奇妙な生き物の島!マダガスカル

「星の王子さま」にも登場するバオバブの木々

放っておくと巨大化し、根が惑星を貫き、やがて星を破壊してしまう恐ろしい木・・・サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」でこんな風に描かれた「バオバブ」が、ずらっと林立しているのがマダガスカルです。実際は、実を食べることもできる有用な木で、ずんぐりした幹に、上の方にだけ短い枝葉が生えている姿は愛嬌があります。バオバブがこんな形になったのは乾燥した気候に適応したためで、太い幹には水分を貯め込んでいます。

こうしたバオバブを見ることが出来るのが、マダガスカルの世界遺産「アンドレファナの乾燥林群」です。以前からあった「ツィンギ・デ・ベマラハ厳正自然保護区」という世界遺産に、いくつかの自然保護区や国立公園をプラスして、昨年に今の名前に変わりました。

ツィンギ・デ・ベマラハの奇岩群

ツィンギ・デ・ベマラハでは、塔のような巨岩が密集し100キロも続く様子を見ることができます。その奇観は、石灰岩の大地が浸食されて生まれた自然の造形です。さらに、その林立する巨岩の高みには、岩から岩へと飛び移る白いサルの群れがいます。番組「世界遺産」ではドローンを使ってこのフォン デア デッケン シファカというサルを撮影したのですが、目もくらむような高所での凄いワザを上手く捉えることが出来ました。

このツィンギ・デ・ベマラハだけでも十分に魅力的な世界遺産だったのですが、「アンドレファナの乾燥林群」に変わったことによって、さらにマダガスカルの自然環境の違いが分かりやすくなりました。

インド洋に浮かぶマダガスカル島

マダガスカルはアフリカ大陸の東側、インド洋に浮かぶ島で南北約1600キロ、東西は600キロ弱の縦に長い形をしています。島の西側にはバオバブを含む世界遺産の乾燥林がありますが、東側は雨が多く「アツィナナナの雨林群」という別の世界遺産があります。つまり乾燥した西と雨の多い東という島の環境を象徴しているのが、「アンドレファナの乾燥林群」と「アツィナナナの雨林群」というふたつの世界遺産なのです。

マダガスカル島東部の雨林アツィナナナ

マダガスカル島には南北に走る山脈があり、東から吹く湿った風が山脈にぶつかり、島の東部に雨を降らせています。その雨が生んだのが「アツィナナナの雨林群」で、鬱蒼とした森にはやはり珍しいサルが暮らしています。番組で撮影したのですが、雨林には猛毒の青酸を含む特別な種類の竹が生えていて、その竹を主食にする奇妙なサルを撮ることができました。

雨林の青酸を含む竹を食べるサル

西では奇岩で跳躍するサル、東の森では栄養を独占するため猛毒を食べるサル。マダガスカルの東西の環境の違いが、そこに住む動物たちの生態に現れていて、特色を映像で伝えやすい自然遺産でした。