ベッセント米財務長官が打ち出した長期債の買い戻しを拡大する計画は、最終的な効果を巡って激しい議論を呼んでいる。ただ、主要な市場指標やポジショニングを見る限り、既に一定の効果が表れている。

ベッセント氏による先週の発表以降、米国債は同年限のスワップをアウトパフォームし、30年物の双方のスプレッドは2月以来の数値に縮小した。指標となる米国債利回りも、長期債の買い戻しを「少なくとも倍増」する米政府の計画を受けて当初は上下に振れたものの、その後は緩やかに低下している。

シティグループの米金利戦略責任者、ジェイソン・ウィリアムズ氏は「財務省によるこの新たな『プット』は、限定的ながら潜在的な下支えとなることで、長期債を保有する際のリスク・リターンの非対称性を改善する」と分析。買い戻し拡大や円買い協調介入を含むベッセント氏の最近の行動についても、「いずれも、目標達成のためなら何でもする用意がある人物であることを示している」と指摘した。

経済専門局CNBCは24日、財務省が連邦準備制度に預けている資金である財務省一般勘定(TGA)を活用し、長期国債の買い戻し拡大の資金を賄う可能性があると報じた。これを受けて国債相場は一段と上昇。原油相場の下落も追い風となった。

長期の借り入れコストは依然として数年来の高水準に近く、世界的に利回りを押し上げている構造的な要因の多くにも変化はない。それでも市場の動きは、ベッセント氏の介入がなければ、借り入れコストがさらに高くなっていた可能性を示している。

買い戻しを大幅に拡大する措置の長期的な効果については不透明感が強い。著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏も、ベッセント氏の介入を誤りだと批判している。それでも多くのトレーダーは今や、市場に大口の買い手が存在することを認識しており、「ベッセント・プット」に逆らうことには慎重になっている。

動画:米財務省が国債利回りの抑制に突然動いたことで、現在誰が米国債を購入し、誰が購入していないのかに注目が集まっている

オプション市場でも同様の動きが見られる。過去1週間は強気に傾いており、長期債の値動きに連動する米国債先物では、プット(売る権利)に対するコール(買う権利)の比率が急上昇していることがその表れだ。対照的に、より短い年限の米国債先物の「スキュー(コールに対するプットの需要の強さ)」は、ここ数カ月続いている中立的な水準に近いままだ。

RJオブライエン・アンド・アソシエーツのデリバティブ(金融派生商品)ブローカー、アレックス・マンザラ氏は「現在の『主戦場』は長期ゾーンで、あえて恐怖という言葉を使うとすれば、今恐れられているのは介入によって長期金利が急低下することだ」と話した。

スワップは、2者が金利の支払いを交換することに合意するデリバティブ契約で、通常は変動金利と固定金利を交換する。企業や投資家が金利リスクをヘッジするために利用することが多い。米国では通常、担保付翌日物調達金利(SOFR)に連動し、30年物スワップは今後30年間の平均的な金利水準についての市場予想を反映する。このため、米30年債と類似した金融商品となる。

世界的に国債の発行が膨らむ中、米国債利回りはスワップ金利に比べて大幅に上昇した。こうした乖離(かいり)を受け、スワップスプレッドの方向性に賭けるヘッジファンドの関心が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストは、こうしたポジションが昨年には過去最高の3050億ドル(現行レートで約48兆5600億円)に増加したと推計した。22年は500億ドル未満だった。

米国債利回りは引き続きスワップ金利を大幅に上回っているものの、ベッセント氏の発表を受けてその差はやや縮小した。10年物のスワップスプレッドも縮小し、双方の差は3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮まり、約38bpとなっている。

INGグループの米州調査責任者、パドレイク・ガービー氏はスワップスプレッドの縮小について、「米財務省が適切な政策だと判断すれば、将来的に買い戻しを何度でも拡大する可能性」を反映していると語った。

それでも最近の低下は、米政府の長期的な借り入れコストが数年にわたって上昇してきた流れをわずかに押し下げたに過ぎない。トランプ政権として低下を目指しているとベッセント氏が話す10年債利回りは、先週に25年以来の高水準を付けた後、26日のアジア時間の取引で4.63%とほぼ横ばい。30年債利回りも5.17%で横ばいとなり、07年以来の高水準からは低下している。

パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の公共政策責任者、リビー・キャントリル氏は「イールドカーブ(利回り曲線)の長期ゾーンで買い戻しを実施すれば、テクニカルには利回りを押し下げる可能性がある。ただ、米国債利回りが高い根本的な理由の一つ、特に構造的な米財政赤字の拡大は近く変わるものではない。米国の債務を賄うには大量の国債発行が必要になる」とコメントした。

原題:Short Squeeze in US Long Bonds Shows ‘Bessent Put’ at Work (3)(抜粋)

(13段落目の10年債と30年債の利回りを26日のアジア時間の取引の数値に更新します)

--協力:杉山容俊.記事に関する記者への問い合わせ先:New York Greg Ritchie gritchie10@bloomberg.net;New York Elizabeth Stanton estanton@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:Ezra Fieser efieser@bloomberg.netBeth Williams、William Selway

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