トランプ米大統領は13日、AIのリスクを巡る懸念が強まっていることについて、過度に警戒する必要はないとの考えを示した。AI業界の経営トップの一部からは、開発ペースを落とすよう呼びかける動きが出ている。

トランプ氏は、「AIでは米国が中国をリードしている。われわれは世界で最も高度な国であり、その状態を維持したい。AIを制する者が勝つからだ」と、アイルランドで開催されているアイリッシュ・オープンの合間に述べた。

その上で、「安全策を設けることはできる。あれこれ対策もできる。ただ、本来取り上げるべきでない問題を持ち出している否定的な勢力が多いと思う」と語った。

AI新興企業アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は12日、AIが人類に及ぼす「深刻な」リスクへの懸念が高まっていると主張し、業界に開発ペースを落とすよう呼びかけた。そのためには業界全体と国際的な協調が必要だと述べた。OpenAIのサム・アルトマン氏と、xAIを率いるイーロン・マスク氏も、アモデイ氏の主張に相次いで賛同した。

アモデイ氏は特に、第三者評価機関による検証を導入するなど、新たな安全対策を自社で実施すると表明。アルトマン氏も同様の対応を取る考えを示した。

ただ、中国勢との競争が激しさを増す中、AI各社の経営トップが、最先端で収益性も高いモデルの開発速度を実際にどこまで抑えるのかは不透明だ。

Photographer: Anna Moneymaker/Getty Images

国家経済会議(NEC)のハセット委員長は13日、アモデイ氏が提案した追加的なAI安全策について、独立した評価機関の担当者にモデルへのアクセスを認めることなどを含め、民間部門の手本になり得るとの見方を示した。

ハセット氏はFOXニュースの番組で、AIの安全性は「解決可能な問題」だと指摘。「民間部門の動きを見れば、イーロンやOpenAIの関係者が、ダリオのかなり妥当な提案をすでに支持している。前進であり、良い一歩だと思う」と述べた。

中間選挙の争点に浮上

米民主党内では、11月の中間選挙や2028年の大統領選を見据え、AIのリスクを重要な争点として取り上げる動きが出てきた。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、オバマ元大統領は先頃、非公開の資金集めイベントで、民主党はAI監督を選挙運動の主要テーマにすべきだと語った。

米国内ではAIへの反発が強まっている。地域の資源に負担がかかるとの見方から、AIを支える新たなデータセンター建設への反対が広がっているほか、AIが電気料金を押し上げ、雇用を奪うとの懸念もくすぶっており、中間選挙の主要な議題になっている。

AI内部告発者の保護法案提出に関わった民主党のクリス・クーンズ上院議員は、トランプ政権が介入を抑える姿勢を取る中、議会内の専門知識不足がAI規制の妨げになる恐れがあると指摘した。

クーンズ氏は「われわれが直面する大きな課題の一つは、急速に進化するこの技術に対し、上院や下院の議員の理解や関与が十分に追いついていないことだ」と、ブルームバーグの番組で指摘。「AIが制御不能になる前に実効性ある安全策を整備するため、共和、民主両党が選挙前の党派対立を脇に置いて合意する必要がある」と語った。

ブルームバーグの番組に出演する民主党のクリス・クーンズ上院議員(動画)

下院民主党トップのジェフリーズ院内総務はABCの番組で、下院民主党が15日午前に会合を開き、AIを巡って取り得る対策を協議すると明らかにした。

共和党のジョンソン下院議長はCNNの番組で、AIの安全策を見いだすにはテクノロジー業界と政府の連携が必要だと主張。企業側には「自社製品の安全性を確保する企業責任がある」と述べた。

さらに「関係者を一堂に集める必要がある。この件については大統領とも話した。恐らくホワイトハウスに集めるべきだ」と語った。

アモデイ氏はAIについて、政府による規制にも役割があるとの考えを示した。13日放送のCBS番組で、「規制を通じて、国民や選挙で選ばれた代表者の意思を反映させ、民間企業の行動にも一定の制約を設けることができる」と述べた。

一方、トランプ氏の元AI担当責任者で、現在は技術諮問委員会の共同議長を務めるデービッド・サックス氏は、AI企業が開発ペースを落としたり、より責任ある行動を取ったりするのに政府の許可は必要ないと主張した。

「製品が深刻なサイバー攻撃に利用されれば、企業は巨額の製造物責任を負う。予測不能な動きや許可されていない動作をするモデルは、すでに市場から罰を受けている」と述べた。

もっとも、中国政府や同国企業が、開発減速や安全策を巡って米企業と協調する意思があるかどうかは不明だ。

アモデイ氏はCBSに対し、より長期的には中国との間で「AI開発の進展ペースに速度制限」を設ける合意を結ぶことには意味があると述べる一方、現実的ではない可能性も認めた。軍事面で先行する利点が大きいため、合意を履行しているかどうかの検証は「完全に確実」である必要があるという。「正直、可能かどうかは分からない。それでも試すべきだ」と語った。

原題:Trump Downplays AI Concerns as CEOs Call for Slowing Pace (1)(抜粋)

--取材協力:Georgie McKay、Tony Czuczka、Maria Paula Mijares Torres.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.