(ブルームバーグ):ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相は20日、ニューヨークで貿易問題などを巡る協議を開始した。24日に首都ワシントンで予定されるトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談を前に、貿易休戦延長の可能性など、双方の懸案について調整を進める。
両国は貿易・投資、AI、イラン情勢に及ぶ幅広い課題について協議を行う見通しだ。現地時間午前10時(日本時間同午後11時)過ぎ、米通商代表部(USTR)のグリア代表、中国の何副首相、李成鋼商務次官が協議場所のJPモルガン・チェース本社に入った。
午前10時半過ぎに到着したベッセント長官は記者団に対し、両国による建設的な対話を楽しみにしていると述べた。
ベッセント氏と何氏が対面で協議するのは、トランプ氏が5月に北京を訪問する数日前にソウル近郊で会談して以来、4カ月ぶり。
主要議題の一つは、両国が関税を引き下げ輸出規制を緩和した貿易休戦だ。期限は11月に切れる予定となっている。
関係者によると、貿易相手国の過剰生産能力を理由とする米国の新たな関税措置の発表は、米中首脳会談後まで先送りされた。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミストらは最近のリポートで、「双方とも新たな対立激化は避けたいと考えており、比較的安定した関係が続く公算が大きい」と分析した。一方で、「米国が関税障壁を再構築する中、再び対立が激化するリスクは残る」と指摘した。
米中は今年導入した「貿易委員会」の枠組みの下、双方それぞれ300億ドル相当の製品を対象に貿易障壁を緩和する取り組みを進めており、その一環として米国産エネルギーや農産物への関税引き下げなどを協議していると、ブルームバーグはこれまで報じた。
輸出が回復
中国の対米輸出は今年、回復している。トランプ関税の限界を示す一方、中国で生産されるAI関連電子機器への需要急増も反映している。
ベッセント氏と何氏は過去1年半、主に第三国で一連の協議を重ねてきた。中立的な場であることを演出する狙いがあった。今回ニューヨークで会談することが信頼関係の深まりを示すのか、国連総会に合わせた日程上の都合にすぎないのかは不明だが、相互主義の観点から次回協議は中国で開催される可能性がある。
ブルームバーグは先頃、中国当局が習氏の首脳会談に同行する企業代表団の候補として比亜迪(BYD)を検討していると報じた。トランプ氏が中国製電気自動車(EV)に100%関税を課していることを踏まえると、米側に挑発的と受け止められかねない動きだ。
トランプ氏は、中国の自動車メーカーが米国人労働者を雇用するのであれば、米国内での生産を容認する可能性があるとの考えを示している。
会談準備に詳しい中国当局者によれば、中国側の最重要議題は台湾問題で、特に米国が計画する台湾への武器売却が焦点となる。
関税や大豆などの農産物については比較的協議しやすい一方、AI、自動車、テクノロジー、電子商取引も議題になると、当局者は匿名を条件に語った。中国は交渉材料としてレアアースの輸出許可を増やす考えだが、その見返りとして何を求めるかは明らかにしなかった。
中国産レアアース磁石の供給維持は、トランプ氏が昨年の休戦に合意した際の優先事項だった。それ以降、中国によるレアアース磁石の月間輸出は、当局が2025年4月に輸出規制を導入する前の水準を大幅に下回っている。
「恐怖をあおっている」
ここ数週間では、AIが米中間の新たな対立軸として急速に浮上してきた。
米政府は中国による先端半導体へのアクセスを制限するとともに、中国企業が米国の技術から能力を「蒸留」することで独自のAIモデルを開発していると非難している。
これに対し中国は、安全性を理由にAI開発のペースを落とすよう求める米テクノロジー業界幹部らの主張に反発。中国外務省はそうした動きを「恐怖をあおるもの」と退け、国営メディアも「自己都合だ」と批判している。
ベッセント氏は今月、「米中はAI分野で他を大きく引き離す1位と2位の大国だ。だからこそ、一定の歯止めを設け、緊密に意思疎通することが双方にとって重要だ」と記者団に述べた。
同氏は先頃、米ニュースサイトのアクシオスへの声明で、「共通のリスクを回避し、両国のシステムが分断されるのを防ぐための協議には前向きだ」と表明した。
中国側は、米国の措置について自国の台頭を封じ込めるのが狙いだと主張しており、AIのルール策定で米国に主導権を握らせる考えはない。
制裁を強化
両国経済にとってより差し迫った脅威となっているのがエネルギーショックだ。トランプ政権はイランとその貿易相手国への圧力を強めている。中国はイラン産原油の最大の買い手で、イランにとって重要な経済的生命線となっている。
ベッセント氏率いる財務省は、イランと各国・地域の貿易・資金の流れを遮断する取り組みの一環として、金融機関への圧力を強めている。このため、中国の銀行も対象になるとの観測が出ている。
ベッセント氏は15日、下院金融委員会での証言で、この問題について中国当局者と「非公式の場で協議を行ってきた」と明らかにし、週末の会談でさらに進展させたいとの考えを示した。
米海軍によるイラン港湾への海上封鎖で中国向け原油輸送は大幅に減少しており、中国全体の精製能力の3分の1を占める独立系製油所で、今後数週間に稼働率を引き下げる可能性が高まっている。
米政府の中東政策顧問を務めた経歴を持つジェシー・マークス氏は、「中国にはホルムズ海峡の通航再開を望む理由があるが、どちらか一方に方針転換を迫れるほどの影響力はない」と指摘。「海峡の閉鎖が長引けば長引くほど、米国の制裁強化と域内貿易の混乱拡大により、イランにおける中国の経済的利益を損ない始める」と述べた。
原題:US, China Begin Trade Talks in New York Ahead of Trump-Xi Summit、US, China Trade Teams Set to Huddle in New York on AI, Iran (1)(抜粋)
--取材協力:Stephen Engle、Sabrina Mao.
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