(ブルームバーグ):米マイクロソフトは今年1-6月(上期)、炭素除去への投資を大幅に縮小した。AIへの支出を拡大する中での動きとなる。
ブルームバーグNEF(BNEF)の試算によると、7月半ばまでの年初来、マイクロソフトのカーボンクレジット購入量は855万トンで、前年同期比で約80%減少した。2020年に参入した同市場で、23年以来初めて購入量が前年を下回るペースとなっている。
一方、同社の二酸化炭素排出量は増えている。最新のサステナビリティーリポートによると、AIによる旺盛な電力需要に加え、よりクリーンな電力供給の拡大が遅れているため、昨年の排出量は25%増加した。

マイクロソフトなどのハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)はAI開発競争を繰り広げており、事業規模の拡大と、従来掲げてきた気候目標との両立が難しくなりつつある。ブルームバーグ・ニュースは4月、同社が財務面を考慮し、一部のカーボンクレジット購入を一時停止していると報じた。当時、同社はこの取り組みを終了したわけではないと説明していた。
広報担当者はブルームバーグ・ニュースへの電子メールで、カーボンクレジットの購入は脱炭素化に向けた取り組みの柱の一つに過ぎないと説明。「いかなる調整も、規律ある取り組みの一環であり、目標を後退させるものではない」と述べた。
今年は購入ペースを落としているものの、同社は企業が自主的に購入するカーボンクレジット市場で依然、突出して最大の買い手。今年これまでの取引量のほぼ半分を占める。
存在感が大きいだけに、同社の方針転換は市場に大きな影響を及ぼす。BNEFのデータによると、世界のカーボンクレジット販売量は7月半ばまでに1800万トンで、前年同期比で66%減少のペースとなっている。
BNEFで同市場を担当するアナリスト、レイラ・カンファー氏は「購入規模が非常に大きいだけでなく、マイクロソフトの動きは、炭素除去が投資に値するとの重要なメッセージを同業他社に送ってきた」と指摘。「同社が後退すれば、それもまたメッセージとなり、他社が市場のけん引役を引き継ぐのをためらいかねない」と述べた。
国連が支援する科学者らは、排出削減だけでは地球温暖化による最悪の影響を防げないと警鐘を鳴らす。50年までに、大気中から年間数十億トンの二酸化炭素(CO2)を除去する必要もある。直接空気回収(DAC)など一部の炭素除去技術は、大規模導入には依然としてコストが高過ぎる。このため、まだ黎明(れいめい)期にある業界は、自主的にカーボンクレジットを購入する企業に開発資金を依存している。
マイクロソフトがカーボンクレジットの購入ペースを抑える一方、他の買い手は動きを活発化させている。例えば、米決済処理大手ストライプやアンソロピック、アルファベットなどが参加する企業連合「フロンティア」は6月、炭素除去プロジェクトの支援に9億1500万ドル(約1460億円)を拠出すると表明した。
炭素市場の取引・助言会社ブエルタ・カーボンの創業パートナー、リー・ボストック氏は「市場を評価する際、マイクロソフトの動きだけを見るべきではない」と指摘。「市場は前向きで心強い方向に発展していると考えているが、売り手と買い手は、市場が現在どの段階にあるのかを現実的に捉える必要がある」と述べた。
BNEFのデータによると、20年以降、世界のカーボンクレジット購入量の41%をマイクロソフトが占めている。
原題:Microsoft Cuts Purchases of Carbon Removals by 80% Amid AI Push(抜粋)
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