米国株のトレーディングは長年にわたり、圧倒的な割合が日中の取引時間帯に大手取引所で行われてきた。ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダックなどは時間外取引を提供してきたものの、売買は総じて低調だった。

しかし最近、大手取引所は取引時間外でのトレーディングを拡張・促進する計画を策定している。24時間取引が可能な暗号資産(仮想通貨)プラットフォームや特定分野に特化した株式取引プラットフォーム、さらには常時稼働する予測市場のポリマーケットやカルシなど、代替マーケットが広がっていることが背景だ。

取引所は米国外の投資家からの需要増にも直面しており、世界のトレーダーはニュースが飛び込んだ際にいつでも流動性の高い市場へアクセスしたいと考えている。

NYSEとナスダック、ロンドン証券取引所(LSE)はいずれも今後数カ月以内に取引時間を延長する方針だ。これにより、世界各地のトレーダーがそれぞれの都合に合わせて取引所にアクセスできるようになる。

一方、市場関係者の一部は、この移行によって予期せぬ価格変動が生じたり、市場が開いている間は対処が難しい運用上の問題が発生したりする可能性を懸念している。

証券取引所はどのような計画を立てているのか

世界最大級の証券取引所であるナスダック、NYSE、LSEの3取引所は、取引時間を少なくとも1日23時間、週5日に拡大する計画だ。NYSEの完全電子取引市場「NYSE Arca」とナスダックは、夜間取引を12月6日に開始する見通し。

LSEは2027年に「LSE 24」をスタートさせ、一部の証券をロンドン時間午後5時から翌日午前7時50分まで取引できるようにする。

ナスダックは、通常の取引時間とすでにあるプレマーケットおよびアフターマーケットに加え、ニューヨーク時間午後9時から翌午前4時までの新たな取引時間帯を設ける。NYSE Arcaも同様の計画を進めている一方、NYSE本体の取引時間は変更しない。

現在、ナスダックとNYSEの通常取引時間は週5日、ニューヨーク時間午前9時30分から午後4時までだ。両取引所とも通常取引の前後に時間外取引を設けており、早ければ午前4時から一定の取引が可能なほか、午後4時から午後8時までアフターマーケット取引を行っている。

計画されている取引時間帯拡大後も、ナスダックとNYSE Arcaは保守作業や取引処理のため、毎晩1時間の休止時間を設ける。

なぜ取引所は取引時間を延長するのか

幾つかの潮流が、トレーディング時間帯の拡大計画を後押ししている。

第一に、世界の投資家需要が大きく変化している。ここ数年、米市場が世界の他市場を上回る好調なパフォーマンスを示したことで、海外投資家の米国資産への資金流入が進んだ。24時間取引が実現すれば、アジアの個人投資家と機関投資家は深夜だけでなく、現地の通常の時間帯に米市場へアクセスできるようになると期待されている。

もう一つの要因は、暗号資産の急成長だ。常時取引される暗号資産の普及により、ウォール街では市場へ即時かつ途切れることなくアクセスできることへの期待が高まっている。

ロビンフッド・マーケッツやチャールズ・シュワブなどの個人向け証券会社は、すでに一部の株式と上場投資信託(ETF)で夜間取引を可能にしており、注文を代替取引システム(ATS)に回している。

こうした取引所外の市場では数年前から時間外取引が行われているものの、米国の取引所に上場する株式の総取引に占める割合は依然1%未満だ。ATSでの取引も少数の銘柄に大きく集中している。

24時間取引を巡りどのような議論があるのか

支持派は、米国の株式市場を、ほぼ常時取引されている先物や外国為替など他の資産クラスに近づける動きとみている。懐疑派は、夜間の市場休止をなくせば、市場の仲介業者が態勢を立て直すために必要な時間や、危機発生時に当局が介入する余地が失われると警告する。

国際通貨基金(IMF)は、ブロックチェーンを基盤とする市場への移行が進み、それに伴い迅速かつ常時の取引が可能になれば、危機時に規制当局が介入する時間がほとんどなくなる恐れがあると警告している。

