アフリカ!大地の裂け目に巨大湖
このように特異な環境と、そこに適応した生き物の姿を見ることができる世界遺産は他にもあります。そのひとつが、ケニアの世界遺産「グレートリフトバレーの湖群」。

グレートリフトバレーは日本語だと「大地溝帯」といい、アフリカ大陸東部を南北7000キロにわたって縦断する巨大な谷です。実は地殻変動によって生まれた大地の裂け目で、谷の幅は広いところで実に100キロ。この裂け目は今も東西に拡がり続けています。

この大地溝帯の谷底に水が溜まり、湖がいくつもできました。ケニアにある、そうした3つの湖を世界遺産に登録したのが「グレートリフトバレーの湖群」です。ボゴリア湖はそのひとつで、水質は普通の生物では生きていけないほどの強アルカリ性。この過酷な環境に適応したのがフラミンゴです。

番組でボゴリア湖を撮影したのですが、フラミンゴの大群を撮ることができました。フラミンゴの足の皮膚は丈夫で、強アルカリ性にも耐えられるといいます。さらに湖にはスピルリナという強アルカリ性水質でも繁殖する藻類がいて、フラミンゴはこのスピルリナを主食にしているのです。ちなみにスピルリナは、赤い色素の元となるベータカロテンを多く含み、これを食べ続けているのでフラミンゴの身体はピンク色になると考えられています。

自然遺産に登録されるための基準のひとつに、「生態系の顕著な例であること」というものがあります。マダガスカルでは、乾燥林と雨林という対照的な森にそれぞれの環境に適応した動植物が暮らしています。またグレートリフトバレーの湖では、強アルカリ性に適応した生きものたちの姿を見ることが出来ます。共に特異な環境が生んだ生態系を残していることで、その貴重さから世界遺産になったわけです。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太