(ブルームバーグ):韓国当局は輸出企業に対し、海外で保有するドル資金を国内へ還流させるよう促す動きを強めている。SKハイニックスによる過去最大規模の米上場が一つの契機となり、ウォン相場が急反発した流れを受けた形だ。
SKハイニックスは米国預託証券(ADR)を通じたナスダック市場上場で265億ドル(約4兆3330億円)を調達した。その後、保有ドルを売却したとみられ、これがウォン高進行のきっかけとなった。財政経済省の許昌第2次官は先週開かれた会合で、輸出企業に対し、輸出代金のうちウォンに両替する割合を引き上げるとともに、海外に滞留している資金を国内へ還流させるよう呼びかけた。
SKハイニックスによるドル売りは、1社の動きが為替市場を大きく動かすことを示した。当局がここ数カ月進めてきたウォン押し上げ策を加速させる判断を後押しした可能性が高い。その戦略は、外貨準備による直接介入だけに頼るのではなく、国内有数の輸出企業によるドル売りを活用するというものだ。企業による資金フローであれば、コストのかさむ為替介入よりも効果を発揮できるとの考えに基づいている。
ソウルのメリッツ証券のエコノミスト、スティーブン・リー氏は、「SKハイニックスが始めた動きは、企業全体によるドル売りの広い波に発展している」と指摘。「同社のADRの発行で得た資金に絡んだドル売りに加え、ウォン高基調が続いていることで、これまで外貨建て収入のウォン転換を先送りしていた他企業もドル売りに動き始めている」と話した。
韓国造船大手ハンファオーシャンは今月、約20億ドル相当のドル先物を売却し、追加のドル売りも示唆した。韓国銀行(中央銀行)のデータによると、韓国の輸出入企業によるドル先渡し取引の純売却額は4-6月(第2四半期)に174億ドルと、18年ぶりの高水準に達した。
韓国当局はサムスン電子、現代自動車、HD韓国造船海洋、サムスン重工業にも、海外資金の国内還流や為替ヘッジの拡大を要請している。
ウォン相場は2009年以来の安値圏で推移した後、7月に入って対ドルで約6%反発した。上期(1-6月)にアジアで最も下落した通貨だったウォンが、7月の騰落率では一転してアジアで最も上昇した通貨となっている。AI関連投資ブームの持続性への懸念から、海外投資家が韓国総合株価指数(KOSPI)上場株を約13兆6000億ウォン(約1兆5200億円)売り越したものの、ウォンは上昇を維持している。
もっとも、ウォンへの下押し圧力が完全に和らいだわけではない。韓国政府が3500億ドル規模の対米投資公約の実行を進める中で、株式市場の値動きは依然として不安定だ。ドル売りを継続するかどうかの最終判断は企業次第となっている。
ただ、当局はこうした追い風が当面は続くとみている。財政経済省のムン・ジソン国際経済管理官(次官補)はインタビューで、7-9月(第3四半期)には企業による先渡しのドル売りがさらに増加するとの見通しを表明。また、ADR発行による資金流入などは一時的なウォン押し上げ要因ではなく、需給変化の始まりだとの認識を示した。
ムン氏は「通り雨が終わろうとしているわけではない」とし、「雨期はこれから始まる」と語った。
原題:SK Hynix Listing Emboldens Korea’s Drive to Repatriate Dollars(抜粋)
--取材協力:Daedo Kim.
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