(ブルームバーグ):イランに対する大規模空爆を再び実施した米国は、ジレンマに直面している。イランによる攻撃への報復として軍事行動を拡大するのか、それとも逼迫する弾薬の補充やエネルギー市場混乱の沈静化を優先するのかというジレンマだ。
いずれの選択肢も、5カ月に及ぶ戦闘を早期終結へ導く決め手にはなりそうにない。トランプ大統領はイランに降伏を迫ることも、ホルムズ海峡を巡る問題で譲歩を引き出すことも、外交交渉を本格的に再開させることもできていない。一方、米国内で戦争への支持が薄れる中、米国は軍需物資の補充にも苦戦している。
トランプ氏がイランへの強硬対応を表明した後、米中央軍はイラン革命防衛隊に関連する「数十カ所」の標的を攻撃した。ただ、今回の空爆がイランに対する本格的な軍事作戦の再開を意味するかどうかは、トランプ政権は明らかにしていない。
かつて米中央情報局(CIA)でイラン分析を担当し、現在はジェームズ・マーティン不拡散研究センターの研究員を務めるジム・ラムソン氏は、「これほど大規模な攻撃でも、革命防衛隊が継続的な報復攻撃を行ったり、ホルムズ海峡で商船を脅かしたりする能力を損なうとは考えにくい」と指摘。「イランが白旗を掲げ、国益に反するような譲歩を受け入れるとも思わない」と語った。
今週の一連の展開で、トランプ大統領は「泥沼化はさせない」と公言してきた戦争から抜け出すことが一段と難しくなった。29日には液化天然ガス(LNG)運搬船2隻が攻撃を受け、2月下旬の戦闘開始以来、エジプト領海で初めての攻撃となった。イエメンの親イラン武装組織フーシ派は紅海で船舶への脅威を強めている。サウジアラビア軍は今週、イラクの親イラン民兵組織に対する米軍の攻撃を支援した。
ブルームバーグ・エコノミクスのジェニファー・ウェルチ氏らは30日付のリポートで、トランプ氏は対イランで次の一手を検討しているものの、大規模な軍事行動の拡大には慎重にならざるを得ない要因が幾つかあると指摘。「トランプ氏は『戦いを続け、イランにとどめを刺す』としているが、同氏の判断に影響を与える要因を踏まえると、長期にわたる激しい戦闘に再び乗り出す意欲は限られているようだ」と記した。
今後の追加攻撃によって、戦争で大きな焦点となっているホルムズ海峡でのイランの支配力を弱められるかどうかも不透明だ。
米国のシンクタンク、ユダヤ国家安全保障研究所(JINSA)のジョン・ハンナ氏は、「ホルムズ海峡で米国の目的を達成する上で、さらなる軍事的エスカレーションが大きな効果を上げるとは懐疑的だ」とし、「トランプ氏や米国民、世界経済が受け入れられるような代償で実現できるとは思えない」と述べた。
米中央軍は最近の空爆について、ホルムズ海峡を航行する船舶への攻撃能力をさらに低下させることが目的だと説明している。ただ、トランプ氏は、イラン側が否定しているにもかかわらず交渉の継続を主張する一方で、無期限の空爆も辞さない姿勢を示すなど、発言が揺れている。米軍の軍事資源が逼迫しているとの見方については否定している。
こうしたなか、戦争がもたらす経済的・人的な犠牲は拡大している。史上最大の原油供給混乱の影響を和らげてきた緩衝材も、徐々に失われつつある。米国は記録的な原油輸出で中東からの供給減を補ってきたが、商業用原油在庫が2018年以来の低水準に落ち込む中、その余力は限られつつある。
報復の応酬により、米軍の兵器備蓄は一段と減少した。とりわけ、米軍基地への攻撃を迎撃するために不可欠な防空ミサイルの不足が深刻な懸念となっている。事情に詳しい関係者によると、先週トランプ氏と会談したダン・ケイン統合参謀本部議長は、イランへの攻撃再開は可能だが、重要弾薬の備蓄を巡る懸念が強まるとの見方を示した。
米シンクタンク、ディフェンス・プライオリティーズの上級研究員で軍事分析部門ディレクターを務めるジェニファー・カバナー氏は、弾薬をさらに消耗すれば、最大の地政学上のライバルである中国との有事に際し、米国が脆弱になる恐れがあると指摘する。
「この戦争を遂行するための弾薬が不足しているとは思わない。問題は、戦争を続けるために、どれほどの戦略的代償を払う覚悟があるかだ」と同氏は分析。「軍事行動を拡大することはできる。しかし、得られる成果は限られる一方、代償はさらに大きくなるかもしれない」と語った。
原題:Trump Faces Escalation Conundrum as Iran War Flares Once Again(抜粋)
--取材協力:Sonya Dymova、Iain Marlow.
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