(ブルームバーグ):ドイツ西部デュイスブルクにある船舶技術・輸送システム開発センター(DST)の廊下には、欧州で最も交通量の多い水路、ライン川で将来使われるかもしれない船舶の模型や小型試作船が並ぶ。
DSTの研究者は今年、ライン川で新たに生じている問題への対応に取り組んでいる。欧州各地が夏に干ばつに見舞われ、ライン川の水位は先週、過去最低を記録し、船舶輸送の混乱が長引く。気候変動でこうした異常気象のリスクが高まる中、ライン川に依存してきた産業は対応を迫られている。
「ライン川が突然、不確実性要因になった。信じられない」と、DSTの研究者シリル・アリアス氏は話す。同僚らは、水深が浅くても航行しやすいよう、小型のプロペラや外輪を備えた船舶の開発に取り組んでいる。
ライン川は、欧州の工業中心地にある工場と世界市場を結ぶ重要な輸送経路だ。沿岸にはドイツ化学メーカーのコベストロやBASF、英石油大手シェル、ドイツ製薬会社バイエルなどが運営する大型化学工場、製鉄所、製油所が並ぶ。
しかし現在、一部地点の水位は1880年代以降で最低となっており、企業はライン川をいつでも使えるとの前提がもはや成り立たなくなる恐れに直面している。

数カ月に及ぶ混乱で、化学メーカーは生産の削減や、一部製品について不可抗力条項の発動を余儀なくされている。同時に、過去の干ばつを受けて耐性強化に投資した企業と、そうでない企業との差も鮮明になった。欧州の化学業界は既に、需要低迷や高止まりするエネルギーコスト、中国などの低コスト生産者との競争激化に直面している。
コンサルティング会社ローランド・ベルガーのパートナー、ルイルイ・ゾンルーエ氏は「化学業界は既に生き残りを懸けて闘っている。必要な対策投資を多くの企業がしてこなかった理由は理解できる」と話した。
ライン川の水位低下で輸送コストも上昇している。同じ量の貨物を運ぶのに、より多くのはしけが必要になるためだ。運賃は現在、初夏の約5倍に達している。ドイツ化学メーカーのランクセスやシェルなどは一部輸送を鉄道や道路に切り替えたが、こうした代替手段もコストが高い。
一方、今回の混乱で産業界がどう適応できるかも浮き彫りになっている。2018年の深刻な干ばつで船舶輸送がほぼ停止したのを受け、一部企業はライン川の水位が低くなっても航行できるよう設計した船舶や、代替となる鉄道・道路網に投資した。こうした投資により、従来型のはしけの航行が困難となっている今年も貨物輸送を維持できている。
例えば化学大手BASFは、物流会社HGKグループと共同で、水位が低い状況でも従来型船舶より大幅に多くの貨物を運べる新世代の低水位対応船を開発した。BASFはルートヴィヒスハーフェンの拠点で代替輸送網の強化も進めており、今年の低水位による「差し迫った重大な経済的損失」は見込んでいないとしている。
ゾンルーエ氏は「今回の混乱で、18年の深刻な低水位を受けて対策に投資した企業と、そうでない企業との差が浮き彫りになった」と指摘した。
ただ、業界全体が迅速に対応するのは難しい可能性がある。ドイツで利用できる喫水の浅い船舶はわずか13隻で、このうち9隻をHGKが保有する。船舶の耐用年数は通常約50年と長い上、業界は細分化され、多くの船を小規模な家族経営などの事業者が保有しているため、船団全体の更新には時間がかかる。
HGKのシュテフェン・バウアー最高経営責任者(CEO)は「船団を近代化するには、特に中小企業や個人の船主が次世代船舶に投資できる環境を整える必要がある」と述べ、政府の支援を求めた。
原題:Low Rhine Levels Force Companies to Adapt to New Climate Normal(抜粋)
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