東南アジア5カ国は昨年、国ごとに濃淡はあるものの、内需と外需の双方に支えられ、総じて底堅い成長が続いた。世界的な半導体・電子部品需要の回復やサプライチェーン再編を背景に、電気・電子製品を中心とする財輸出が持ち直し、ベトナムやマレーシアなど輸出主導型経済の成長を下支えした。一方、内需は雇用所得環境の改善や各国政府のインフラ投資、景気支援策により消費や投資が底堅く推移した。実際、25年の実質GDP成長率をみると、ベトナムが前年比8.0%(24年:同7.0%)と高成長となり、マレーシアが同5.2%(24年:同5.2%)、インドネシアが同5.1%(24年:同5.0%)と5%台の成長を維持した。一方、タイは同2.4%(24年:同2.9%)と低成長が続き、フィリピンは同4.4%(24年:同5.7%)と公共投資の低迷や物価高を受けて減速した。

2026年は、東南アジア5カ国の成長率が鈍化すると予想する。財輸出は底堅く推移するだろうが、前年から続く輸出好調による押し上げ効果には一服感がみられ、中東情勢の悪化に伴う物価高や金融引き締めも内需の重石となるためである。そうしたなかでも、電気・電子関連輸出は2025年以降に一段と拡大しており、AI・データセンター関連を中心とする世界的な半導体・電子部品需要が景気を下支えしている。また、米中対立やサプライチェーン再編を背景に、東南アジアは製造業の生産移転先としての重要性を高めている。さらに、マレーシアやタイなどではデータセンター投資も拡大しており、電力インフラや工業団地など周辺需要への波及も期待される。一方、米国の通商政策を巡る不透明感は企業活動の重石となるだろう。

サービス輸出は、観光需要の回復が続くものの、地域全体としての押し上げ効果は限られるだろう。コロナ禍後の回復局面は一巡し、インバウンド需要の増勢は緩やかになっている。ベトナムやマレーシアでは回復が続く一方、タイでは外国人観光客数が前年を下回り、中国人観光客の戻りの鈍さも残るため、サービス輸出が成長率を大きく押し上げる状況にはなりにくい。

内需は、雇用所得環境の改善や公共投資、政府支援策に支えられる一方、物価高や金融引き締めが下押し要因となり、国ごとに濃淡が生じるだろう。インドネシアは年初の消費押し上げ効果が一巡して減速するものの、家計消費や投資を中心に内需主導の安定成長が続くとみられる。マレーシアでは雇用・賃金環境の改善が消費を支え、データセンター関連を含む民間投資も内需の下支えとなろう。ベトナムでは公共投資が高成長を支えるほか、個人消費も底堅く推移するとみられるが、物価高による実質購買力の低下が消費の抑制要因となる可能性がある。フィリピンでは物価高と金利上昇、公共投資の低迷が消費や投資を抑制し、タイでは高水準の家計債務や観光回復の遅れが引き続き消費の重石となるだろう。

金融政策は、2025年に緩和方向で推移したが、2026年は中東情勢の悪化に伴う原油高や通貨安を受け、一部で引き締めに転じている。6月までに、インドネシアでは累計1.0%、フィリピンでは同0.5%の利上げが実施された。金融引き締めは家計消費や企業投資の重石となる可能性がある。一方、マレーシアとタイは金利を据え置き、ベトナムは商業銀行の金利抑制を通じて成長にも配慮している。先行きは、原油価格の軟化によりエネルギー価格の上昇圧力は和らぐものの、通貨安や公共料金上昇など物価押し上げ要因が残り、各国中銀は慎重な政策運営を続けるだろう。

国別にみると、ベトナムは前年比7.0%(25年:同8.0%)と減速するが、5カ国で最も高い成長を維持しよう。インドネシアは同5.0%(25年:同5.1%)、マレーシアは同4.5%(25年:同5.2%)と、内需を中心に比較的高い成長が続くだろう。一方、タイは同1.9%(25年:同2.4%)と低成長にとどまり、フィリピンは物価高や公共投資の低迷により同3.7%(25年:同4.4%)へ低下すると予想する。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠)