(ブルームバーグ):フランスのバイル首相が失脚した。誰もが予想した通りだ。この2年間で4人目首相も、過激派が支配し、過半数が存在せず、予算案可決が難題となった国民議会(下院)の行き詰まりを打開できなかった。
マクロン大統領が5人目の首相に誰を選んでも、同じ障害に直面することになる。加えて社会不安や、財政悪化を懸念する市場の不安という圧力も加わる。これは、より不安定な事態が訪れる前の、マクロン時代の最終幕と言えよう。

マクロン氏には現時点でいくつか選択肢があるが、最も可能性が高いのは新政権のルーレットを再び回すことだ。
お馴染みの「マクロンと相性の良い」政治家らの長いリストが既に浮上している。中道右派の重鎮であるグザビエ・ベルトラン氏やセバスチャン・ルコルニュ氏、またはより左寄りのロンバール経済・財務相、ベルナール・カズヌーブ氏らだ。彼らの任務は、バイル氏と同様、分裂した議会をまとめ、今後数カ月で予算案を可決することだ。
非現実的に聞こえるかもしれないが、他の選択肢よりはましだろう。このような行き詰まりには、通常、新たな議会選挙の実施が答えとなるが、マクロン氏の人気は急落しており、宿敵マリーヌ・ルペン氏の国民連合(RN)が、最も人気があることを確認するだけになる可能性が高い。最近の世論調査では、RNが支持率33%とトップで、マクロン氏の与党の2倍以上だ。
混乱を乗り切る道筋は、かろうじてある。
バイル氏の歳出削減予算を拒否した中道左派・社会党は、緊縮策を緩めた予算案なら説得できるというのが、マクロン陣営の見方だ。財政赤字の抑制に時間がかかっても構わない。投資家のフランス資産への警戒感の高まりは抑えることができ、経済成長率は引き続きドイツを上回っている。フランスがギリシャのような危機に陥る可能性は低い。
とはいえ、これは非常に狭い道で、多くの問題が発生する可能性がある。マクロン政権の最大の成果である富裕層への増税と年金改革について、中道左派は撤回を公式に求め、中道右派も既に反発している。
市民や信用格付け機関からの圧力が高まれば、事態はさらに深刻化するだろう。選挙が避けられなくなる可能性もある。マクロン氏の前任ニコラ・サルコジ氏が皮肉ったように「同じ原因は同じ結果を生む」のだ。
つまるところ、今あるより大きな物語は、マクロン時代の終焉ということだ。左右どちらでもない改革の10年間が抱えた矛盾が露呈し、銀行員出身のマクロン氏は今、それらを救おうと左右両方にかじを切らねばならない。
2027年の大統領選が迫る中、後継者はまだ見えてこない。議会政治の混乱とは別に、投資を阻む債務の山と、ベビーブーム世代で限界に達した年金制度という沈黙の重荷は増え続けている。
10年前、政界の新参者だったマクロン氏は、中国や米国への依存は行き止まりに達し、改革が不可欠だと訴え、労を惜しまない野心的な世代として、説得力のあるビジョンを示してみせた。当時同氏が繰り返した合い言葉は「安定」だった。今や、その時代は完全に終わった。
(リオネル・ローラン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、以前はロイター通信やフォーブス誌で働いていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:French Crisis Is a Swan Song for the Macron Era: Lionel Laurent(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:Paris Lionel Laurent llaurent2@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.netもっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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