日本銀行が30、31日に開く金融政策決定会合では政策金利を据え置く見通しだ。円安の影響を含めて物価上振れリスクが意識される中、植田和男総裁の記者会見や最新の経済・物価見通しから次の利上げやペースを探ることになる。

複数の関係者によると、日銀は前回6月の会合で31年ぶりの高水準となる1%への利上げを決めたばかりで、影響を見極める観点からも今回は政策金利の据え置きが決まる公算が大きい。焦点は新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)で描く経済・物価シナリオと、それを踏まえた今後の金融政策運営となる。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

6月会合では、政策判断で重視する一時的要因を除く中長期的なトレンドを示す基調的な物価上昇率が「2%の物価安定目標を超えて上振れていくリスクがある」とした。今会合でも同様の見解が示される見込みだが、AI関連需要の高まりや堅調なインフレ期待指標、円安の進行など物価上振れリスクの高まりを意識させる材料は多い。

大和証券の南健人シニアエコノミストは、基調物価に対する認識など「中長期的な物価上昇をどう評価するか」を注目点に挙げる。その上で、予想物価の上昇や円安進行も相まって、物価の上振れリスクは高い状況が続いているとし、追加利上げも「従来の想定より早まる公算が大きい」とみている。

市場では、日銀の利上げペースは半年に1回程度との見方が多い。日銀はペースについて「経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら検討していく」としている。関係者によると、物価が上振れていくリスクに警戒感が強まる中、日銀は市場想定より速まることに柔軟な姿勢だという。

ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に16-22日に行った調査によると、次の利上げ時期は12月が最多の50%、次いで10月が40%で、90%が年内を見込む。6月の利上げ直後に実施した調査では、それぞれ52%、36%で、やや前倒しが進んだ形だ。

高市政権

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、日銀の政策対応が遅れているとの懸念を和らげるには、「3カ月に1度程度の0.25%の利上げで、政策金利を1.75-2%へ引き上げる必要がある」と指摘。しかし、利上げに不寛容な高市早苗政権との関係で、市場は半年に1回程度との見方になっているという。

政府が6月末に公表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案での日銀の金融政策に関する文言を巡り、利上げをけん制しているとの見方から円安と長期金利の上昇が進む、いわゆる「骨太ショック」が発生した。植田総裁の会見では、政権との関係や中央銀行の独立性に関して見解を問われる可能性がありそうだ。

今会合から6月30日に就任した佐藤綾野審議委員が参加する。金融緩和を重視するリフレ派に考え方が近いとみられている。6月会合で利上げに反対した浅田統一郎審議委員とともに、高市政権が指名した。利上げに前向きだった中川順子氏の後任で、政策議論や経済・物価見通しへの影響も関心事となる。

一方、高田創、田村直樹の2人の審議委員は2%の物価安定目標をすでに達成しているとの見解を示しており、連続利上げを提案しても不思議ではない。高田氏は0.75%に利上げした昨年12月会合の次の1月会合でも利上げを提案した。田村氏は6月の講演で、「数カ月に1度のペース」が基本線と発言している。

展望リポート

会合で議論する新たな展望リポートでは、供給懸念が広がっていた原油などの代替調達の進展や、世界的なAI関連需要の拡大などを背景に、2026年度の実質国内総生産(GDP)見通しが上方修正となる見込み。前回4月の同リポートでは、前年比0.5%増と中東情勢を受けて0.5ポイント引き下げていた。

消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しは、原油価格が前回想定よりもやや下振れていることや、政府による7-9月の電気・都市ガス代への補助金を反映させることなどが下押し要因になる。一方でAI関連需要や円安進行などの上振れ要因もあり、全体として大きな変化はない見込みと関係者は指摘した。

AI関連需要が物価に及ぼす影響に関する分析も注目だ。データセンター向けなどを含めた需要が国内にも幅広く波及し、需給ギャップの改善を通じて基調物価を押し上げる可能性に言及するかが焦点となる。

野村証券の松沢中チーフストラテジストはコアCPI見通しについて、原油価格の落ち着きを反映して足元は引き下げられるものの、先行きは据え置かれると予想。その上で、「もし成長上振れを反映して先行きが引き上げられれば、タカ派サプライズだ」との見方を示した。

他の注目点

  • 植田総裁は利上げを決めた6月会合を入院で欠席し、採決にも参加しなかった。2会合ぶりの会見での前回利上げの判断や影響に対する見解
  • 1%への利上げ後も金融環境は緩和的であることや、26年度後半から27年度にかけて2%の物価目標を実現するとの見方も変わらない見通し
  • 6月会合では、内閣府の出席者が過度な景気変動時の日銀の主体的な行動などを求めていたことが主な意見で明らかになった。政府出席者の見解にも関心

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