(ブルームバーグ):韓国当局が29日夜に緊急会合を開いたことは、株式市場の激しいボラティリティーを抑え、相場を立て直そうとする強い危機感を浮き彫りにした。韓国総合株価指数(KOSPI)は7月に入り30%を超える下落となっている。
市場関係者の多くは、29日夜に発表された措置について、根本的な問題には踏み込まず周辺部分を手直ししたに過ぎないと受け止めており、さらにどのような対応が可能なのかを巡る議論が活発化している。
エトス・インベストメント・マネジメントのジェームズ・フレッチャー最高投資責任者(CIO)は、「政府は積極的に個人投資家の市場参加を促してきた。その結果、家計が市場に資金を振り向けたにもかかわらず、48時間でこれほど大きな損失を被れば、政府に対応を求める政治的圧力は極めて強まる」と述べた。
以下は、検討される可能性がある主な規制・市場安定策だ。
株式市場安定化基金
政府は、市場が混乱した際の安定化策として約10兆ウォン(約1兆1400億円)規模の基金を確保している。この制度が実際に使われることはまれだが、多額の損失を抱える個人投資家の反発が強まる中で、再び注目を集めている。
2024年終盤に当時の尹錫悦大統領が宣布した非常戒厳が混乱をもたらした際や、新型コロナウイルス禍でも活用が取り沙汰されたが、実際に発動されたのは2008年が最後だった。
インドスエズ・ウェルス・マネジメント(シンガポール)のアジア担当チーフストラテジスト、フランシス・タン氏は、この制度の活用はモラルハザード(倫理観の欠如)を招く恐れがあると指摘。
「個人投資家が政府の介入を求める状況は非常に難しい。韓国政府は株式市場安定基金を通じて対象を絞った流動性を供給し、市場心理の改善を図ることは可能だが、市場本来のシグナルをゆがめるリスクがある」と述べた。
世界有数規模の年金基金である国民年金公団(NPS)は政府と歩調を合わせて行動することが多い。しかし、ユアンタ・セキュリティーズ・コリアの株式調査責任者チェ・ヒョンジェ氏は、「国内株式の保有比率はすでに戦略的な配分目標を大きく上回っている」として、今回の局面でNPSが積極的に関与する可能性は低いとの見方を示した。
空売り禁止
フィボナッチ・アセット・マネジメントのユン・ジョンイン最高経営責任者(CEO)は、海外投資家の強い反発を受けて昨年解除された空売り禁止措置が再び検討される可能性があると分析した上で、「これは最後の手段と考える。根本的な問題を解決しないまま海外投資家の信頼を損なう恐れがある。当局が優先すべきなのは、市場調整が流動性危機へ発展することを防ぐことだ」と語った。
レバレッジETF規制
一部の投資家や国会議員は、サムスン電子とSKハイニックスの株価に連動するレバレッジ上場投資信託(ETF)の上場廃止を求めている。5月に投入されたこれらの商品は対象株式の値動きを増幅する仕組みとなっている。
ある投資家グループは国会正門前に弔花を供え、野党議員もそうした要求を支持した。
ピクテ・アセット・マネジメントのシニアインベストメントマネジャー、イ・ヨンジェ氏(ロンドン在勤)は、個人投資家によるレバレッジETFへの投資が相場のボラティリティーを拡大させ、その結果として海外ファンドが大規模な売りを余儀なくされていると述べ、個人投資家にとっても「誰にとっても得をしない状況だ」と説明した。
韓国の金融当局トップは、こうした商品の導入について遺憾の意を示しているものの、既存ETFを上場廃止とする可能性は現時点では低いとみられる。その代わりに当局は、新規上場を一時停止し、投資家の保有上限を設けるとともに、取引コストを引き上げている。
信用取引の証拠金規制
インドスエズのタン氏によると、個人投資家が借り入れを活用して株式を購入し、株価下落時に強制売却される動きがボラティリティーを一段と拡大させていることから、政府は証拠金規制の厳格化を検討する可能性がある。同氏は、シンガポールが投資家教育の強化を進めていることにも言及した。
規制強化によって信用取引残高の増加は抑制できる一方、口座が強制決済に追い込まれることで発生する機械的な売り圧力を和らげることも重要だという。
ユアンタのチェ氏は、その方法として、証券会社が担保要件を緩和したり、強制決済までに一定の猶予期間を設けたりすることが考えられると指摘。ただし、その場合は証券会社がより大きなリスクを負うことになり、信用取引関連収益の減少につながり得るという。
自社株買いルール見直し
政府は、自社株買い制度のルールを見直すことで買い需要を促すことも可能だ。特に、すでに自社株買い計画を公表しており、自社株が割安だと判断している企業を後押しする狙いがある。
企業には現在、一定期間内に取得できる自社株の数量に上限が設けられているほか、事前に公表したスケジュールに沿って買い付けを行うことが義務付けられている。
原題:These Are Korea’s Market Rescue Options as Stocks Extend Selloff(抜粋)
--取材協力:Youkyung Lee.
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