(ブルームバーグ):中国の習近平国家主席がワシントンに到着した。訪米は約3年ぶりとなる。24日のトランプ米大統領との注目の首脳会談は、世界1、2位の経済大国を率いる2人が個人的な関係を深め、貿易やAI、イラン戦争、台湾の未来など対立を抱える問題で共通点を探る機会となる。
会談の主要議題となる可能性が高い問題は、以下の通り。
貿易と関税
米国は、トランプ氏が大統領復帰後に始めた貿易戦争を巡り、米中両国は休戦措置を2カ月延長することで合意したと発表した。2025年10月に合意し、今年11月10日に期限を迎える予定だった休戦措置では、双方が相手国からの輸入品に課していた関税を引き下げ、中国産レアアース(希土類)などの製品輸出に対して計画されていた一部の輸出規制を停止した。
米中は貿易障壁をさらに引き下げる方法についても協議しており、首脳会談で追加合意に至る可能性がある。提案の一つは、エネルギーや農産物を含む一部の米国産品について、中国の関税を大幅に引き下げるものだ。
これは、貿易委員会の枠組みを通じ、双方がそれぞれ300億ドル(約4兆7500億円)相当の製品に対する輸入障壁を緩和する従来の取り組みに基づいている。中国からの一部品目には最恵国税率が適用される。
ただ、関税を巡る緊張緩和が実現する保証は全くない。中国政府は以前から米国の輸入関税に不満を表明している。
一方、米政府は他国の貿易慣行に対する調査を開始しており、米連邦最高裁が今年2月に無効とした「相互関税」に代わり、中国に新たな措置を課す選択肢を確保する可能性がある。実施する場合、新たな関税率は7.5%となり得る。米国は首脳会談が終わるまで正式発表を見送る見通しだ。
購入確約と投資
日本と韓国は、トランプ氏の貿易面での要求に応じるため、米国への大規模投資や米国産品の購入拡大を確約している。トランプ政権は中国にも同様の対応を求めている。
中国は2028年まで年間2500万トンの米国産大豆を購入するとの確約について着実に履行を進め、今年分は最近、目標の半分を超えた。一方、米国産農産物に少なくとも追加で170億ドルを支出する別の確約は、達成がより難しい状況だ。
シンガポールのストーンXグループの農産物ブローカー、カン・ウェイ・チャン氏は「政治関係が建設的な状態を維持し、関税障壁の緩和が続けば達成可能だ」と述べた。
中国によるその他の米国産品購入は低調だ。例えば牛肉の輸入額は今年1-7月でわずか700万ドルと、2025年の5億5600万ドルのごく一部にとどまったと、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は指摘している。
中国は米国の牛肉加工施設数百カ所に関し、供給許可を5月に更新したものの、米国での価格高騰と中国の需要低迷が購入を抑え、輸入はほとんど回復していない。
トランプ氏は5月、中国がボーイングの航空機200機を購入することを確約したと述べた。グリア米通商代表部(USTR)代表は、中国がこの確約の履行を進めているとしている。
投資を巡る交渉は依然として難航している。トランプ氏は中国車の米国への輸入について相反するシグナルを発しており、中国企業が米国人労働者を雇用するのであれば、米国内で自動車工場を建設することを認めるべきか、公の場で検討する考えを示している。
ただ、この構想は米国内で政治的に極めてデリケートな問題だ。米政府当局者の1人によると、こうした合意が実現する場合でも、実施には国家安全保障上の規則を満たす必要がある。
AI
米国と中国はAIの主導権争いをしており、双方ともテクノロジーへのアクセス制限を講じている。両首脳が前回会談した5月以降、AIを巡る急速な進展を受け、この問題について協議する必要性が一段と高まると同時に、対立も深まっている。ベッセント米財務長官はAI競争について、中国がこの競争に「勝てば、明後日(あさって)はない」と警告した。
中国の最先端AIモデルの性能は米国の競合モデルに近づきつつあり、中国政府はAIを、米国とのテクノロジー競争を自国に有利な方向へ傾ける絶好のチャンスとみている。
米AI業界の幹部らが安全性を理由に最先端AIの開発ペースをより慎重にすべきだと訴えたのに対し、中国政府は反発し、その提案を「恐怖」をあおることで自らの利益確保を図るものだとして退けた。
米国の輸出規制によって、中国のAI業界がエヌビディアなど米企業の最先端半導体を入手することが難しくなる中、中国の半導体メーカーは複雑なAI処理に対応できるプロセッサーの開発を急いでいる。
アリババグループは9月22日、中国で最も強力だとするAI半導体を発表した。エヌビディアに対抗するアクセラレーターで、今後数年間にわたるデータセンター能力の大幅な拡張を支える狙いがある。
