金融庁は26日、企業向け保険の保険料を事前に調整していた問題で、損保大手4社に対して業務改善命令を出しました。損保大手各社が一斉に行政処分を受ける異例の事態です。

金融庁が保険業法に基づき業務改善命令を出したのは、「東京海上日動火災保険」、「損害保険ジャパン」、「三井住友海上火災保険」、「あいおいニッセイ同和損害保険」の大手4社です。

4社をめぐっては企業への保険金の支払いを複数の会社で分担する「共同保険」で、水面下で連絡を取り合い、保険料を事前に調整した疑いが持たれていました。

鈴木俊一 金融担当大臣
「大手損保4社が独占禁止法の趣旨に照らして、不適切な行為等を広く行っていたことは大変遺憾」

鈴木大臣は26日、閣議の後の会見でこのように述べ、処分について「経営責任の所在の明確化や、経営管理体制の抜本的な強化等、改善計画を求める」と説明しました。

金融庁によりますと、損保4社による報告で、事前の価格調整行為は企業や自治体など576の契約先で確認されたとしていて、担当者がシェアを維持するために行ったケースや、代理店から打診されたケースなどがあったということです。

また、価格調整の認識については違法または不適切との認識があるケースが3割を超える一方、7割近くは問題意識がなく、金融庁は「コンプライアンス意識や顧客本位の観点が著しく欠けていた」と指摘しています。

特に問題視しているのは経営陣の対応です。

鈴木大臣は会見で問題の要因について、▼企業同士の競争をゆがめる環境要因や▼顧客保護を軽視する企業文化などがあるとしたうえで、次のように述べました。

鈴木俊一 金融担当大臣
「こうした環境を踏まえた対応を経営陣が十分に検討してこなかった結果、不適切な行為等が広く、かつ反復・継続して行われていたものであり、悪質性は高いと考えております」

共同保険をめぐり金融庁は、▼新規の契約をとることが難しい環境の中で現場の営業担当者が利益を上げることを強く求められたり、▼契約先の企業に対する保険の内容とは関係のない営業協力がシェアに影響を及ぼす場合があったりすると指摘。

営業担当者が競争を避け価格を調整する動機が生じやすかったのにもかかわらず、経営陣がこうしたリスクを踏まえたルール作りなど、具体的な対応を取らなかったことについて悪質性が高いとしています。

損保業界に広がり、慣習ともいえる状態になっていた価格調整問題。金融庁は2月末までに改善計画を出すよう各社に求めていますが、再発防止に向けた進捗については引き続き報告を求める考えで、習慣化した価格調整行為の改善への道のりは、まだ始まったばかりと言えそうです。