ネパールで壊滅的な洪水に見舞われた被災者が、濁流が押し寄せる前に警告を受けたのは、わずか数分前だった。高地での気象観測や隣国・中国とのデータ共有に不備があることが浮き彫りになった。

ネパール国家防災管理庁(NDRRMA)のトップ、ダラム・ラジ・ウプレティ氏はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「住民には5分の猶予すらなかった」と述べた。国境を越えた気象・気候データの共有が限られ、越境データを提供する仕組みが十分に構築されていないため、「高山地域には気象観測所がない」と説明し、「最大の課題だ」と語った。

Photographer: Ezra Acayan/Getty Images

先週発生した壊滅的な洪水では少なくとも800人が死亡し、3000人余りが行方不明となっている。ウプレティ氏は、気温上昇によって氷河や山の斜面が不安定になるペースに当局の監視体制の整備が追いつかず、今回の洪水でヒマラヤ地域における監視体制の深刻な不備が浮き彫りになったと指摘した。

予報の精度向上と早期警報は、人命救助に役立つだけでなく、重要インフラの保護や、ヒマラヤ地域の経済にとって雇用と外貨の重要な供給源である観光業への混乱を抑えることにもつながる。

中国国営の新華社通信によると、習近平国家主席はさらなる災害を防ぐため、チベット高原全域の氷河と氷河湖の調査を加速するよう求めた。中国共産党も28日、関連する災害リスクを当局が把握する能力を高めるため、監視・早期警報体制の強化を指示した。

在ネパール中国大使館はX(旧ツイッター)への投稿で、中国は「既存技術の範囲内で、監視、評価、分析の実施に常に最大限努めており、重要な情報をネパール側と適時共有してきた」と表明。

また、両国は「国境を越えた災害管理について緊密なコミュニケーション」を維持してきたと説明したが、中国が今回の洪水についてネパール側に警告していたかどうかは明らかにしなかった。

中国国境に近いネパールの渓谷を鉄砲水が襲い、数百人が死亡した。被害者には外国人観光客も含まれている

ネパールでの洪水は氷河の崩壊が引き金となった。氷や泥、岩石、激しい水流が渓谷になだれ込み、行く手にある集落を丸ごとのみ込んだ。映像には、水とがれきの壁が建物をのみ込み、橋や送電線を破壊し、樹木や大きな岩、車両を押し流す中、人々が逃げようとする様子が映っていた。

ネパール唯一のビリオネアで、同国の有力企業グループ、チャウダリー・グループ会長のビノド・チャウダリー氏によると、被害額は少なくとも50億ドル(約8000億円)に達する可能性があり、復興にはネパールで2015年に発生した地震後の再建と同様、7-8年を要する見通しだ。

ネパールで土砂崩れの被害を受けたトリシュリ川沿いのトリシュリ水力発電所(8月30日)

ネパールではさらに下流に監視インフラが整備されているものの、高山地域の広い範囲では依然として観測が十分ではないとウプレティ氏は述べた。

極端な高地に気象観測所を設置し、維持するには多額の費用がかかる上、技術的にも難しい。このため急激な気温変化や永久凍土の状態、氷河に関連する新たなリスクを把握する当局の能力は限られていると、ウプレティ氏は説明した。

衛星分析では、氷河の下にある岩盤が崩壊し、連鎖的な災害を引き起こしたことが示されている。科学者らは、今回の崩壊を直接、気候変動に起因すると判断するのは時期尚早だと注意を促している。ただ、温暖化によって、高地の斜面を安定させる役割を果たす永久凍土が弱まる可能性はある。

ウプレティ氏によると、早期警報システムの改善が現在の優先課題となっている。ネパールの災害対応を統括するNDRRMAの同氏率いるチームは、地域住民が災害に備える時間をより長く確保することを柱としたロードマップを策定しており、近く承認される見通しだという。

ウプレティ氏は、「気候情報に国境を設けることをやめない限り」、遠隔地の山岳地域を発生源とする災害の予測は今後も難しいままだと語った。

原題:Nepal Floods Expose Gaps in Warning, China Data Sharing (1)(抜粋)

--取材協力:Akriti Sharma.

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