(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制に取り組む姿勢をより明確にしたことで、米国株投資家の強気姿勢を支える材料が増えている。一方、原油価格やAIを巡るリスクが、投資家が全面的に強気に傾くのを阻んでいる。
FRBは先週、積極的な利上げサイクルまでは示唆しない一方、タカ派的なメッセージで後手に回っていないことを印象付け、信頼を取り戻した。当初はそれで市場も落ち着いたが、前週末18日には米10年債利回りが再び5%を試し、S&P500種株価指数がプラス圏とマイナス圏を行き来するなど、投資家の警戒感はなお根強かった。原油価格は下落したものの、北海ブレント原油は依然として1バレル=100ドルを上回っている。
エマニュエル・コー氏率いるバークレイズのストラテジストは「エネルギーに起因するインフレ圧力が和らぐまで、金利と株式相場が完全に安定するとは考えにくい」と指摘。「それでも、FRBの独立性と信頼性が改めて確認され、どのような状況でどう政策対応するかが明確になったことは好材料だ」と述べた。
FRBの決定で、市場を覆っていた不透明感が一つ解消されたとみることができる。連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、投資家が慎重姿勢を強めたのも、決して楽観に傾いていなかった表れだ。エクスポージャーを減らす一方、ヘッジを積み増したことを示す明確な兆候もあった。18日に四半期ごとのオプションが大量に満期を迎えたことで、ポジション調整も大きく進んだ。
ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、マニシュ・カブラ氏は「企業利益の伸びは堅調で、クレジットスプレッドは抑制され、ボラティリティー指数(VIX)も低水準にある。米国株のファンダメンタルズは引き続き良好で、目先の変動を越えてS&P500種には強気の見方を維持している」と述べた。イールドカーブは引き続き重要なシグナルで、逆イールドを回避できる限り、相場の変動はあってもS&P500種は年末までに8000に達するとカブラ氏は予想している。
年末にかけて相場が上昇する可能性は十分に残っているが、そこに至る道のりは平たんではなさそうだ。ディーゼル価格は今後のインフレ加速を示唆しており、イランでの戦争が速やかに収束して原油価格が大幅に下がらない限り、米金融当局は一段とタカ派的な姿勢を取らざるを得なくなる可能性がある。
スワップ市場では、来年7月末までにあと3回の利上げが織り込まれている。10年債利回りが5%を上回り、米国債の投資妙味が増す中、債券市場に大きな変動が起きる可能性に注目が集まる。ただ、経済成長と企業利益の伸びが底堅さを保つ限り、投資家は株式から資金を移すことには消極的で、むしろエクスポージャーを広げ続ける可能性がある。
ジャレッド・ウッダード氏率いるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは慎重姿勢を強めている。来年は企業利益の伸びが鈍化すると予想される中、投資家のポジションは依然として強気に傾き過ぎていると指摘。2027年に見込まれる10-15%の利益成長は、供給管理協会(ISM)製造業景況指数が53を上回る状態が一定期間続くことを示唆していると述べた。「ディフェンシブ銘柄に移るにはまだ早いが、クオリティー、バリュー、利回りを重視するのが賢明だ」と語った。
市場では、AIへの支出と将来的な投資収益に対する懐疑的な見方が強まっている。このため、AI関連で恩恵を受ける企業全般の利益見通しにも疑念が生じている。一方、テクノロジーセクター内では資金のシフトが起きており、ソフトウエア株が勢いを取り戻す半面、半導体株は過去2カ月おおむね足踏み状態にあり、値動きも荒くなっている。

S&P500種のバリュエーションは大幅に低下し、現在は長期平均をわずかに上回る水準にある。バリュエーション低下は利益予想の大幅な伸びによるところが大きいものの、最近の相場下落からは、指数全体でもセクター単位でも、投資家が成長期待に高い価格を払うのをためらっている様子がうかがえる。
目先は慎重姿勢が続いたとしても、数週間後に始まる決算発表が予想を上回れば、市場心理が改善し、リスク選好が再び強まる可能性がある。
キャピタル・ドットコムのシニア市場アナリスト、ダニエラ・ヘイソーン氏は「相場の底堅さは、根強いインフレによる金利上昇と、ファンダメンタルズ面での成長見通しの悪化を投資家が区別していることを示している」と指摘。「今のところ、後者が最大の懸念にはなっていない」と述べた。
原題:Traders Can Handle a Hawkish Fed But Not Cracks in AI Bull Case(抜粋)
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