米国のAI企業は今年に入り、中国勢が米国の最先端モデルの出力を利用し、わずかなコストで競合システムを開発していると非難したことで、新たな緊張要因も浮上した。ホワイトハウスは「敵対的蒸留(adversarial distillation)」として知られるこの手法を防ぐための措置を打ち出している。
重要鉱物
レアアースなどの重要鉱物は、ロボットや電気自動車(EV)、精密誘導兵器といった先端製品の製造に不可欠で、中国が生産を支配していることから、対立の焦点となっている。この優位性は昨年の米国との関税対立で中国政府に有力な交渉材料を与え、中国は輸出規制を導入して外国による中国産レアアースへのアクセスを制限した。
昨年10月の貿易休戦を受け、中国は一部製品の輸出を再開した。ただ、トランプ政権は中国政府が出荷を意図的に遅らせていると不満を示しており、中国から米国へのレアアース磁石の輸出は先月減少した。事情に詳しい複数の関係者によると、中国政府は首脳会談での交渉材料として、追加の輸出許可を提示したい考えだ。
米政府は重要鉱物の調達先の多様化に取り組んでいるものの、BEによれば、レアアースの採掘・加工における中国の支配力を弱めるには、なお数年を要する公算が大きい。
中国政府は、世界のサプライチェーンを中国のサプライヤーから切り離し、中国による重要な原材料や技術へのアクセスを制限しようとする外国の動きに対抗するため、新たな規則を導入した。
また、一般許可を通じて輸出許可手続きを簡素化する新制度の導入を始めている。ただ、こうした措置の効果は依然不透明で、世界の買い手からは承認手続きがなお意図的に遅らされているとの懸念が出ている。
イラン戦争
トランプ氏は、世界的なエネルギー危機を引き起こした紛争を終結させるよう圧力を受けている。一方、中国はイラン産原油を最も多く買い入れていることで、イランに経済的な生命線を提供。国際舞台では一定の外交支援も行っており、イラン軍が中国から何らかの支援を受けているとの報道もある。
中国政府は、イラン産原油の購入を標的とする米国の制裁に従わないよう自国企業に命じ、不当と見なす外国法から中国企業を保護することを目的に2021年に導入した対抗措置を発動した。
中国外務省は、中国企業に影響を及ぼす米国の措置を一方的かつ違法な制裁だとして繰り返し反対を表明し、米国に対し「中国に泥を塗る」のではなく、現在のイランとの停戦が崩壊しないよう努めるべきだと求めている。
ベッセント氏は8月、イランと取引するあらゆる国に対する「経済的な猛攻撃」を米政府が開始すると述べた。イランとの貿易を仲介している中国の大手銀行を米国の金融システムから締め出す用意があるかと問われると、「米国の制裁が及ばない者はいない」と答えた。
米国は同月、イランとの経済的なつながりが疑われる中国と香港の事業体に制裁を科した。イラン産原油の購入に関しても、中国企業数社が制裁対象となった。中国政府はこれに対し、イランとの関係は「妨害されたり、損なわれたりすべきではない」とし、自国の利益を守る方針を示した。
トランプ氏は中国のイランとの関係を巡り、習氏への圧力をかけ続けるとみられる。イランに経済的な打撃を与えようとするトランプ氏の取り組みに習氏が協力することを急いでいる様子はない。それでも、トランプ氏の要求を完全に無視すれば、同氏の反発を招くかもしれない。
台湾
台湾は引き続き、米中関係で最も敏感かつ緊張が高まりかねない問題の一つだ。中国当局にとって主要な焦点は、米国が台湾向けに計画している140億ドル規模の武器供与を阻止することだ。
中国政府は台湾を自国の一部だと主張。一方、米国は民主主義の台湾を軍事面で支援し、非公式ながら強固な米台関係を維持している。習氏が総書記として率いる中国共産党が台湾を統治したことはない。
中国政府はこれまでトランプ政権に対し、台湾の独立に「反対する」と公式に表明するよう求めてきた。実現すれば、中国にとって外交上の大きな成果となる。トランプ氏は5月に北京で習氏と会談した後、米国による台湾への武器売却について協議したと明らかにし、「9500マイルも移動して戦争をするつもりはない」と述べた。
24日の首脳会談で台湾問題が取り上げられた場合、トランプ氏が中国政府から譲歩を引き出す見返りに、台湾の利益の一部を犠牲にするかどうかが注視される。
原題:What’s on the Table When Xi, Trump Meet in Washington: Explainer(抜粋)
--取材協力:Megan Durisin Albery.
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