米財務省が19日に発表した予想外の措置は、長期国債の最近の売りがベッセント財務長官にとって懸念材料になっていることを示す、これまでで最も具体的な証拠だ。

財務省は米国債買い戻しの規模を少なくとも2倍にする決定について、「流動性支援」を一段と強化するためだと説明した。しかしウォール街の見方はもっと単純だ。トランプ政権が掲げる利回り抑制に向け、ベッセント氏がかねて自由に使えると述べてきた豊富な政策手段を財務省が駆使し始めたというものだ。

今回の発表に先立ち、財務省はここ数週間、借り入れコストへの懸念をうかがわせる一連の決定を下していた。財務省が13日に実施した30年債入札は落札利回りが約25年ぶりの高水準となった。今回の措置は、利回りの一段の上昇を見込む投資家への警告にもなる。市場はすぐに反応し、30年国債利回りは一時、10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して5.18%となった。シティグループのストラテジストは顧客に20年国債のロング(買い持ち)を推奨した。

シティのジェイソン・ウィリアムズ氏率いるチームは「われわれの見方では、今回の措置は長期ゾーンの利回りを抑えることが目的で、市場機能のためではない」と指摘。「今回の措置にインフレ鈍化が重なり、今後数カ月の力強い相場上昇に向けた環境が整った」と述べた。

一方、より慎重な見方もある。こうした措置だけで長期的な効果が得られるのか疑問視し、市場への圧力が根強く残っていると指摘する声も出ている。

市場関係者のコメントは以下の通り。

INGグループの米州調査責任者、パドレイク・ガービー氏:

公式には、長期国債の買い戻し増額は流動性を高めるためだ。しかし、それなら2週間前に発表された通常の四半期定例入札計画の一環として実施できたはずだ。今になって実施するという事実は、別の狙いがあることを示唆する。長期国債利回りに大きな上昇圧力がかかる中、市場の不安を和らげることだ。圧力を弱めることはできても、止めることはできない

バークレイズのアンシュル・プラダン氏率いるストラテジストら:

今回発表された長期ゾーンの買い戻し増額は、実質的に長期国債の供給を減らすものとみている。こうした発表は通常、四半期定例入札の会合で行われ、定例会合の合間に発表されることはない。最近の利回り上昇が財務省の注意を引いたことを示唆している

シグナルを送ることは重要だ。長期債利回りが上昇すれば、財務省が微調整に動く用意があることを投資家は今や認識している

相場上昇が反転した場合、財務省はいつでも長期国債の買い戻しを増やすことができる。発表には「1回の買い戻し当たり少なくとも40億ドル」とある

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のストラテジスト、ウィル・ホフマン氏とアイラ・ジャージー氏:

発表のタイミングは予想外で、おそらく戦略的なものだった。四半期定例入札の通常の日程とは別に、重要な経済指標の発表がなく、夏場で流動性も薄いとみられる静かな週を選んで増額を発表したのは、発表による市場の反応を増幅させる狙いがあった。「少なくとも40億ドル」という追加措置が実際に何を意味するかはまだ分からないが、これは現政権が初めて活用した主要な国債発行の調整手段であり、今後さらに独創的な措置を講じる余地を開くものだ

チューリッヒ・インシュアランスのチーフストラテジスト、ガイ・ミラー氏:

これはかなりうまいやり方だった。意図が示された。長期ゾーンを押し下げたいという一貫した姿勢が示された。また、より短期の国債発行に軸足を移してきたこれまでの取り組みを継続するものでもある

どこが痛点なのかを示したことになり、市場はいずれ再びそこを試すだろう。公平に見れば、ベッセント氏と政権には相当な手段がある。再び介入し、押し返すこともできる。しかし最終的に、長期的な方向を決めるのは政策だ。われわれはまた症状について話しているのであって、原因を治しているわけではない。そして、これが効くのも一定期間にすぎない。財務省が長期金利の抑制に向けて対応を続ける強い姿勢を示している以上、かなり強力な介入になり得る。しかし結局のところ、放漫な政策に対処しない限り、いつまでも持続できるものではない

ウェルズ・ファーゴの金利ストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏:

財務省はわずか2週間前、少なくとも今後数四半期は利付国債の発行規模を維持するとの方針を据え置いた。このため、今回の買い戻し拡大が11月の長期国債入札の発行額削減を予告するものとは考えていない。ただ、2027年に長期国債の発行額が削減される可能性は高まったとみている。一方、財務省は今回の措置を事実上の長期債発行削減と捉えている可能性が高い

今後、長期国債利回りの低下を持続させるには、別の材料が必要になる可能性が高い。成長とインフレの鈍化、米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートや金利政策を巡る不透明感の後退、財政再建、投資適格債の発行鈍化などが考えられる

ドイツ銀行のグローバル為替戦略責任者、ジョージ・サラベロス氏:

米国債の買い戻しと、外国当局に外国・国際通貨当局(FIMA)向けレポファシリティーの利用を促す動きはいずれも、米国のイールドカーブ(利回り曲線)の長期ゾーンを抑えることを目的とした、緩やかな形の金融抑圧政策だとみている

いずれの動きもドルにはマイナスだと考える。米国債価格の下落による市場調整が『許されない』のであれば、外国人投資家が保有する米国債の価値は、ドル安を通じて為替面で調整されざるを得ない

総じて、市場は今後、米国債市場を支えることを目的とした追加措置に一段と注目する可能性が高い。そうした措置が市場価格をゆがめるものと受け止められるほど、ドルは下落しやすくなるだろう

BNPパリバのグニート・ディングラ氏率いる金利ストラテジストら:

FRBが政策をなお据え置く中、長期国債利回りが世界金融危機前のピークに達したことへの対応だと考えている

債券自警団を抑え込むための一連の取り組みにもかかわらず、こうした措置でFRBへの信認低下や金利上昇期待を相殺するのは難しいとみている

長期ゾーンのショート(売り持ち)ポジションを維持する

原題:‘The Treasury Is Watching’: Bessent’s Buybacks Jolt Bonds (1)(抜粋)

--取材協力:Sujata Rao、Cameron Fozi.

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