(ブルームバーグ):米ゼネラル・モーターズ(GM)、米フォード・モーター、韓国の現代自動車はいずれも日本市場で国内勢に勝てず、撤退した経験がある。中国の比亜迪(BYD)はこのパターンを初めて打ち破ることに賭けている。
日本市場開拓に向けてラインアップや販売網を拡大してきたBYDは7月、日本専用に開発した軽電気自動車(EV)「Racco(ラッコ)」を投入した。同社によると、発売から数週間で1000件以上の注文が入った。
BYDの創業者である王伝福氏は6月、5年以内に世界一の自動車メーカーを目指すと意気込んだ。トヨタ自動車の年間販売台数1130万台を上回る必要があるが、BYDの25年販売は460万台で、米国市場にも参入できていない。難関として知られる日本市場での成否は、同社が真のグローバルメーカーになれるかの試金石となりそうだ。
コンサルティング会社オート・フォーサイトの創業者である張豫氏は、日本のように厳しい市場への進出は「世界的なブランド認知度と評判を高める」と指摘する。
ラッコは、政府の補助金により価格面で優位性のあるホンダや日産自動車などと競合することになる。それでもBYDは世界展開を支えてきたスピードと型破りな発想を武器に、世界で最も攻略が難しい市場の一つである日本に食い込めるとみている。
「日本市場を『マイナーな機会』と位置づけるのは、BYDが狙うセグメントの規模を過小評価している」と格付け会社フィッチ・レーティングスの青山悟シニア・ディレクターは英文リポートで述べた。BYDの取り組みは「短期的な販売台数の拡大よりも、長期的なブランド構築戦略を反映している」という。
日本の軽自動車市場への参入を試みた海外メーカーは過去にもある。ドイツのメルセデス・ベンツ・グループが20年ほど前、クーペをベースに軽自動車規格に適合させた「スマートK」を販売した。ただ、同市場を明確にターゲットとした専用車を開発したのはBYDが初めてだ。
昨年、日本では160万台以上の軽の乗用車やトラックが販売され、新車販売台数の3分の1以上を占めた。このセグメントでは、ホンダ、スズキ、ダイハツ工業が合計で約80%の市場シェアを握る。25年の販売台数は7%増と、市場全体の2倍の伸びを記録した。これが、BYDが同市場に参入余地を見いだしている理由の一つだ。
もっとも、補助金格差の問題に加え、日本の消費者は長年にわたり国産車や、航続距離と信頼性の高さからガソリン車やハイブリッド車を好んできた。また、急速充電設備の整備が遅れていることもEV購入を検討する消費者の航続距離への不安につながっている。
BYDは「ラッコ」のほか、プラグインハイブリッド車を2車種追加する計画だ。また、販売網の整備も進めており現在は正規ディーラー56店舗を含む77カ所の販売拠点を構えている。それでも日本市場での存在感はなお小さい。
23年の市場参入以来、25年末までの乗用車の累計販売台数は約7400台にとどまり、トヨタが国内で1カ月間に販売する台数のほんの一部に過ぎない。
BYDジャパンの劉学亮社長によると、同社はさらに高い目標を掲げており、ラッコの初回受注数約1000台の10倍の販売を目指している。
「近道はない」。劉社長はこう記者団に語った。販売目標はBYDにとってだけでなく、「日本の電気自動車の普及に対しとても大切な1万台だ」と強調した。
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