(ブルームバーグ):アルゼンチン大統領選を1年後に控え、左派野党はミレイ大統領が「国を売りに出している」と批判している。その象徴として、米テクノロジー界の富豪ピーター・ティール氏に非難の矛先を向けている。
野党議員は28日、ティール氏のアルゼンチンでの利害関係を巡り、5時間にわたる議会公聴会を開いた。同氏はブエノスアイレスで邸宅を購入したほか、同国最大の石油輸出会社の株式も取得しており、監視の目が強まっている。
ティール氏は今年に入り、ミレイ氏や閣僚とも会談した。時を同じくして、リバタリアン(自由至上主義者)のミレイ氏は、外国人によるアルゼンチンの土地取得を容易にする法案と、企業をAIだけで運営できるようにする法案を推進し始めた。

一連の法案は、アルゼンチンへの新たな外国投資を呼び込もうとするミレイ氏の取り組みの一環だ。ただ、国民の反発も招いており、来年の大統領選をにらむペロン主義派の野党は、ナショナリズムに訴える格好の材料としている。
こうした流れの中で、ティール氏が格好の標的となった。28日の議会公聴会では、会議室の大型画面に血のように赤い背景と白い文字で「なぜティール氏はここにいるのか」と映し出された。この問いが公聴会のテーマとなった。
公聴会に先立ち、ティール氏のブエノスアイレスの邸宅前では、同氏が「ロード・オブ・ザ・リング」の愛好家であることにちなみ、登場人物ガンダルフに扮した人々が抗議デモを行った。参加者はサッカーの応援歌をティール氏や同氏のデータ分析会社をやゆする歌詞に替えて歌い、ガンダルフの有名なせりふ「ここは通さん」と書かれた横断幕を掲げた。
公聴会では、テーブルにティール氏やミレイ氏、閣僚らの名札が並べられた。いずれも出席を要請されていたが、姿を見せなかった。代わりに野党議員は、AIやテクノロジー、神学、土地利用の専門家を招き、ティール氏がアルゼンチンに関心を寄せる理由についてさまざまな説を展開させた。その多くは、破滅的な事態につながりかねないとする内容だった。
ティール氏の代理人はコメントの要請に応じなかった。
こうした騒動は、ミレイ氏が厳しい局面にある中で起きている。同氏の支持率は大統領就任後の最低水準近くにある。
今月には、外国人によるアルゼンチンの土地所有規制を緩和する法案が国民の強い反発を招き、議会は最も重要な条項を骨抜きにした形で可決した。
反対派は現在、他の法案も問題視している。企業をAIだけで運営できるようにする法案のほか、データセンターを含む新産業に税制や関税、為替面で優遇措置を拡大する法案などだ。ミレイ氏は投資を条件に旅券を付与する制度の創設も目指している。こうした動きを受け、野党はミレイ氏が2027年の再選に向けてアルゼンチンの資源を売り渡しているとの批判を強めている。
事情に詳しい複数の関係者によると、ティール氏がアルゼンチンに関心を寄せる主な理由は、核戦争などの事態に備える避難拠点を確保することにある。また政府当局者によれば、ティール氏は企業をAIに運営させるというミレイ氏の構想を熱心に支持したものの、法案の起草には関与していない。同当局者は内部事情を理由に匿名を条件に語った。
ティール氏は来週、ブエノスアイレスで開かれるビジネス会議で講演する予定だったが、理由を明らかにせずキャンセルした。
原題:Peter Thiel Becomes Anti-Milei Rallying Cry for Argentina’s Left(抜粋)
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