(ブルームバーグ):米名門一家に生まれ、ハーバード大卒の弁護士だった女性でさえ、お金の管理を夫に任せ切り、突然の離婚で資産をあやうく失いかけた。
米国では今、こうした体験を赤裸々につづったベル・バーデン氏のベストセラー回顧録「ストレンジャーズ」が話題を呼んでいる。結婚生活が突然破綻した経緯とその後を描いた内容は、多くの女性に夫婦の資産管理を見直すきっかけを与えている。
全米のブッククラブ(読書会)や金融リテラシー講座では、その体験を教訓として受け止める女性が相次いでいる。
ブルーム・アドバイザーズのパートナーで、ファイナンシャルアドバイザーを務めるジェニファー・ブルームさんは、「この書籍を読んで、行動を起こさなければならないと感じた」と語った。同氏は6月、米中西部ミシガン州デトロイト郊外で、女性が自ら資産を管理する方法を学ぶワークショップを開催。約24人が会場で参加したほか、26人がオンラインで参加した。
参加者の1人、ステーシー・ビーダーさん(51)は、バーデン氏の回顧録を読んだことをきっかけに、「必要な書類がどこにあるのか、受取人に誰が指定されているのか、ファイナンシャルアドバイザーにどう連絡すればいいのかを知っておく必要がある。夫とこうしたことを話し合わなければならないと気づいた」と語った。ステーシーさんは、これまで30年にわたり、家計や資産管理を夫に一任してきた。
ステーシーさんの変化を夫のジェイソンさんは歓迎した。救急医として働くジェイソンさんは、「何年も前から家計や資産について話し合おうとしてきた。この本でようやく妻が関心を持ってくれた」と述べた。
一方で、ブルームさんによると、こうした妻の変化を歓迎しない夫もいる。妻が急に家計や資産に関心を示し始めたことに戸惑う夫の声を耳にすることもあるという。「『余計な波風を立てないでくれ』といわれる」とブルームさんは語った。
1月に出版され、すでに12刷を重ねたバーデン氏の回顧録をきっかけに、お金のことを真剣に考える女性が増えている。ブッククラブは資産管理を話し合う場になり、「自分のお金に無関心でいるな」と題した勉強会は満員が続く。この本の影響で、ファイナンシャルアドバイザーや弁護士にアドバイスを求める人も増えているという。
ニューヨーク市マンハッタンで離婚案件を手掛ける弁護士のソーニャ・ウィット氏は、パートナーとの資産に関する取り決めを見直したい、あるいは新たに結びたいという女性からの相談が相次いでいると話した。
顧客の1人である40代前半の女性投資バンカーは、バーデン氏の著書を読んだ後、夫に婚後契約の締結を求めた。女性の年収は100万ドル(約1億6200万円)を超え、弁護士である夫を大きく上回る。婚前に築いた資産に加え、結婚後の収入の一部についても保護したいと考えたという。
バーデン氏の回顧録に説得力がある理由の一つは、自らを世間知らずだったとは描いていない点にある。同氏は裕福な家庭に育ち、父方は米名門一族ヴァンダービルト家の流れをくみ、母は著名な社交界の華、ベイブ・ペイリーの娘だった。ハーバード大学とニューヨーク大学で学び、企業弁護士として働いた経験もある。さらに、兄とは以前から、結婚する際には婚前契約を結ぶことで意見が一致していた。
Photographer: Joel Arbaje/Bloomberg
回顧録の中で、バーデン氏は婚前契約への署名を婚約者に求めたが、契約内容が見直され、結婚後に得た財産ではなく共有名義の資産だけを分ける内容になったと記している。結婚後は自らは仕事を辞めて子育てに専念する一方、夫はヘッジファンド業界で成功した。自身の信託財産を夫婦共有名義の住宅購入資金に充てた一方、夫の給与や賞与、投資収益は夫個人の資産として管理されていたという。
20年後に突然離婚を切り出された際、自分が財産の状況をほとんど把握しておらず、請求できる財産も限られていたことを思い知らされた。「夫が隠していたわけではない。私が見ようとせず、知ろうともしなかった」と振り返っている。
米国では、女性の収入が配偶者を上回る、あるいは同程度という世帯が増えている。それでも、多くの家庭では資産管理を男性が担っている。UBSによると、既婚女性の約半数が資産に関する判断を配偶者に委ねている。
また、フィデリティ・インベストメンツが6月に公表した調査では、女性の46%が配偶者に経済的に依存していると感じており、男性の16%を大きく上回った。さらに、夫婦の約半数は口論を避けるため、お金の話をしないと答えた。
シアトル在住の弁護士、クリティ・ガングリーさん(26)は、バーデン氏の回顧録をきっかけにこうした姿勢を改めた。同居中の婚約者とは銀行口座を別々に管理しているが、「株式をどの証券口座で保有しているのか、退職積立制度の資産はどうなっているのかといった具体的なことを確認するようになった」と話した。
マサチューセッツ州チェスナットヒルの書店ハミングバード・ブックスでは、「ストレンジャーズ」が今年最も売れたノンフィクション作品となっている。5月に開いたバーデン氏の講演会には予想を上回る申し込みがあり、店主のウェンディ・ドッドソンさんは、その後、店内で資産管理をテーマにしたワークショップも開催した。50人を超える女性が参加し、中には大学生の娘を連れてきた人もいたという。
原題:Hit Memoir ‘Strangers’ Has Wealthy Women Checking Marital Money(抜粋)
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