植松聖被告との対話を盛り込むことに
大阪の歌手パギやんは、投稿の全文を歌詞として、曲をつけて歌ってくれました。それが素晴らしかったので「地上波でも放送できないかな」とTBSラジオの鳥山穣さんに相談したところ、「ならば、一緒にラジオドキュメンタリーを作りませんか」と誘われました。
しかし、当初は植松被告と面会するつもりはありませんでした。本音を言えば、彼の話を聞くのが怖かったからです。
ですが、「現実から逃げている」ことを自覚し、やっと覚悟を決めました。「私は、重い障害を持っている子の親です。家族である私に対して、『なぜ事件を起こしたか』を自分の口から説明してみたい、とは思いませんか」と、拘置所に宛てて手紙を書いたのです。すぐに面会を承諾する手紙が届きました。返信にはこんな言葉がありました。
<植松被告からの手紙>
「目の前に助けるべき人がいれば助け、殺すべき者がいれば殺すのも致し方がありません」
「重い障害を持っている子の親に、こんな話しは誰もしたくありません。もちろん自分の子どもが可愛いのは当然かもしれませんが、いつまで生かしておくつもりなのでしょうか」
このような男と相対した時、「自分の心が壊されるのではないか」と恐怖を覚えました。しかし、記者が自分から面会を申し込んだのですから、逃げることは許されないとも思いました。ところが、実際に面会した植松青年は、拍子抜けするほど普通の青年でした。拘置所の外に出た私はこう話しています。
「印象は、ごくごく普通の青年ですね。率直な印象を言うと、かなりあさはかだな、と思いました。すごく薄っぺらい知識で、重大なことを判断してしまっている。かなり驚きました。普通だったよね…」
接見でのやり取りを再現して制作したのが、『SCRATCH 線を引く人たち』(2017年、RKB・TBSラジオ共同制作)でした。番組には、このころ強い関心を持っていたヘイトスピーチの問題も採り入れました。














