10日のニューヨーク市場では、原油価格の上昇を背景に株価が低迷し、債券利回りが上昇した。12日発表の7月消費者物価指数(CPI)を控えた神経質な市場では、円が一段安となった。一時1%余り下げて、1ドル=159円36銭を付けた。

日本の祝日入りで流動性の低下が予想される中、トレーダーは日米通貨当局による追加介入の可能性に身構えている。

ステート・ストリートのストラテジスト、リー・フェリッジ氏は「新たな介入が入らない限り、円はじりじりと下げ続けるだろう」と話す。「追加介入がないことに市場は失望しているようだ」と述べた。

ラボバンクの為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏は「市場では、ドル・円の下落が持続するとの確信がすでにぐらついていた」と述べた。

CIBCのストラテジスト、マクシミリアン・リン氏は「ドル・円は今もなお、原油高などの外部要因に左右されていると考えている」とし、「日本国債の低利回りという根本的な問題は解消されていない。その結果、ドル・円が8月中に再び160円を上回るとの当行の予想に変わりはない」と語った。

日本銀行が10日公表した「主な意見」によれば、7月30、31日に開いた金融政策決定会合で、複数の政策委員が従来よりも利上げペースを加速する必要性に言及していた。

共同通信は日米両政府が7月31日(米東部時間)に実施した円買い協調介入について、日本銀行の植田和男総裁が9月の利上げを強く示唆したことが決め手となったと、日本政府関係者を引用して報じた。

ブルームバーグのマクロストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は「7月末の協調介入は、当然ながら市場を納得させられなかった。8月に入り円は主要10通貨中唯一の下落通貨になっており、介入後の上昇を失いつつある。しかし投資家は円のショートポジションを改めて積み上げるのに伴い、追加介入のリスクは高まる」と述べた。

米株式相場

株式市場はもみ合い相場を小幅安で終えた。エヌビディアは2.9%下落。米大手投資会社の企業連合は、AIインフラの整備に向けた5000億ドル(79兆6000億円)の資金提供を巡り、エヌビディアとの提携で合意した。

株式相場ではホルムズ海峡再開の可能性を巡って一時期待が高まっていたものの、協議進展に関する曖昧な報道に市場が好反応を示す可能性は以前より低くなっていると、モルガン・スタンレー傘下のEトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は述べた。

「雇用統計によって9月利上げを巡る不安はいくらか和らいだかもしれないが、今週のインフレ指標が予想以上に鈍化しなければ、そうした懸念はこれまで以上に強まる可能性がある」と付け加えた。

ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査では、7月のCPIは前月比0.1%の上昇が予想されている。6月は0.4%の低下だった。

JPモルガン・マーケット・インテリジェンスのチームによると、インフレ指標が予想を上回った場合に米国株が受ける打撃は、ハト派的な内容だった場合に主要株価指数が受ける押し上げ効果より大きくなる可能性が高い。

アンドルー・タイラー氏が率いる同チームは「株式のポジション整理は進んだが、債券市場はインフレ急加速により敏感なようだ。それはわれわれのシナリオにも反映されており、タカ派的な指標はハト派的な指標より大きな影響を及ぼすとみている」と記した。

個別企業のニュースとしては、インテルが普通株式150億ドル相当の公募増資を発表した。

マイクロソフトは次世代AI半導体の生産を「大幅に」増やす計画だと、テクノロジー系ニュースサイトのジ・インフォメーションが報じた。

ジェフリーズはアップルの投資判断を「アンダーパフォーム」に引き下げた。「iPhone」事業の先行きを懸念しており、特に平均販売価格(ASP)を長期的に引き上げる力に疑問を呈している。

米国債

米国債相場は軒並み下落。原油価格の続伸と、19件に及ぶ起債が嫌気された。ただ材料不足で商いは細く、先物の取引高は平均を下回った。

10年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.70%を付けた。市場は12日に発表される7月の消費者物価指数(CPI)に注目している。

クリーブランド連銀のハマック総裁は、インフレ率をFRBの2%目標に低下させるには複数回の利上げが必要になる可能性があるとの考えを示した。ただ、政策金利の最終的な到達点については予断したくないとした。

原油

原油相場は上昇。イランとオマーンによるホルムズ海峡再開に向けた合意がなお成立していないことを背景に買いが継続的に入った。紅海沿岸近くのサウジアラビアの製油所への攻撃を受け、欧州のディーゼル価格が急騰したことも材料視された。

北海ブレント先物は過去3営業日で5%超上昇した流れを引き継ぎ、1バレル=87ドル近辺で終えた。イランは8日、合意は「非常に近い」と表明した一方、10日には、ホルムズ海峡の再開には米国によるイラン船舶への封鎖解除や損害賠償が必要だとの立場を改めて示した。

中東各地で続く攻撃も市場の警戒感を強めた。アブダビ国営石油会社(ADNOC)が運航するタンカー1隻が週末にホルムズ海峡で再び攻撃を受けたほか、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、サウジアラビアのジャザン製油所に攻撃したと主張した。サウジのエネルギー省は9日早朝、ジャザン製油所で発生した火災は消し止められたと発表したが、原因については明らかにしなかった。

ジャザン製油所への攻撃は、すでに逼迫(ひっぱく)していた世界のディーゼル市場に一段の緊張をもたらした。ホルムズ海峡を通る輸送の混乱が、ロシアの燃料輸出禁止措置の影響をさらに強めたためだ。石油製品価格は総じて上昇し、米国のディーゼル価格が上昇したほか、欧州のディーゼル先物は通常取引終了後に10%超上昇した。欧州の天然ガス先物も一時12%急騰した。

