(ブルームバーグ):米株式市場では長年、夜間に数時間の休みがあった。だが12月から取引時間が大幅に延び、ほぼ24時間体制で売買できるようになる。
ナスダック、NYSEアーカ、24Xナショナル・エクスチェンジ、Cboe EDGXは、通常取引や既存の寄り前・引け後の時間外取引に加え、ニューヨーク時間午後9時から翌午前4時までの夜間取引を新設する計画をまとめた。12月6日から開始する。
海外投資家の需要拡大を取り込むとともに、ウォール街の「営業時間」という概念を覆しつつある暗号資産(仮想通貨)や予測市場に対抗する狙いがある。
夜間取引そのものは以前からあり、主に代替取引システム(ATS)を通じて行われてきた。ただ、全体に占める割合はまだ小さい。米証券取引委員会(SEC)のデータによると、4-6月期(第2四半期)の株式売買高に占める夜間取引の割合は約1%にとどまった。
それでも伸びは著しい。昼間の取引に比べれば規模は小さいものの、夜間の売買高は前年から358%増えている。
「週5日、1日23時間」の取引開始を前に、延長が市場参加者にどんな影響を及ぼすのかを巡って議論が広がっている。支持派は、時差の壁がなくなり、海外投資家が米国市場にアクセスしやすくなると主張する。一方、慎重派は、流動性の低下や売買スプレッドの拡大で取引リスクが高まるとみている。
クリシル・コアリション・グリニッジのシニアアナリスト、デービッド・イーストホープ氏によると、機関投資家が主に懸念しているのは、延長時間帯の「市場の質」だ。業務体制や人員配置への懸念は、必ずしも最優先ではないという。

同社が昨年実施したバイサイドの株式トレーダーを対象とする調査では、市場参加者がほぼ24時間体制の株式取引にそれほど前向きではないことが示された。通常時間外では参加者が少ないため、売買高の減少や流動性の低下、売買スプレッドの拡大といった問題が起こり得るためだ。そのため業務上のリスクや複雑さが増すほか、トレーダー自身の心身の健康に影響する恐れもあると調査は指摘した。
ただ、2025年下期に同調査を実施して以降、こうした見方にもやや変化が出ている。規制当局が制度変更を進める中、今では「避けられない流れだという認識が強まっている」とイーストホープ氏は話す。
夜間取引の発想はかねて、個人投資家や取引所の間で人気があった。夜間取引を提供しているATSの1つ、ブルー・オーシャン・テクノロジーズのブライアン・ハインドマン最高経営責任者(CEO)は、12月の変更が始まれば「いつもの顔ぶれは参加する準備ができている」と語る。
ただ、「業界内でもバイサイドと投資銀行はまだ参入に慎重だ」と指摘した。
市場インフラを担う主要企業も移行に備えている。米株取引の清算を担う米証券保管振替機関(DTCC)は6月、日曜午後8時から金曜午後8時まで稼働する24時間・週5日体制に移行した。
気配値や取引データを収集・配信する証券情報プロセッサー(SIP)も、夜間取引に対応するため、営業時間の延長について規制当局の承認を得ている。
テミス・トレーディングのパートナーで株式取引共同責任者を務めるジョセフ・サルッツィ氏は、インフラさえ整えば機関投資家の需要も後からついてくると推進派は考えているのだろうと指摘する。
ただ、「機関投資家は、流動性が低く、スプレッドが広い市場では取引したがらない」として、同氏自身は懐疑的だ。寄り前・引け後の時間外取引を合わせても全体の約10%にとどまることから、「取引時間は少な過ぎるどころか、多過ぎるとの見方もできる」と話す。
機関投資家は今のところ、様子見姿勢を続けている。取引時間の延長によって深夜でも価格形成が改善すれば、いずれ取引コストが下がり、機関投資家が夜間にも超過収益を狙えるようになるだろうと、リキッドネットの市場構造責任者、ジェフ・オコナー氏は指摘する。
夜間取引では、当然ながら海外投資家の存在感が大きく、SECのデータによると、4-6月期の夜間売買高の37%を占めた。一方、機関投資家は7%にとどまった。
取引は一部銘柄に大きく集中している。8月には、夜間売買高の半分が平均でわずか15銘柄に偏り、中国や香港に拠点を置く企業の1ドル未満の低位株が多く含まれていた。これに対し、通常取引時間では、256銘柄が売買高の半分を占めていた。
現在、ナスダックとニューヨーク証券取引所(NYSE)の通常取引は、米東部時間の午前9時30分から午後4時まで、週5日行われている。これに加え、午前4時から始まる寄り前取引、引け後に当たる午後4時―午後8時までの時間外取引がある。12月の時間延長後も、午後8時から午後9時まではシステム保守や取引処理のため、1時間の休止時間が残る。
原題:Sleepless on Wall Street: All-Night Stock Exchanges Coming Soon(抜粋)
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