先月までの動き
年金数理部会は、2024年度の公的年金の財政状況について報告書を取りまとめた。年金広報検討会は、2026年4月から開始した新しい公的年金シミュレーターの試験運用の状況や、年金ポータルサイトの利便性向上などについて議論した。
ポイント解説:人口や経済の動向と、公的年金財政の将来見通しへの影響
年金数理部会は、2024年度の財政状況報告を取りまとめた。本稿では、公的年金財政に影響する人口や経済の動向を確認し、次回の将来見通しに及ぼす影響を考察する。
人口要素:出生率は低いが、入国超過数は多め
2024年の合計特殊出生率は1.15であり、2023年に公表された将来推計の低位(1.12)に近い。出生率が想定よりも低いと将来の加入者数や受給者数が想定よりも減るが、年金財政の将来見通しは約100年間を対象としていることを踏まえると、次回の将来見通しでは受給者数の減少よりも加入者の減少が影響する期間が長くなる。
死亡率は将来推計の中位よりも高くなっており、平均寿命の短縮という形で現れている。正確な動向は2025年の国勢調査から作成される完全生命表で明らかになるが、2023年推計の高位に近くなる可能性がある。死亡率が想定よりも高いと、年金財政では支出が想定より減る方向に働く。

入国超過数は、2023年の推計の想定を大幅に上回っている。入国超過数の約4割が20~24歳であるため、年金財政の将来見通しには、当面の加入者と将来の受給者の増加として影響する。

経済要素:2023年度の運用成果が貢献したが、物価上昇率が賃金上昇率を上回り財政改善を抑制
物価上昇率は、2024年は2024年7月に公表された将来見通しの想定と同水準で、2025年は想定より高い。物価上昇率が高いとマクロ経済スライドは効きやすいが実質賃金上昇率を低下させる要因となり、68歳以降の年金改定率を賃金上昇率よりも抑えて年金財政を改善させる仕組みが機能しにくくなる。
賃金上昇率は、2024年度は2024年の将来見通しと同水準だが、事業月報によると2025年度は高成長や成長型のケースよりも低くなる見込みである。賃金上昇率が高いとマクロ経済スライドが効きやすいが、実質賃金上昇率がマイナスだと、前述した68歳以降の年金改定による財政改善が機能しない。
運用利回りは、保険料収入の増加要因である賃金上昇率をどの程度上回ったかが、年金財政への貢献度を示す。この値は、2023年度が+20%、2024年度が-1.4%となった。

総括:2024年度末時点では想定より良好だが、将来に向けては人口要素の考慮も必要
2024年度末の公的年金の財政状況(積立金残高)は、将来見通しでは2023年度末の積立金残高を保守的(安全め)に見積もっている影響で、想定よりも良好である。しかし、将来に向けては、前述した人口要素の影響も考慮する必要がある。年金数理部会には、人口要素を考慮した定量評価を期待したい。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫)