(ブルームバーグ):市場の乱高下や物価上昇、軍事衝突、AIを巡る懸念が、アジアをはじめ各地で企業の合併・買収(M&A)の逆風となっている。それでもオーストラリアや日本、中国などでは活発な動きが見られ、取引は一定の勢いを保っている。
アジア地域の底堅さは10-12月期末に向け明るい材料となっており、大きなつまずきがなければ、アドバイザーはM&Aの進展に期待している。
法律事務所フレッシュフィールズのパートナー、サラ・スー氏は10-12月期について「取引件数ではなく、規律が決め手となる。顧客は引き続き、規模よりも取引を確実に実行できることを重視している」と指摘した。
取引の大きな部分を占めているのが日本などの先進国市場で、日本では買収合戦がより一般的になりつつある。現在進行中の案件の一つが価格比較サイト、カカクコムを巡る争奪戦だ。
欧州系の投資会社EQTは9月29日、「食べログ」を運営するカカクコムへの株式公開買い付け(TOB)価格を1株当たり3680円から1円引き上げて3681円にすると発表した。同日までだったTOB期限は10月14日まで延長した。
バークレイズのアジア太平洋M&A責任者イーチン・テイ氏によれば、日本企業の取締役会はコーポレートガバナンス(企業統治)改革により、行動様式が根本的に変わり、一連の取引を後押ししている。アジアのM&A市場全体についても、地政学的な不透明感や市場の変動にもかかわらず「驚くほど底堅さを保っている」という。
それでも、日本の7-9月期M&A取引額は前年同期を下回った。ブルームバーグがまとめたデータによると、アジア太平洋全体でも8%減の約3110億ドル(約49兆円)だった。
買い手と売り手の間の評価額の隔たりが引き続き足かせとなっているほか、エネルギーコスト懸念や金利上昇圧力も重しだ。米国債利回りは数年来の高水準に達している。
注目集める豪州
豪州では勢いが続いている。豪州のM&A取引額はほぼ倍増し550億ドルとなり、さらに複数の案件が進みそうだ。金鉱会社ノーザン・スター・リソーシズは、南アフリカのゴールド・フィールズからの約270億ドルの買収提案を退けたばかりだが、提示額が引き上げられる可能性がある。EQTはクリーナウェイ・ウエイスト・マネジメントにも買収提案を行っている。
ゴールドマン・サックス・グループのアジア太平洋M&A共同責任者エド・ウィティグ氏は、「プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が資本投下と投資先からの退出を加速させており、取引をけん引する重要な存在になる」と分析。「成長戦略の一環として取引を検討するグローバル企業も増えており、一部資産の切り離しや買収を模索している」と語った。
AI分野は一段と活発化しており、ブラックロックとIFMインベスターズが支援する企業連合が、アジア太平洋でスタック・インフラストラクチャーが展開するデータセンターの買収を巡り独占交渉に入った。事情に詳しい関係者が明らかにした。
KKRは、AIサプライチェーンでの役割を背景に韓国が恩恵を受けるとみている。一方、ウィティグ氏によれば、中国企業はアジア太平洋やその他の地域で事業を拡大するため、戦略的なM&Aを検討する動きを強めている。特に活発な分野として、インフラとビジネスサービス、エネルギー、産業、消費関連を挙げた。
「慎重な実行」
インドもある。世界の投資家にとって重要な市場となっており、特にインフラやテクノロジーなどの分野で取引が活発だ。ただ、最近はナショナル証券取引所(NSE)とジオ・プラットフォームズの新規株式公開(IPO)に注目が集まっている。
「M&Aはインド企業にとって、成長に要する時間を短縮する手段として重要性を増している。業界再編や能力の獲得、新たな市場へのより迅速な参入などが目的だ」とカイタンのパートナー、ゴータム・スシール氏は説明した。
スシール氏によると、中国と同様、インドでも世界展開を進めるために国境を越えたM&Aを検討する企業が増えている。
一方、紫金黄金国際によるカナダの金鉱会社アライド・ゴールドの買収計画が撤回された例が示すように、波乱も少なくない。その要因が、取引当事者にはコントロールできない外部要因であることも多い。フレッシュフィールズのスー氏は「成功の鍵を握るのは、戦略との整合性、慎重な実行、そして複雑さを増す環境を乗り切る能力」との見方を示した。
原題:Asia Bankers Hope Japan, Australia Can Lift M&A From Doldrums(抜粋)
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