(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長が利上げに踏み切るとの観測が強まっているが、ABNアムロ・インベストメント・ソリューションズやブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントなどの債券投資家の間で懐疑的な見方が出ている。
ウォーシュ氏は28日の講演でインフレ抑制に取り組む姿勢を改めて示した。スワップ市場では、連邦準備制度が9月半ばの次回会合で利上げに踏み切る可能性が高いとみられている。今週発表される雇用統計と、その後のインフレ指標に大きく左右されるものの、金融政策の影響を受けやすい米2年債利回りは2カ月余りで最大の上昇となった。
ただ、一部の投資家は疑念を拭えずにいる。ウォーシュ氏はここ数カ月、インフレを抑制する姿勢を一貫して示してきたが、そうした発言のたびに市場を大きく揺さぶってきた。
こうした投資家は、6月と7月に続いて今回も金利を据え置く可能性に備えている。連邦準備制度の信認を巡る懸念がさらに強まれば、すでに約20年ぶりの高水準にある長期債利回りを一段と押し上げかねない。TDセキュリティーズは28日、基本シナリオは金利据え置きだとした。
ABNアムロのクリストフ・ブーシェ最高投資責任者(CIO)は、ウォーシュ氏の発言だけでは米金融当局者が実際に利上げに動くとの確信には至らなかった。インフレ圧力が十分に抑えられていないとの懸念に左右されやすい長期債への投資を避けている。
ブーシェ氏は「政策の反応関数は依然として不透明だ」と指摘。「ウォーシュ氏が9月の利上げを支持せず、それまでインフレの高止まりが続けば、信認を巡る懸念が再び浮上する可能性は確かにある」と述べた。
ウォーシュ氏が5月に就任して以降、投資家はその発信スタイルをつかみかねてきた。金利政策について、歴代議長ほどフォワードガイダンスを示さないためだ。INGは28日の調査リポートで、ウォーシュ氏について「フォワードガイダンスを示さないよう強く意識していたが、発言はまさにフォワードガイダンスを思わせるものだった」と指摘した。
6月に議長として初めて臨んだ記者会見では、インフレ率を連邦準備制度の目標である2%に引き下げるとの決意を示し、トランプ米大統領の意向に沿って利下げに動くのではないかと懸念していた投資家を安心させた。2年債利回りは急上昇し、イールドカーブはフラット化した。
7月には逆の反応を引き起こし、イールドカーブは2025年8月以来、最大のスティープ化となった。長期債利回りが上昇したのは、政策金利を据え置いた連邦公開市場委員会(FOMC)の決定について、ウォーシュ氏が明確な根拠を示せなかったと投資家が受け止めたためだ。
重要なのは行動
ブランディワインのポートフォリオマネジャー、トレイシー・チェン氏は、ウォーシュ氏が先週、債券市場が聞きたかったことを語ったと指摘した。
「だが、発言は発言にすぎない。重要なのは行動だ」と述べた。
チェン氏は米長期国債のアンダーウエートを維持している。ただ、米財務省が今月、10-30年の既発債について、予定していた買い入れを「少なくとも倍増する」と発表したことを受け、アンダーウエート幅を縮小した。
今後の経済指標が重要なのは言うまでもない。とりわけ注目されるのが来月4日に発表される月次の雇用統計だ。先週の発表で、今年3月までの1年間について米雇用者数の伸びが従来の報告より緩やかだったことが示された。それでもウォーシュ氏は、雇用について米国は「順調だ」とし、連邦準備制度の責務のうち物価安定の方をより懸念していると述べた。
物価面では、FOMCの7月会合以降に発表されたインフレ指標が予想を下回り、金利据え置きの判断を正当化する結果となった。ウォーシュ氏は28日、最近のインフレ指標は改善しているものの、まだ明確な傾向を示すには至っていないと述べた。
市場が先回り
DWSアメリカズの債券部門責任者、ジョージ・カトランボーン氏は「経済指標が弱めとなるなか、市場が連邦準備制度に先回りして金融環境を引き締め、利上げを過度に織り込んでも、連邦準備制度が実際には動かないリスクがある」と指摘。「問題は、インフレ率が2%の目標を上回ってきたことより、経済がどの方向に向かっているかだ」と述べた。
カトランボーン氏によると、小売売上高や雇用など最近の指標は、米景気が再加速していることを示していない。米国債は「かなり魅力的」に映るという。
景気の先行きに不透明感があり、ウォーシュ氏が歴代議長のようなフォワードガイダンスを示していないなか、スワップ市場では9月会合に備えたヘッジが活発化し、利上げ確率を約60%織り込んでいる。
ジョージ・コール氏らゴールドマン・サックス・グループの調査担当者は「インフレが明確に落ち着いたことが示されなければ、実際に行動に移すことが不可欠になる」と話す。「9月の判断が微妙な情勢と受け止められるなか、明確な説明もなく再び金利を据え置けば、イールドカーブが7月会合後と同じ動きとなる相応のリスクがある」とした。
原題:Bond Investors Wary After Warsh Fans Wagers Fed Poised to Hike(抜粋)
--取材協力:Alice Gledhill.
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