(ブルームバーグ):香港上場を目前に控えたSHEINグローバル・ホールディングス(希音国際)。中国発のファストファッション通販会社SHEIN(シーイン)を運営する同社は、かつてはスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)やスペインのZARA(ザラ)の親会社を上回る評価額を誇り、表舞台にほとんど姿を見せない創業者、許仰天(シュー・スカイ)氏の純資産は230億ドル(約3兆6800億円)を超えていた。
しかし、関税や政界・規制当局からの厳しい視線、競争激化に直面する中、許氏(43)の資産はわずか4年で大きく目減りした。2022年に1000億ドルだった評価額は、今やその4分の1強にとどまる。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、30%の持ち分を保有する許氏の資産は、公開価格に基づくと約80億ドルに減少する。
SHEINグローバルは9月1日に上場する。

許氏の資産が150億ドル余り減少した背景には、タイミングの悪さもある。過去1年ほどの間に上場した中国の消費者向けブランドには当初、投資家の強い関心が集まっていた。だが、その後はAI企業の上場が相次ぎ、投資家の注目を奪うとともに、新たな富豪を生み出した。
メルボルンを拠点とするUエシカル・インベスターズの国際株式ポートフォリオマネジャー、サム・ワイアット氏は、SHEINの新規株式公開(IPO)について「間違いなく好機を逃した」と指摘。投資家にとって、電子商取引は今やAIほど魅力的な投資テーマではないと述べた。
一部のAI企業が上場初日に大幅高となる一方、香港IPO全体のパフォーマンスにはばらつきがある。飲料メーカーの東鵬飲料と養豚大手の牧原食品はいずれも10億ドルを超える規模で上場したが、株価は公開価格を下回っている。急成長するタピオカティーチェーン、蜜雪集団を創業した兄弟の資産も、昨年上場して以降、20%超減少した。
SHEINの広報担当者にコメントを求めたが、返答はなかった。
許氏は12年、3人の共同創業者とSHEINを設立した。4人はいずれも同じ検索エンジンマーケティング会社で働いていた経験を持ち、その知見を生かして、低価格で流行を取り入れた衣料品を売るオンライン小売りへとSHEINを成長させた。新型コロナ禍には、若者による旺盛な購買を背景に売上高が急増し、事業は大きく拡大した。

成長の鈍化
ただ、同社がIPOを前に7月に開示したデータによると、その後は売上高の伸びが鈍化している。成長の柱の一つとしてきたのが、小口荷物を活用して米国や欧州で輸入関税を回避する戦略だった。しかし昨年、トランプ政権が重要な関税免除措置を廃止し、欧州連合(EU)も小口荷物に一律の関税を課す方針を打ち出したことで、この事業モデルは揺らいだ。
米デラウェア大学でファッション・アパレル研究を専門とするシェン・ルー教授は「市場の方向は変わっており、特にここ数年はSHEINに不利な方向に動いている」と指摘した。AIによってSHEINと競合各社の競争条件も均衡しつつあり、ライバル企業は消費者の嗜好(しこう)の変化に、より的確かつ迅速に対応できるようになるとみられる。
成長の最盛期に上場を目指していたものの、労働慣行を巡る厳しい監視に直面し、ニューヨークとロンドンでの上場計画は進展しなかった。
同社のサプライチェーンは中国を基盤とする一方、米国と欧州を主要市場としている。経営陣はブランドの中国色を薄めようとし、グローバル本社をシンガポールに移した。ただ、最終的にはIPOに中国当局の承認が必要となった。
レイリアント・グローバル・アドバイザーズの最高投資責任者、ジェーソン・シュー氏は「SHEINは2、3年前には非常に注目されていた。米国で既に強力なファストファッションブランドを築き、消費者にも広く認知されていたため、米国でIPOできる中国企業とみられていた」とした上で、「だが、今や注目の的はAIだ」と語った。
原題:Shein CEO’s Wealth Slumps $15 Billion After Whittled-Down IPO(抜粋)
--取材協力:Pei Yi Mak.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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