(ブルームバーグ):米国とデンマーク、グリーンランドは、グリーンランドで米国の関与を拡大する安全保障協定で合意した。デンマーク自治領のグリーンランドの領土を米国に譲り渡すことなく、長期化していた外交対立はいったん収束する。
トランプ米大統領は18日、米国がグリーンランドの安全保障について「恒久的な管理権」を持つことで合意したと明らかにした。デンマークとグリーンランドの首脳も、ニューヨークで22日から始まる国連総会の一般討論に合わせて協定に署名する見通しだと確認した。
協定の詳細はまだ公表されていない。デンマークのフレデリクセン首相は、協定がデンマーク王国の「主権と領土の一体性」と、グリーンランド住民の自決権を認めるものだと説明した。トランプ氏がグリーンランドの所有権や主権を得る内容ではないことを示唆している。
これは、グリーンランドを米国の支配下に置く、あるいは米国領にすることを目指してきたトランプ氏の従来の主張から大きく後退した内容だ。領土取得を繰り返しトランプ氏が要求したことで、米国と欧州の同盟国の間では不信感が高まり、北大西洋条約機構(NATO)内にはここ数十年で最も深刻な亀裂が生じていた。
デンマーク国防大学戦略・戦争研究所のマーク・ヤコブセン准教授は、デンマークとグリーンランドにとって今回の合意は、領土を米国に譲らずに約2年に及ぶ対立を終わらせる可能性があるという点で重要だと指摘する。
「トランプ氏には、自分が勝者だと見える形が必要だ」とヤコブセン氏はインタビューで指摘。「だからこそ、圧力をかけた成果だと本人が主張できる新たな合意が必要だった」と述べた。
一方、グリーンランドの取得や政治的な支配というトランプ氏の目標については、「思い通りにはならなかった」と語った。

トランプ氏は18日、ソーシャルメディアへの投稿で合意を発表した。米国の敵対国がグリーンランドに基地を設けたり、軍事拠点を築いたりするのを阻止できるほか、安全保障上の懸念がある投資も阻止できるようになると説明した。
また、米国はグリーンランドでの軍事的な展開を直ちに拡大し、地元住民と協力して関連施設を整備・建設すると表明。費用については「米国の負担はゼロ」と強調した。
トランプ政権は中間選挙を控え、イラン戦争の長期化や、収束の兆しが見えないロシアによるウクライナ侵攻問題、米国民の生活費高騰など、相次ぐ難題に直面している。グリーンランドを巡る合意は、トランプ氏がこうした厳しい状況にある中で発表された。
ヤコブセン氏によると、トランプ氏がこれまで明らかにした内容を見る限り、新協定で米国に与えられる権利の多くは、既存の安全保障協定ですでに認められているものと同じとみられる。
米国とデンマークは1951年にグリーンランドを巡る防衛協定を結び、2004年に改定した。現在も有効で、米国にはグリーンランドに部隊を駐留させる幅広い裁量が認められている。米国は計画についてデンマーク政府と協議し、通知する義務を負うものの、この条件は実質的には形式的な手続きとみなされ、通知以上の対応はほぼ必要なかった。
冷戦期には米国がグリーンランドに十数カ所の軍事基地を置いていた。その後ほぼすべてを閉鎖し、現在残るのは島の最北部にあるピツフィク宇宙軍基地のみだ。
一方、今回の合意には新しいとみられる要素もあるとヤコブセン氏は指摘する。その一つが、他国がグリーンランドに軍事拠点を設けることに対し、米国が拒否権を持つ点だ。
もう一つは、合意が恒久的なものとされていることだ。1951年の協定は重要なNATOの取り決めと明示的に結び付いており、NATOの存続が前提となっている。これに対し新協定は「米国を軸としたもので、NATOの存続期間とは連動しない」とヤコブセン氏は説明した。

ただ、複数の重要な点において疑問が残る。ヤコブセン氏によれば、新たな基地をどこに置くのか、どのような装備や人員を配備するのか、費用を誰が負担するのかは明らかになっていない。また、米国による併合の脅威が取り除かれること以外に、グリーンランドが見返りとして何を得るのかも分かっていないという。
これまで主権の譲渡を明確に否定してきたグリーンランドのニールセン自治政府首相は、今回の合意について「グリーンランドの利益と、国際協力におけるわれわれの地位を認めるものだ」と述べ、歓迎する姿勢を表明。「われわれ全員に利益をもたらす」と語った。
原題:US Strikes Deal Over Greenland to End Row That Threatened NATO(抜粋)
--取材協力:Chris Miller.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.