イランではガソリン不足が深刻化している。米国による締め付けで燃料輸入が困難になっているためだ。燃料を巡っては過去に国内で抗議活動が相次いでおり、供給逼迫(ひっぱく)への懸念が高まっている。

イラン紙ハムシャハリは23日、値上げへの懸念からテヘランのガソリンスタンドで長い列ができ、多くのドライバーがタンクの残量が半分を切る前に給油していると報じた。

国内のエネルギー供給を担当する政府高官は、記録的な需要や戦闘による被害、「国家予算の優先順位の変更」により、ガソリンは1日当たり1400万-1500万リットル不足していると述べた。

イラン学生通信(ISNA)によると、エネルギー最適化・戦略管理機構の責任者、エスマイル・サカブ・エスファハニ氏は先週、「消費量を国内生産の水準まで減らすため、何らかの対策を講じなければならない」と述べた。

米国はイランに対し、ベッセント財務長官が24日に「敵対国に対してこれまで展開された中で最大の金融攻勢」と表現した措置を開始。燃料不足でイランの経済維持力が試されることになる。

産油国イランでは、ガソリン価格は慎重な扱いが求められる問題だ。政府の補助金により、消費者は世界で最も安い水準でガソリンを購入できる。

過去の値上げの試みは死者が出る抗議活動につながった。特に2019年には、治安部隊によって数百人のイラン人が死亡した。現在はインフレと通貨危機の悪化が数百万の一般世帯を圧迫しており、ガソリン価格が急上昇すれば、国民の怒りが再び高まる可能性が高い。

イラン当局は数カ月にわたり、イスラエルと米国による燃料貯蔵施設などエネルギー関連施設への攻撃で、以前から続く需給の不均衡が一段と悪化しており、値上げは避けられない可能性があると国民に警告してきた。米国によるイランの港湾封鎖で、不足分を補うための輸入もできなくなっている。

国民に協力要請

ペゼシュキアン大統領は5月の時点で、配給制の可能性に言及するとともに、可能な限り公共交通機関を利用するよう呼び掛け、国民に協力を求めていた。しかし、こうした警告の効果は出ていないようだ。

イラン側で停戦交渉を主導したガリバフ国会議長は先週、米国とイスラエルが、イランに対する軍事作戦の一環としてガソリン価格の上昇を利用する計画だと述べた。イラン当局は以前、21年に国内の燃料供給網を襲ったサイバー攻撃について、具体名を挙げず「外国」の仕業だとしていた。

政府は、国内を走る約450万台のガソリン・天然ガス併用車のドライバーに対し、圧縮天然ガス(CNG)への切り替えを促している。イラン最大の石油加工施設、ペルシャ湾スター製油所も、ガソリンの増産にメタノールを使用していると、ISNAが23日に報じた。

エネルギー当局者のエスファハニ氏によると、政府は不足に対応するため三つの案を検討している。

第1案は、1日当たり1億2100万リットルの燃料をガソリンスタンドに定量供給し、なくなった時点で給油ノズルを「停止」する。第2案は、1億2100万リットルを超えて販売を続けるが、価格を引き上げる。第3案は、自動車単位ではなく個人単位で割当量を設定するというものだ。

割当制度

イランでは現在、自動車1台ごとに毎月、割引価格のガソリンを割り当てる段階制を採用している。

最初の60リットルは1リットル当たり1万5000リアル(1円=約8600リアル)、次の50リットルは同3万リアル、それを超える分は同5万リアルとなっている。

政府は先週、南部ケルマンで実施していた試験制度を突如打ち切った。この制度では全体の割当量を増やす一方、超過分の購入は1リットル当たり87万2000リアルという大幅に高い価格を適用する予定だった。

当局は試験制度の運営上の不手際が失敗の原因だったと説明。ただ、この高価格設定により、ケルマンで動揺が広がり、政府が国内の他地域でも同様の値上げを計画しているとの懸念が強まった。

原題:Iran Fuel Shortages Spark Lines at Pumps as US Pressure Bites(抜粋)

--取材協力:Arsalan Shahla.

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