数兆ドル規模の損失 異常気象が世界経済に突きつける代償

エルニーニョがもたらすのは局地的な災害だけではありません。

世界がグローバルなサプライチェーンで繋がっている以上、食料問題や農業への打撃は瞬く間に世界全体の問題へと拡大します。

例えば、パナマではエルニーニョによる雨量の減少が深刻な干ばつを引き起こしています。

前回のエルニーニョが起きた2024年にもパナマ運河で通船数が急減しましたが、現在も水資源を守るために貨物制限などの対策がとられています。

この運河の航路規制は、液化天然ガス(LNG)の輸送に直接影響を与え、ひいては世界のエネルギー価格の高騰を招きます。

これは消費者が最も痛切に影響を実感する部分です。

エルニーニョの経済的コストは計り知れません。

「サイエンス」誌に掲載された研究によると、1982〜83年のエルニーニョは長期的な影響を与え、世界の経済生産性を4.1兆ドル低下させました。

1997〜98年の発生の際にも約5.7兆ドルの損害があったとされ、その影響は終息後5年間も続きました。

専門家は、今回のエルニーニョでも数兆ドル規模の経済的損失が繰り返されると懸念しています。

エルニーニョには、国際情勢や和平協定、悪化するインフレなど、現在の人類が抱える地政学的な問題は一切関係ありません。

自然の無慈悲な周期に従って、世界が最も困るタイミングで発生し、私たちの生活基盤に甚大な打撃を与えます。

海洋の温暖化と気候変動が重なり合う今、この巨大な自然の脅威に対して、世界はかつてない規模の対応を迫られているのです。