(ブルームバーグ):トランプ米大統領が報道機関3社について「作り話とうそ」を報じているとしてホワイトハウスへの立ち入りを禁止したことで、大統領がメディアの取材活動をどこまで制限できるのかに注目が集まっている。
ワシントン連邦地裁は23日、CNNとMS NOW、ポリティコが起こした訴訟の審理中、立ち入り禁止措置を解除するよう求めた申し立てについて双方の主張を聞く審理を開いた。トランプ氏が任命したケリー判事はその後、トランプ政権に対し、ホワイトハウスへの立ち入り禁止措置を一時的に解除するよう命じた。
報道3社はトランプ氏やホワイトハウス高官らを提訴し、記者証の無効化は適正手続きと報道の自由を保障する合衆国憲法に違反すると訴え、他の報道機関も3社を支持している。
対立の激化は、自身を不公平に扱ってきたとトランプ氏が主張する記者らへの制約を強める最近の動きの一つだ。政権は国防総省におけるメディアの長年の取材アクセスも制限し、一部記者に対し20カ国・地域(G20)首脳会議の取材を認めていない。
トランプ氏はニューヨーク・タイムズ(NYT)とウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、英BBCを名誉毀損で提訴しているが、報道各社はこうした主張には根拠がないとしている。
トランプ氏は何をしたのか、報道3社はどう対応したのか
トランプ氏は18日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、長年にわたる「フェイクニュース」を理由に3社のホワイトハウスへの立ち入りを禁止すると表明した。翌日、各社の記者がホワイトハウス敷地内に入ろうとしたところ、立ち入りを拒否され、記者証は無効化または没収された。
これを受け、3社はトランプ氏とワイルズ大統領首席補佐官、チョン広報部長、シークレットサービスのカラン長官をワシントンの連邦地裁に提訴した。
3社は、米政府が憲法修正第1条で保護された言論を理由に報道機関へ違法な報復を行ったとし、さらに、事前通知や反論の機会を与えずに取材アクセスを取り消したことで、適正手続きを受ける権利を保障する修正第5条にも違反したと申し立てた。
訴状は、トランプ氏による立ち入り禁止の理由について「理由はただ一つだ。トランプ氏が、自身と政権に関する3社の報道内容を嫌っているからだ」としている。3社は訴訟の審理中、記者証を直ちに復活させるよう連邦地裁に求めた。
他の報道機関はどう対応したのか
ABCニュースとCBSニュース、NBCニュース、FOXニュースは、大統領関連行事のテレビ映像を持ち回りで広範なメディアに提供する取り決めを停止した。取材プールの5社目に当たるCNNが割り当てられた当番を務めることをホワイトハウスが認めなかったことを受けた措置だ。
4社は異例の共同声明で、報道内容への異議を理由に、いかなる政権も報道機関を制限すべきではないと表明した。
ブルームバーグ・ニュースとダウ・ジョーンズ、ロイター通信など数十の報道機関は、立ち入りを禁止された3社を支持するため連邦地裁に提出された法廷助言書に名を連ねた。
ホワイトハウスは報道機関の立ち入りを禁止できるのか
憲法は、全ての記者にホワイトハウスへ無制限に立ち入る権利を与えているわけではない。ただ、全面的な立ち入り禁止は極めて異例で、一般的には修正第1条と相いれない。
ホワイトハウスは、安全保障やスペースなどを理由に報道機関の取材アクセスを制限できる。政権当局者は、誰の質問に答えるかを選ぶこともできる。また、大統領執務室での会合や大統領専用機エアフォースワンへの同乗など、スペースが限られる場面では、どの記者に近距離での取材を認めるかを一定の場合に選ぶこともできる。
ただ、政府がいったん記者証の制度を設けた以上、恣意(しい)的に運用することはできないと裁判所は判断してきた。
報道3社の訴状は、1977年の「シェリル対ナイト」判例を引用している。この案件でワシントンの連邦高裁は、ホワイトハウスには記者に門戸を開く義務はないと判断した。ただし、メディア向け施設を利用可能にした場合、特定の報道関係者だけにアクセスを認めないことはできないとの判断を示した。
CNNとポリティコ、MS NOWは訴状で、自社の報道を理由に既存の記者証を取り消され、狙い撃ちにされたと主張している。
政権側は立ち入り禁止措置を擁護し、22日の裁判文書で、ホワイトハウスへのアクセスは「権利ではなく特権」だと主張。3社の記者証を取り消したのは、トランプ氏への批判ではなく、職業倫理や国家安全保障を巡る懸念が理由だったと説明した。
ホワイトハウスはまた、3社には事後的に十分な通知を行っており、回復不能な損害も生じていないため、緊急救済を受ける資格はないと論じていた。
裁判文書と23日の審理で、政権側の弁護士は、報道3社の記者証を取り消した理由について「国家安全保障に関する検証可能な虚偽を流布し、センシティブな情報や機密情報を公表した」ためだと述べた。
審理では、報道3社の代理人を務めるセオドア・ブートラス弁護士が、国家安全保障上の懸念はトランプ氏の当初のSNS投稿では言及されておらず、この文脈で持ち出すのは不適切だと反論した。
報道3社は訴状で、トランプ氏が憲法で保護された言論を理由に報復したと主張している。また、トランプ氏が好ましくないと判断した報道を理由に3社を処罰することで、政府が見解に基づく差別を行ったと訴えている。
見解に基づく差別とは何か
米連邦最高裁は、政府が内容や見解に基づいて言論を制限することは違憲だとの判断を示している。つまり、政府は特定のテーマや特定の見解に関する言論を抑圧することを禁じられている。
ホワイトハウスの記者証を巡り、裁判所はどのような判断を示してきたのか
裁判所は、記者のホワイトハウス記者証を取り消す前に適正手続きを踏むよう繰り返し求めてきた。2018年には、今回と同じケリー判事がCNN特派員ジム・アコスタ氏のホワイトハウス記者証を一時的に復活させた。CNNが修正第5条に基づく主張で勝訴する可能性が高いと判断したためだ。ケリー判事はこの事件では、CNNによる修正第1条に基づく主張の実体的な是非について判断しなかった。
2020年にはワシントンの連邦高裁が「カレム対トランプ」訴訟でこうした保護を改めて確認し、ホワイトハウス記者証を停止されたプレイボーイ誌の記者に公正な事前通知がなかったとの判断を支持した。この事案は、記者証に対する制裁は場当たり的な判断ではなく、実質的で事前に明らかな基準に基づかなければならないとの要件を改めて示した。
一方、裁判所はメディアのカテゴリー全体を異なる扱いとすることは認めてきた。このためトランプ政権は2025年、大統領取材プールで通信社向けに確保され、ブルームバーグとAP通信、ロイターが持ち回りで参加できることを保証していた枠を廃止することができた。
この措置の直前には、トランプ氏がメキシコ湾を「アメリカ湾」に改称したことにAPが従わなかったことを理由に、同社だけを取材プールから排除しようとしたホワイトハウスの措置を裁判所が退けていた。
トランプ氏による今回の報道機関への制限を後押しする可能性のある判断もある。意見が分かれた連邦高裁は2025年、大統領執務室やエアフォースワンなどへのAPのアクセスを大統領が引き続き制限することを認めた。大統領執務室のように立ち入りが制限された大統領関連施設は、一般市民がアクセスできる修正第1条上のスペースには当たらず、誰の立ち入りを認めるかについてホワイトハウスには幅広い裁量があると判断した。
原題:Why Trump’s Ban on Media Outlets Faces Legal Hurdles: Explainer(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.