1兆5000億ドル(約238兆円)を運用するPGIMで新興国債券チームを率いるキャシー・ヘップワース氏は、新興国市場で最も確信度の高い投資テーマを問われると、迷わずこう答える。「キャリー、キャリー、キャリーだ」

キャリートレードとは、米ドルや円、ユーロなど低金利通貨で安く資金を調達し、トルコ・リラのような高金利通貨に投資する手法だ。債券やマネーマーケットファンド(MMF)で運用すれば、利回りが40%以上に達することもある。

ドルを調達通貨とするキャリートレードは、2008年以来となる7四半期連続でプラスのリターンを上げている。

1989年にPGIMに入社し、1995年には同社の新興国債券運用の立ち上げに携わったヘップワース氏は、「今はキャリーの時代だ」と話す。「利回りを追求する資金が大量に存在する」という。

ブルームバーグが主要新興国8通貨を対象に算出する指標によると、新興国のキャリートレードは2024年末以降、約22%のリターンを上げ、世界の主要な債券投資戦略を大きく上回っている。同期間の米国債投資のリターンは5.9%にとどまり、新興国政府のドル建て債は14%、新興国企業のドル建て債は10%だった。

アジア以外の主要新興国通貨に対してドル安が進んでいることも、リターンを押し上げている。キャリートレードの調達通貨として使われるユーロやスイス・フランなど低金利通貨に対してもドルは下落している。

こうした環境はコロンビアでは特に強力で、債券から12%のリターンを得られるうえ、通貨のスポット相場も45%上昇している。トルコでも、リラは対ドルで26%下落したものの、10年物現地通貨建て国債の利回りが32%を超えており、投資家はなお利益を確保している。

新興国キャリートレードには、さらなる追い風が吹いている。米財務省は19日、長期債の買い戻しを増やすと発表した。米金利を押し下げようとする取り組みは、ドル建て債の相対的な魅力を低下させ、新興国を含む他地域の資産に資金を向かわせる可能性がある。

TSロンバードのマクロ戦略責任者ダニエル・フォン・アーレン氏は、「米政権が米国債利回りの上昇を容認しない姿勢を示していることが、新興国キャリーのロング取引を後押ししている」とリポートで指摘。同社の新興国為替キャリー環境を示す指標も「再び改善しており、当社の確信を強めている」とした。

金利収入も加味したMSCI新興国通貨指数は今年、過去最高値を度々更新している。2025年末以降で3.6%、2024年末以降では11%上昇した。アナリスト予想のコンセンサスとフォワード市場の織り込みはいずれも、こうした流れが続くことを示している。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの新興国米州担当最高投資責任者(CIO)、アレホ・チェルウォンコ氏は、「今後12カ月、新興国通貨はトータルリターンがプラスになると予想している。ここ数四半期にスポット相場が大きく上昇した後だけに、今後は金利差によるキャリーが主なリターン源になる可能性が高い」と述べた。

中南米や東欧を中心に、各国中銀がコロナ禍後のインフレ抑制を狙って政策金利を高水準に維持してきたことも、キャリートレードを支えている。中東情勢の緊迫や高止まりするエネルギー価格も、金融緩和に慎重になる要因だ。

過去12カ月では、ドル調達のキャリートレードによるリターンは、コロンビア・ペソで48%、トルコ・リラで23%、ブラジル・レアルで21%、メキシコ・ペソで19%、南アフリカ・ランドで18%に達した。

チェルウォンコ氏は、ユーロやカナダ・ドルを調達通貨として南アフリカ・ランドやメキシコ・ペソを買う取引を選好している。PGIMのヘップワース氏は、サハラ以南アフリカの一部フロンティア市場のほか、トルコ、コロンビア、ブラジルに注目している。

ただ、大量の資金が流入しているため、取引が混み合い過ぎているとの懸念も出ており、裏目に出るリスクもある。

だが、最大のリスクは、米金利が上昇するとの見方に市場が転じることだ。そうなれば、ドルが他通貨に対して再び上昇する可能性が高い。現時点では、最近の米経済指標や米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の発言は、利上げを来年まで見送るとの見方を支えている。

ゴールドマン・サックス・グループの為替・新興国市場担当チーフストラテジスト、カマクシャ・トリベディ氏は、「インフレはFRBが動かずに済む程度には改善するはずだ」と指摘。「長期金利上昇という短期的な脅威はあるが、その動きが急激でない限り、実質金利の高い新興国通貨は引き続きプラスのトータルリターンをもたらすだろう」と述べた。

原題:‘It’s a Carry World’: EM Trade Notches Longest Run Since 2008(抜粋)

--取材協力:Nicolle Yapur.

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