受刑者を「〇〇さん」と呼ぶなど処遇改善

そして、もう一つの課題が「処遇の改善」である。去年、名古屋刑務所で複数の刑務官が受刑者へ苛烈な暴行を加えていたことが明るみとなった。法務省は去年4月、22人の刑務官が2021年11月から2022年9月の間に40~60代の男性受刑者3人に計419件の不適切な処遇をしたと認定。このうち事件化が相当だと判断した106件に関わったとして13人を書類送検した。(のちに不起訴処分(起訴猶予))
法務省は名古屋で起きたことをベースとしながら、全国の刑務所のあり方についての検討を進めてきた。2月22日、小泉法務大臣は閣議後会見でその一端を明らかにした。
まず、受刑者に対して「さん付け」にすること、また刑務官に対し先生というような呼び方をやめること。また刑事施設内において使用されてきた俗語隠語、一般社会では、使用されない言葉を廃止、あるいは別の言葉に置き換えること。テレビ・ラジオの情報に接する機会を全国の刑務所で一律に基準を設けていくこと。
これらは去年8月から名古屋刑務所で先行的に実施され、今年4月1日から全刑務所で実施するよう通知を出している。受刑者の「さん付け」では刑務官が注意指示をしないといけない場面でやや戸惑いはあるというが、府中刑務所でもできるところから実践しているのだという。今後は各刑務所がより受刑者の特質に合わせた形にカテゴリー分けされていく施策も進められているという。高齢者や薬物・アルコールの依存症など分類ごとに特化して受け入れる刑務所にしていく方向にあるそうだ。
ある種、「受刑者にやさしい」刑務所へ向けた動きだが、府中刑務所の白川所長は「きめ細かな処遇とともに、しっかりとした規律と秩序を守りたい」と話した。社会の縮図ともいえる刑務所、時代が変容していくその波に合わせるように変わりつつある。
MBS東京報道部記者兼解説委員 大八木友之