぐそばにいるんです!犯罪国家と付き合うことは不可能なんです、シュプレヒコール!」
「在日特権を許さない市民の会」(略称「在特会」)を初めて取材したのは2014年、場所は福岡市天神でした。福岡市の中心部に響き渡るあまりにひどい言葉に、撮影はしたものの、報道はしませんでした。「憎悪」をまき散らしてしまうのではないか、と恐れたからです。
「在特会」は2007年に設立され、在日コリアンや中国人への攻撃的な批判を展開してきました。東京で、川崎で、大阪で、ヘイトスピーチは猖獗を極めていました。創設者は、現在「日本第一党」で党首を務める桜井誠氏。福岡県北九州市の出身です。

2016年、東京で単身赴任中だった私は、東京都内での在特会のデモ行進の場にカメラを持って向かいました。
桜井党首は路上で「帰れ、帰れ、帰れ、帰れ、朝鮮人は帰れー!当たり前だろう!おい、さっさと朝鮮半島帰れよ!」と叫んでいました。
こうした言葉は、心を深く傷つけます。レイシズム=人種差別主義に反対する人たちは「カウンター」と呼ばれます。「ヘイトスピーチを止めろ」と大きな声を出していました。カウンターが大きな声を出すのは、ヘイトスピーチが人々の耳に入らないようにするためです。
ヘイトスピーチは、「ある個人を非難する」ものではありません。国籍や民族などでひとくくりにして、暴力的な言動で侮辱したり、それをあおったり、正当化したりすることです。
「ふざけるんじゃねえぞ、てめえら!おい、かかってこいよ、そこの兄ちゃん!おいどうした、それで終わりかい?メガホン持って、アバババで終わりか?アンニョンハセヨ、アンニョンハセヨ、どうしたの?」
桜井党首の実際の言葉です。デモ行進には「朝鮮死ね」「韓国死ね」「核戦争には慣れている、試してみるか?」というプラカードも見えました。属性でひとくくりにして、言葉の刃で心を突き刺していくヘイトデモ。一人一人がどんな人なのかは関係なく、ひとくくりに尊厳を否定する、その姿勢は――。、障害者というだけで次々に刺していった植松聖被告の考え方と、私の中で重なりました。