(ブルームバーグ):借入金を活用した買収(LBO)スキームの策定・実行を巡り、一連の経営判断に問題があったとして、民事再生手続き中の不動産会社、ユニゾホールディングスが元社長の小崎哲資氏に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(柴田義人裁判長)が小崎氏に計29億9320万円を支払うよう命じていたことが分かった。
判決は7月24日付で言い渡された。ブルームバーグが入手した判決文によると、2020年の株式非公開化に際し、多額の借り入れを伴うLBOスキームを十分な財務分析や事業計画がないままに進めたことが、経営破綻を招いた一因になったとして、当時の経営トップとしての責任を認めた。LBOを巡る経営判断で、損害賠償が認められたケースは異例だ。
ユニゾを巡っては、19年7月に旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が株式公開買い付け(TOB)を始めたことをきっかけに、複数の投資ファンドが参戦する争奪戦に発展した。最終的にユニゾの従業員が設立した買収目的会社(SPC)が米プライベートエクイティー(未公開株、PE)ファンドのローンスターから資金を借り入れ、20年6月に非公開化した。
国内初の「従業員による買収」(EBO)として、ファンド勢からの買収攻勢を退けたことで注目を集めた。ただ、TOB価格の引き上げ合戦の末、最終的な買収総額は約2050億円に膨らんだ。高値での買収を支えた巨額の借り入れはその後の財務を圧迫し、ユニゾは約3年後に経営破綻した。
判決によると、従業員SPCは買収資金としてローンスターから融資と出資を合わせて約2059億円を調達した。その後、ユニゾが同SPCに約2572億円を貸し付け、資金はローンスターへの返済に充てられた。貸付資金の原資は、ユニゾが実施した事業用不動産の売却代金で賄われ、不動産売却額は約2963億円に上った。
地裁は、小崎氏がLBO後のユニゾの貸借対照表やキャッシュフローがどのように変化するのかを具体的に検討せず、合理的な事業計画も作成しないまま、約2572億円の貸し付けを組み込んだスキームを策定・推進したとして、取締役としての善管注意義務に違反したと結論付けた。
さらに、新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻を契機とする物価上昇などの外部要因を考慮しても、この貸し付けがなければ同社が経営破綻しなかった可能性が極めて高いと判断。小崎氏が貸し付けを推進したことは、ユニゾが倒産した原因の「少なくとも重要な一つ」と指摘した。
小崎氏の弁護団にコメントを求めたが現時点で回答は得られていない。ユニゾHDの広報担当者は、コメントを差し控えるとした。
小崎氏は、1976年に旧日本興業銀行に入行後、みずほ銀行副頭取やみずほフィナンシャルグループ副社長を経て、10年6月に旧興銀の親密先である常和ホールディングス社長に就任した。社名をユニゾホールディングスに変更するなど、みずほからの独立路線を志向した。
地裁は、小崎氏について、企業財務の専門家として株主と債権者の利害を調整し、財務の健全性を確保する重要性を通常の経営者以上に理解できる立場だったと指摘した。
小崎氏には、2572億円の貸し付けを巡る損害としてユニゾが請求していた25億7200万円に加え、社長退任後に支払われた顧問料5億3820万円のうち、顧問契約の変更で上乗せされた4億2120万円についても任務懈怠(けたい)によって生じた損害と認定し、ユニゾへの支払いを命じた。
ユニゾは23年4月26日、社債の償還資金が確保できなくなったとして民事再生法の適用を申請し、東京地裁は5月9日に開始を決定した。
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