背景にある「経済的虚無主義」と絶望感

なぜ彼らはそこまでリスクを取るのでしょうか。その背景には、世代特有の危機的な経験があります。

世界金融危機の際に親が資産や家を失うストレスを目の当たりにし、高校や大学を卒業し社会に出る時期にはコロナ禍に直面しました。現在、アメリカの経済全体は良好に見えますが、若者の失業率は7%前後で推移しており、仕事探しに苦労しているのが現実です。

Z世代には奇妙な二面性があります。投資ポートフォリオには他のどの世代よりも多くの資金を持っているにもかかわらず、マイホームを所有できる可能性ははるかに低いのです。家賃は上がり続け、賃金は停滞し、あらゆるものが高すぎて手が出ない――こうした状況下で生み出されたのが「経済的虚無主義」という考え方です。

従来の長期的な資産形成の仕組みがもはや機能していないと感じた彼らは、マイホームなどの購入を諦めるにつれて消費を増やし、労働を減らし、資産を築くための唯一の手段として一か八かのリスクの高い投資に資金を投じているのです。また、過去20年間、年平均15%もの成長を見せたS&P500のような「強気相場」しか経験していないことも、「株式市場で取引すれば勝てる」という感覚を後押ししています。

アプリがもたらす「投資のゲーム化」とギャンブルとの境界線

テクノロジーの進化により、投資はSNSと同じような娯楽へと変貌しました。インスタグラムで「いいね」を押したり、TikTokを見たりする合間に投資アプリを開き、ボタン一つで取引を行います。この「投資のゲーム化」は脳に快感を与え、株に投資することを楽しくさせています。

かつてはヘッジファンドなど専門家の領域だったアメリカのオプション取引市場において、個人投資家が主導して取引量の過去最高を何度も更新しているのはその証左です。しかし、学術研究によれば、若者の過剰なトレードは手数料による利益の損失や、トレンドを追いかけての高値づかみを招くなどマイナス面も多いと指摘されています。

彼らは株や債券だけでなく、仮想通貨も積極的に保有しており、ギャンブルと投資の境界線はますます曖昧になっています。企業に投資して雇用を生み出し経済を成長させる本来の投資とは異なり、単なるゼロサムのマネーゲームに陥っている側面も否めません。

リスク許容度の地域差と、スマホ世代の真の姿

このようなリスクへの意欲は、世界共通というわけではありません。アメリカや、レバレッジ型ETF取引が盛んな韓国ではリスクを好む傾向が顕著ですが、ヨーロッパは銀行預金など安全資産を好む保守的な傾向にあります(現在は国を挙げて株式投資への移行を推進中)。また、中国のZ世代を対象とした調査では、彼らはリスクを避け、金(ゴールド)に投資する傾向が高いことも分かっています。

しかし、どの国であっても若い投資家を子供扱いして軽視することは危険です。富は確実に生み出されており、彼らは生まれた時からスマートフォンと共に育ち、知りたいことは何でも自分で調べる高いリサーチ能力を持っているからです。

深刻な経済格差が広がり、社会の仕組みが自分たちを助けてくれないという絶望感。そして、SNSで華やかな暮らしを目にし、短期間で大金を稼ぐことが許容される文化。生活費の高騰という「危機」と、リスクを恐れない「文化」が交差するこの特異な状況こそが、現在のZ世代が置かれているリアルな投資環境なのです。