また、通常の取引時間外は参加するトレーダーが少ないため、取引高が減少して流動性が薄くなり、売値と買値のスプレッドが拡大し得る。その結果、取引コストが高まり、投資家がより大きく頻繁な価格変動にさらされる恐れがある。取引時間の拡大に伴い、ブローカー・ディーラーなどの市場参加者が夜間の人員を増やす必要が生じ、コストが上昇する可能性もある。

電子取引ネットワークのリキッドネットで米州の市場構造責任者を務めるジェフ・オコナー氏はインタビューで、「夜間市場の取引環境は、実際のところ、より無秩序な市場に近いものになる。市場の厚みは乏しく、スプレッドはとてもワイドだ。そうした環境、あるいはそうした市場でポジションを構築したり解消したりするには、非常に大きなコストがかかる。そのため、機関投資家は24時間取引に参入しようと殺到しているわけではない」と述べた。

とはいえ、12月6日の取引時間延長によって一定の信頼性と枠組みが加わるため、市場関係者はその行方を注視することになる。オコナー氏は、「少なくとも明確な変化が起きている。議論の焦点は『夜間取引は存在すべきか』から『安全かつ効果的に実施するための仕組みは整っているか』へ移っている」と説明した。

米証券取引委員会(SEC)によると、米国に上場している株式の夜間取引時間帯(通常は午後8時から翌午前4時)の取引高は現在、全体の約1%と小さい。ただ、急速に拡大しており、2026年8月までの12カ月間で3倍超に増えた。現在の夜間取引フローは、約37%が米国外の投資家によるもので、通常の米国取引時間帯では海外投資家の取引割合は約10%にとどまる。

規制当局は取引時間の拡大をどうみているのか

規制当局は総じて、取引時間を延長する動きを支持している。

SECは4月、ナスダックの取引時間延長案を承認した。これを可能にするため、清算業務を担う米証券保管振替機関(DTCC)など主要な市場インフラ事業者は6月、米東部時間の日曜午後8時から金曜午後8時まで稼働する24時間・週5日体制に移行した。気配値や取引データを収集・配信する証券情報プロセッサー(SIP)も、夜間取引を支えるための稼働時間延長について規制当局の承認を得た。

SECは9月17日、時間外取引について議論する円卓会議を開催した。SECの委員や大手金融機関の幹部らが、取引時間の延長中に市場の秩序を維持し、十分な取引を呼び込む上での課題について議論した。そこで浮上した懸念の1つが、夜間の人員配置と監視能力を強化する必要性だった。

すでに24時間に近い取引が行われている市場は

外為や金融先物を含む金融市場では、すでに平日の大半を通じてトレーディングが行われ、一部の株価指数オプションも夜間に取引されている。暗号資産もコインベースやバイナンスなどのプラットフォームで常時取引され、週末の休止や祝日の休場はない。

米国外では、韓国取引所が海外投資家による市場アクセスを拡大する取り組みの一環として、取引時間を延長している。

24時間取引への動きとブロックチェーンはどう関係しているのか

証券をデジタル台帳、すなわちブロックチェーン上のデジタルトークンとして管理するトークン化の支持者は、この仕組みによって市場の構成が簡素化され、24時間取引のような変革を導入しやすくなると主張している。

一方、他の証券市場が閉まっている間もトークン化された資産が常時取引されれば、取引が少ない週末や祝日、夜間に価格の乖離や流動性の問題が生じる可能性があると警鐘を鳴らす市場参加者もいる。

カルシとポリマーケットはどう関係しているのか

ここ数年、一般のトレーダーがスポーツや政治、金融市場の結果に賭けるため、カルシとポリマーケットの両プラットフォームに押し寄せ、予測市場の人気が急上昇した。話題を集める常時稼働型市場の成長は、従来型の取引所に対し、取引時間を延長して新たな需要を取り込むよう促す圧力となっている。

従来型の取引所にとって競争上のリスクをさらに高めているのが、人気を集める「無期限」先物だ。無期限先物はデリバティブ(金融派生商品)の一種で、従来の先物と異なり満期がない。

いつでも利用できる暗号資産プラットフォームで取引される無期限先物などの代替資産が台頭する中で、取引時間を延長しなければ、トレーダーが流出しかねないと従来型の取引所は危惧している。

原題:24/7 Stock Trading Is About to Test Financial Markets: Explainer(抜粋)

--取材協力:Lydia Beyoud.

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