(ブルームバーグ):なだらかな草原に囲まれたウランチャブは、テクノロジー拠点とはおよそ縁遠い場所に見える。
だが、内モンゴル自治区にある人口200万人弱のこの都市は、混雑する東部の大都市圏から西部地域へコンピューティング能力を移す国家プロジェクトの最前線に立っている。
中国政府は2022年に「東数西算」、つまり「東にデータ、西に演算」と呼ぶキャンペーンを本格始動させた。広大な土地と安価なグリーンエネルギーが豊富にある西部と、都市が集中する東部とを結ぶコンピューティングネットワークの発展を促している。
金曜日の昼休み、ウランチャブ市街地の東端にある混み合った交差点では、データセンターの建設現場から作業員らが次々と出てきた。北京の北西約350キロメートルに位置するこの地での取り組みの規模を物語る光景だ。
ヘルメットと蛍光ベストを身に着けたまま、ズボンやブーツにほこりが目立つ作業員たちは、安い食事やビール、たばこを売る移動販売車が並ぶ一角に集まっていた。
尹さんという女性は、「毎日、何百人もの作業員がいる」と語った。この賑やかな交差点で、家族で鶏肉と卵、湯葉を盛り合わせた料理を10元(約230円)で作業員に提供しているという。ひっきりなしにお客がやって来るそうだ。彼女はフルネームを明かさず取材に応じた。
東数西算の効果はすでに出始めている。ブルームバーグNEF(BNEF)が8日発表した新たな調査リポートによると、国内データセンター計画の半分以上が現在、内モンゴルを含む中国北部・北西部に集中している。
BNEFの調査によれば、この地域は2028年までに北京や上海などの都市圏を追い抜き、中国最大のコンピューティング能力の供給源になると予想されている。
中国のAI開発を主導するDeepSeek(ディープシーク)や北京智譜華章科技(Z.AI)といった企業は、この地域に1ギガワット以上の巨大データセンターを建設し、AI開発を支えるために必要なインフラの整備を急ピッチで進めている。

BNEFのアナリストらはリポートで、中国北部・北西部は「稼働中の設備群がはるかに少ないにもかかわらず、成長拠点として台頭している」と指摘。
「これらの地域では、安価な電力コストや冷涼な気候、広い土地がデベロッパーを引き付けている一方、電力消費が大きく、遅延の影響にそれほど敏感でない作業負荷は、従来の需要集積地から移転しつつある」という。
BNEFの分析によると、中国では今後5年間に、データセンターで実際に稼働しているコンピューティング機器の容量(ライブIT容量)が2倍超に拡大するペースとなっている。総電力需要は2030年までに151%増の329テラワット時に達し、中国全体の2.4%を占める見通しだ。
投機懸念
長江デルタ地域は現在、接続性や土地使用許認可、エネルギーの供給状況などのファクターを含むBNEFの競争力ランキングで首位に立っている。しかし、高水準の電力コストとエネルギー消費のため、同地域のデータセンター容量は今後、制約を受けると予想される。

ウランチャブはデータセンターが建設される前、主に蒸し暑い夏の気候から逃れようとする北京市民に人気の週末行楽地として知られていた。遊牧民のテント式住居「ユルト」や乗馬、火星を思わせる休火山群へのツアーなどが人々を呼び込んでいた。
だが今はハイテクブームの真っただ中にある。空き地にはアルミニウム製のブラケットや鉄筋、木板が山積みになっている。クレーンが点在し、さらに大きな計算能力を収容する構造物の巨大な骨組みの高所に陣取った作業員らが働く現場から火花が飛び散っている。
「チャハル・ハイテク開発パーク」にはアップルや華為技術(ファーウェイ)など世界最大級のテクノロジー企業の名前を冠した広い大通りがあり、その野心がはっきりと見て取れる。
内モンゴルは、中国が国家的なコンピューティングハブとして指定した8地域のうちの一つに過ぎない。その他には、北京市や上海市、広州市にそれぞれ近い沿岸地域、中国中部の成都市・重慶市地域、南西部の貴州省、北西部の甘粛省と寧夏回族自治区などがある。
これは、ある意味、「スペース活用」の試みでもある。中国政府の計画によれば、東部の都市は、自動運転のように遅延が許されないコンピューティング要求を処理する。一方、クラウド保存やAIモデルのトレーニングなど、ユーザーから離れた場所でも処理可能な作業は、さらに西へと移されることになる。
この取り組みは、深刻化する電力供給問題の解決も目的としている。中国の一部地域では、すでに現地の電力供給がボトルネックとなっており、送電網のインフラ整備にデータセンター自体の建設よりも長い時間がかかっている。
しかし、太陽が輝き、風の強い中国西部には安価な再生可能エネルギーが豊富にあり、消費量以上の電力が生産されているため、エネルギーを大量消費するサーバーやその他のハードウエアに余剰電力を供給できる。

ハブとしての指定は、投資やデジタルインフラへの優先的なアクセスを呼び込む一方で、施設の利用率やエネルギー効率、クリーン電力に関する厳しい目標も課される。
この地域に新設されるデータセンターは、直接接続またはグリーンエネルギー証書の購入を通じて、年間電力消費量の80%以上を再生可能エネルギー源から調達しなければならない。
中国北部・北西部は2030年までに、全国で稼働するデータセンター容量の3分の1を占める可能性があるが、エネルギーが豊富でなくとも接続性が優れている国内巨大都市との競争に依然として直面している。
こうした状況に加え、中国政府の政策推進に伴う熱狂も相まって、他の産業をすでに悩ませているのと同じような過剰生産能力を招くリスクが高まっている。
BNEFによると、中国当局は現在、大規模プロジェクトについて建設開始前に国家の承認を得ることを義務付けることで、投機的または重複した投資を制限しようとしている。
尹さんは今のところ、ブームの波に乗っている。「周りを見てみてください。これが良いことではないはずがありませんよね」と彼女は話した。
原題:China Is Building an AI Future Far From Its Biggest Cities(抜粋)
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