キャピタル・エコノミクスの気候・コモディティー担当エコノミスト、ハマド・フセイン氏は「ホルムズ海峡再開に向けた合意は当面見込めそうにない」と指摘。「現状が明確に変化する兆しがない限り、北海ブレント原油は当面、80-90ドルのレンジで不安定な値動きが続くだろう」と述べた。

戦争前は、世界の原油と天然ガスの約2割がホルムズ海峡を通って世界市場へ輸送されていた。中国需要の低迷や戦略備蓄の放出などを背景に、市場は極端な供給逼迫(ひっぱく)を免れてきたものの、供給余力は危険な水準まで縮小している。

トランプ大統領は交渉について、「今は静かに進めている」と9日にアクシオスに語り、慎重な姿勢を示した。これまで数週間にわたり、合意の実現に自信を示す一方、交渉が決裂すれば攻撃も辞さないと警告してきた姿勢から転じた格好だ。この方針転換により、ホルムズ海峡の航行再開はなお見通せない状況となっている。

ホルムズ海峡を通過する船舶は依然として少ない。エナジー・アスペクツの創業者で市場分析部門ディレクターのアムリタ・セン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、現在の通航船舶は1日当たり約5隻と、米国とイランが6月に覚書(MOU)で合意した後の約14隻を大きく下回っていると指摘。「状況が本当に変わりつつあると判断するには、通航船舶の増加を確認する必要がある」と述べた。

アムリタ・セン氏のインタビュー

イランがホルムズ海峡を巡る強硬姿勢を維持する可能性を示す動きとして、強硬派のモフセン・レザイ氏が最高国家安全保障会議(SNSC)の新たな事務局長に任命された。イスラム革命防衛隊(IRGC)の元司令官であるレザイ氏は、ホルムズ海峡に対するイランの完全な支配を主張してきた。

カロバー・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は「市場が織り込んでいるのが正常化の確実性ではなく、供給混乱の『可能性』である限り、相場は強気基調が続くだろう」と予想。「実際に物流が正常化するのを確認するまでは、地政学リスクが原油価格の下支え要因になると考えている」と述べた。

ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は3日続伸し、前営業日比3.95ドル(5.1%)高の82.13ドルで取引を終了。北海ブレント先物10月限は5%高の87.72ドルで引けた。

金

金相場は続伸。スポット価格は1オンス=4300ドルを上回る水準を維持した。ホルムズ海峡を巡る最新情勢を見極めるとともに、今週発表される米国の重要なインフレ指標を待つ展開となった。

ホルムズ海峡の航行再開を巡る合意が成立していないことを受け、北海ブレント先物は上昇。最近の労働市場の減速にもかかわらず、エネルギー価格の上昇により、米FRBが年内に利上げを実施するとの懸念が強まっている。利子を生まない金は、一般的に金利上昇局面では不利となる。

TDセキュリティーズのシニア・コモディティー・ストラテジスト、ライアン・マッケイ氏は、エネルギー価格が再び上昇する中、金相場が一段高となるには、インフレの長期化と景気減速が同時に進む「スタグフレーション」を示すより明確な兆候が必要になるかもしれないと指摘。一方で、アジア勢の旺盛な買い需要や上場投資信託(ETF)への資金流入が金相場を下支えしているとの見方を示した。トレンドフォロー型の投資家が強気の金ポジションを縮小し始めており、ポジションを積み増すには金価格が4400ドルを上回る必要があると付け加えた。

金相場はここ数週間、重要な下値支持線となっている4000ドルを上回って推移している。戦争をきっかけとした下落で6月に弱気相場入りした後は、押し目買いの動きが強まっている。

スポット価格はニューヨーク時間午後2時30分現在、前営業日比25.42ドル(0.6%)高の1オンス=4366.98ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は同20ドル(0.5%)高の4419.70ドルで引けた。

欧州

10日の欧州株式市場では、ストックス欧州600指数が小幅上昇し、最高値で取引を終了した。この日は薄商いだったが、エネルギー株が原油高に連れて買いを集めた。半導体関連銘柄が上昇し、テクノロジー株も高い。一方、金利に敏感な公益事業や不動産株は下落した。

欧州債市場では、中期債を中心にドイツ債、英国債が下落した。ホルムズ海峡の再開をめぐり、近い将来の合意成立が一段と不透明になる中、エネルギー価格が押し上げられた。

短期金融市場が織り込む欧州中央銀行(ECB)の利上げは年末までに38ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、7日時点の36bpから上昇した。スワップが示唆するところによれば、引き締め局面は来年9月がピークと想定され、それまでに計57bpの利上げが織り込まれている。

トレーダーはイングランド銀行(英中央銀行)の今年の利上げを計28bpと見込む。先週は同24bpだった。1年後までは計56bpの利上げが想定されている。

8月10日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:Yen Erases Half of Gains From Historic US-Japan Intervention (1)(抜粋)

原題:Dollar Climbs; Yen Erases Half of Intervention Gains: Inside G10(抜粋)

原題:Stocks Churn as Hormuz Standoff Spurs Rally in Oil: Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasuries Fall as Oil Rises, Corporate Bond Sales Proliferate(抜粋)

原題:Oil Surges as Iran’s Hormuz Deal With Oman Remains Elusive(抜粋)

原題:Gold Holds Above $4,300 as Traders Weigh Hormuz Talks, Inflation(抜粋)

原題:European Stocks Steady Near Record High on Earnings Optimism

Bunds, Gilts Fall by Most This Month: End-of-Day Curves, Spreads(抜粋)

(欧州市況を加えます)

--取材協力:鈴木克依.

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