(ブルームバーグ):米金融大手ゴールドマン・サックス・グループで次期最高経営責任者(CEO)の有力候補と長く目されているジョン・ウォルドロン最高執行責任者(COO)には、トップ就任までに取り組むべき課題が山積している。
まず必要なのは、交代がデービッド・ソロモンCEOの他の有力な側近らにどのような影響を及ぼすかを見極めることだ。対象には、トレーディング部門トップのアショク・バラダン氏、資産・ウェルスマネジメント部門トップのマーク・ナックマン氏、バンキング部門トップのダン・ディーズ氏、デニス・コールマン最高財務責任者(CFO)が含まれる。
そのためには、ウォルドロン氏はソロモン氏の助言を仰ぐとともに、自らが培ってきた企業内の調整役としての手腕を発揮する必要がある。ソロモン氏(64)が厳しい局面で反発に直面した際には、ウォルドロン氏が怒りを募らせるパートナーらをなだめ、対立の激化を防いだこともある。
事情に詳しい関係者1人が非公開情報を理由に匿名で明らかにしたところでは、ソロモン氏に近い複数の幹部は、同氏が遅くとも2028年までに退任すると見込んでいる。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、ゴールドマンの取締役会が来年にもウォルドロン氏をCEOに就任させる案を協議したと報じた。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マイク・メイヨー氏によると、ウォルドロン氏(57)がこのポストに最適な人物であることに疑いの余地はない。
「議論の余地はほとんどない」とメイヨー氏は述べた上で、「真の問題は、極めて重要なこの4人の幹部をどう処遇するかだ。自分の子供の中で誰を一番かわいがるのか、ということだ」と説明した。
現代的な企業としての組織形態を取りながらも、かつてのパートナーシップ制の名残を一部とどめるゴールドマンで、強い姿勢で物事を推し進めるソロモン氏に対し、ウォルドロン氏は穏健な調整役を務めることが多かった。
ソロモン氏が8年前にCEOに就任して間もなく、ウォルドロン氏を社長に起用して以来、同氏は後継者の最有力候補と目されてきた。
ソロモン氏とウォルドロン氏は経営委員会を大幅に拡充した。同委員会は46人の幹部を擁するまでに拡大し、その多くが昇進を巡って競うことになる。事情に詳しい関係者によると、両氏もメンバーを務める取締役会では、さらに数階層下の幹部まで含めた後継人事について協議しているが、こうした決定に不満を抱く幹部が出ることは避けられない。
ゴールドマンの広報担当トニー・フラット氏は28日、「後継人事について確定した日程はない」と発言。今回の記事についてはコメントを控えた。
人材引き留め
ウォルドロン氏には、異例となる取締役のポストに加え、現在の価値で合計約2億ドル(約315億円)に上る2件の特別報酬が付与され、ゴールドマンにとどまるインセンティブとなってきた。直近の引き留め報酬が5年間を対象として付与された際にも、ゴールドマンに近い多くの関係者は、その5年が経過するかなり前にCEOの交代が実現するとみていた。
次期CEOがゴールドマンの最上級幹部をどう引き留めるかは重要な問題だ。ウォルドロン氏自身も、他のウォール街の金融機関から引き抜きの対象となってきた。このため、トップの座を逃した同僚を引き抜こうと、競合銀行やバイアウト投資会社、ヘッジファンドがどのように働きかけてくるかを身をもって知っている。
バラダン氏はゴールドマンのトレーディング部門の好調をけん引し、株式トレーディングがウォール街で3四半期連続の最高記録を更新したことで脚光を浴びている。ナックマン氏は、4兆ドル規模の資産運用部門を拡大するため、相次ぐ買収を主導している。
ディーズ氏は、6月に実施された過去最大規模のスペースXの新規株式公開(IPO)でゴールドマンが手掛けた業務の中心的な役割を担った。コールマン氏も、社内の業務運営を一層幅広く担うようになっている。
一方、ウォルドロン氏は、AIをゴールドマン全体に導入して効率向上を図るプログラム「OneGS 3.0」構想を主導している。
今年に入り、ウォルドロン氏はAIがすでにゴールドマンの人員に及ぼしている影響について言及し、同行の「人間による組み立てライン」は一段とデジタル化されるとの見方を表明。従業員数がどう変化するかは分からないとしつつ、ゴールドマンは「より拡張性の高い」組織になると考えていると述べた。
ウェルズ・ファーゴのメイヨー氏は、約10年前にウォルドロン氏と初めて会った際、同氏に感銘を受けたと話す。ウォルドロン氏は、バーモント州のミドルベリー大学で文学を専攻していた。
「それまでとは違うタイプのゴールドマン幹部だった。私が尋ねた質問全てに答えてくれた。非常に誠実な人物という印象だった」とメイヨー氏は述懐。「リベラルアーツ・カレッジで英文学を教える教授だと言われても、驚かなかっただろう」と語った。
これは、メイヨー氏がソロモン氏から受けた印象とは大きく異なる。初対面の際、メイヨー氏がソロモン氏にDJの活動をしていることについて質問すると、同氏はそっけなく一言、「本当に」と問い返し、その後10秒間、気まずい沈黙が続いたという。
原題:Goldman’s Heir Apparent Faces Tough Task Keeping Deputies Happy(抜粋)
--取材協力:Sridhar Natarajan.
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