(ブルームバーグ):米自動車大手フォード・モーターは、今年2度目となる通期利益見通しの上方修正を実施した。利益率の高いスポーツタイプ多目的車(SUV)の販売が引き続き好調だ。
見通し引き上げは、SUVとピックアップトラックの底堅い需要が同社の利益を支えていることを示す。競合するゼネラル・モーターズ(GM)も先週、業績予想を上方修正した。
これら車種はフォードの重要な収益源となっている。赤字の電気自動車(EV)事業を縮小する中、関税やコモディティー相場の変動に伴うコスト上昇への対応も迫られている。さらに、収益化まで数年を要すると見込まれる新たなエネルギー貯蔵事業に20億ドル(約3280億円)を投じており、成長に向けた布石も打っている。
また、エネルギー貯蔵部門の生産能力を2027年末までに20ギガワット時に引き上げる計画を示している。ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は28日、生産能力を拡大する余地があると述べ、「これにより、フォード・エナジーは北米有数のエネルギー貯蔵メーカーとなる」とアナリスト向け電話会見で語った。
フォード株はニューヨーク市場の時間外取引で5.2%上昇した。28日終値までの年初来上昇率は14%と、S&P500種株価指数を上回っている。
4-6月(第2四半期)の米国販売台数は10%減少したものの、採算性の高いSUV「ブロンコ」と「エクスプローラー」の販売を伸ばし、影響を和らげた。特に、高価なオフロード走行性能パッケージを搭載した、利益率の高いモデルが好調だった。
米国の主要自動車メーカーは、内燃機関を搭載したSUVやピックアップトラックを増産している。燃費基準などEV普及を促す従来の政策をトランプ政権が大幅に緩和した機会を生かす狙いがある。
こうした規制上の制約が緩む中、SUVの好調な販売がフォードの利益を支え、主力ピックアップトラック「Fシリーズ」の在庫減少の影響を補った。ニューヨーク州にある米アルミニウム大手ノベリスの工場で昨年火災が発生し、車体パネル用アルミニウムの供給が滞ったことでFシリーズの在庫は減ったが、同工場は4-6月に操業を再開しており、フォードは年後半に減産分の一部を取り戻せるとみている。
投資家向け資料によると、フォードは火災に伴うFシリーズの減産分のうち、約25億ドル相当を取り戻すと見込む。従来予想は25億-30億ドルで、今回はその下限となる。
関税コスト
シェリー・ハウス最高財務責任者(CFO)は、今年の関税コストが10億ドルを超えると見込んでおり、その大半はノベリス工場の火災に伴うアルミニウム輸入によるものだと説明した。
ハウスCFOは28日の記者向け電話会見で、「ノベリスの供給混乱により、米国外からアルミニウムを確保せざるを得ず、非常に大きな関税コストが発生している」とし、「現在、関税コストの大半はアルミニウムと鉄鋼、輸入車に関するものだ」と述べた。
4-6月期の調整後希薄化後1株当たり利益(EPS)は42セントと、ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均の36セントを上回った。フォードは今年の利払い・税引き前利益(EBIT)が最大110億ドルになると見込む。従来予想は85億-105億ドルだった。28日の発表資料で明らかにした。アナリスト予想平均は約95億ドル。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、トム・ナラヤン氏は、見通し引き上げを受け、フォードの年後半の業績に対するウォール街の予想も上方修正される可能性があると指摘した。
エネルギー貯蔵事業への参入を受け、株価は5月に17年ぶりの大幅高を記録した。投資家が旧来型の自動車メーカーをAI投資ブームと結び付けたためだ。ハウスCFOによると、新事業の利益が決算に反映されるのは28年以降になる。
ファーリーCEOはアナリスト向け電話会見で、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)とエネルギー貯蔵契約を結んでいるかどうかには直接答えなかった。新部門の顧客獲得に向け、幅広い企業に働きかけていると説明した。
バッテリー事業への参入は、EV販売での苦戦を受けたものだ。ケンタッキー州のEV用バッテリー工場を、エネルギー貯蔵用バッテリーの生産拠点に転用する。
同工場は、韓国のSKオンと設立したEV用バッテリー合弁事業の一部だった。フォードは既に公表していた合弁事業の終了に関連し、4-6月期に主として現金支出を伴わない36億ドルの費用を計上した。
EV戦略を見直し
4-6月期のEV販売は41%減少した。プラグイン式ピックアップトラック「F-150ライトニング」の生産終了が響いた。業績不振のEV資産に関連して、計195億ドルの費用を計上している。EV戦略も抜本的に見直し、より低価格のモデルに注力する。まず、3万ドルの小型電動ピックアップトラックを27年後半に発売する予定だ。
ファーリーCEOは、同社が「ユニバーサルEVプラットフォーム」と呼ぶ車台を使い、複数の低価格EVを生産すると表明している。ケンタッキー州にある旧SUV工場で製造する計画だ。
低価格で先進技術を備えたEVを強みに世界で勢力を拡大する中国メーカーに対抗する上で、これらのモデルが極めて重要になると説明している。中国メーカーは現在、厳しい貿易障壁によって米国市場から締め出されている。
同CEOは、中国メーカーのコスト競争力と技術面の優位性を高く評価し、欧米の自動車会社にとって存亡を脅かす存在だと述べている。
フォードは先週、中国の吉利汽車と合弁会社を設立すると発表した。欧州向け電動SUVを共同開発し、スペインにあるフォード工場の生産設備を共有する。
中国のEV用バッテリー最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)とは、EVとエネルギー貯蔵向けのバッテリーを生産するライセンス契約も結んでいる。
原題:Ford Boosts Outlook on Strong Demand for Profit-Rich SUVs (2)(抜粋)
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