「強く頑張ろうとは言えない」震災後の“葛藤”

これまで「おせっかいな観光案内人」として、商店街全体を巻き込んで町おこしに取り組んできた宮下さん。
しかし、震災後は商店街の人々に気安く「頑張れ」とは言えませんでした。

「前向きに行こうともまだ先頭に立ってまだ言えない。肩を組んでいる状態。そこから今すぐ進んだほうがいいとか行こうとならなくてもいいと思う、今は仲間がいる安心感だけでいいと思う」(宮下杏里さん)

ところが、宮下さんの明るさに押され、前を向き始めた住民が少しずつ、増えてきています。

訪れたのは、総持寺通り商店街の「門前薬局」。店主の五十嵐義憲さん(76)も、宮下さんに背中を押された1人です。
宮下さん「どんどん前に押していくから。前に前に」
五十嵐さん「やかましいんで。」
宮下さん「動き出してくればね、金沢に今いる店主たちだって戻ってくるかもしれないし」
五十嵐さん「イベントなんかもできると思うし、できるなら何でもやればいいと思う、ちょっとでもにぎやかに、明るく」

門前薬局 五十嵐義憲さん(76)

総持寺祖院にとっても宮下さんは復興に欠かせない存在です。

髙島副監院も、宮下さんについて「背中を押されてというか、一緒にという感じ。ここの寺も復興となってくるとそういった意味の情報発信とか間違いなく必要になってくるし、そういう時には欠かせない人。」と話しました。


今も1月1日の爪痕がそのまま残る門前町。住民たちは復興を信じ続ける1人の女性を先頭に、再び歩み出しています。

「門前が好きでみんな残っているから、離れた人もやっぱり門前のことが好きだし、そういう人だって応援してくれているし、その人たちが戻れる町にしたい」(宮下杏里さん)