アジアの輸出大国、日本と韓国は、中国が今歩んでいる道を切り開いてきた。日韓は製造業で競争力を確立した後、ソフトパワーを海外に売り込んだ。つまり、音楽や映画、テレビ番組、そしてそこから生まれる美のスタイル、さらにそのスタイルを実現する実用的な商品だ。

中国美容ブランドの輸出額は、韓国の約半分にとどまる。だが、その差は縮小している。韓国の「Kビューティー」が米国を最大の輸出先としているのと異なり、中国コスメの成長を支える主な市場は、少なくとも当面は欧米ではない。

中国の化粧品・パーソナルケア製品を総称する「Cビューティー」の成功にとって、最も重要な地域は東南アジアだ。日韓の競合に対抗し、低価格とハイペースの商品投入を売りにするとともに、より幅広い肌色に対応した製品や、この地域に暮らす2億人を超えるイスラム教徒が使用できる「ハラル」認証製品を提供することで優位性を築くことが期待される。

この戦略は、ジョイ・グループ(上海橘宜化粧品)で成果を上げ始めている。創業10年の同社は、化粧品ブランドの「ジュディードール」「ジューシー」に加え、2023年に中国事業を買収した高級フランス製ヘアケアブランド「ルネ フルトレール」を中心に展開している。

新型コロナウイルス禍を経て2023年に中国で経済活動が本格的に再開されると、ジョイ・グループはその2年前に進出していた東南アジアで事業拡大を加速させた。その集大成として、シンガポールで国外初の3店舗をオープンした。

その結果、海外売上高は3年間で10倍に膨らみ、2025年に8700万ドル(約140億円)に達し、グループ売上高は前年比22%増の6億2000万ドルとなった。海外市場の上位5カ国のうち3カ国が東南アジアだ。

中国最大の化粧品メーカー、珀莱雅化粧品も同様の戦略を取るべきだろう。同社は2025年に売上高が減少し、主力ブランドの売り上げも競争激化で10%落ち込んだことから、新たな成長エンジンを必要としている。 DFIリテール・グループのドラッグストアチェーン「ガーディアン」を通じてマレーシアで実店舗を展開することは、その一助となる見通しだ。

華やかなパッケージで知られ、浙江省杭州を本拠とする「花西子(フローラシス)」も、米市場の開拓を経て、軸足をアジアに移している。

こうした動きは、中東や中南米へのさらなる事業拡大の足掛かりにもなる。海外展開は必要に迫られたものでもある。中国国内の化粧品市場は競争が激化し、利益率が圧迫され、収益確保が難しくなっている。

中国勢のアプローチは成果を上げつつある。フィッチ・ソリューションズの調査部門BMIによると、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国向けの輸出は過去5年間で2倍余りに拡大した。世界で4番目に人口が多いインドネシアが最大市場となっている。

東南アジアは、中国とオンラインショッピングのエコシステム(生態系)が似通っていることから、Cビューティーにとって自然な進出先だ。東南アジアの主要な電子商取引プラットフォーム「ラザダ」「TikTokショップ」は、それぞれアリババグループと字節跳動(バイトダンス)が保有。そのため、中国で成功したライブコマースなどの販売手法を容易に展開できる。

さらにTikTokは販売チャネルにとどまらず、中国版「抖音」発のトレンドを主流に押し上げている。いわゆる「抖音メーク」は、アニメや中国の「仙侠ファンタジー」に着想を得た幻想的な印象を演出するため、人形のような大きな目元とグラデーションリップを特徴としている。

また、K-POPスターが韓国らしい控えめながら洗練された美意識を世界に広めたように、Netflixでグローバルトップ10入りした「逐玉:翡翠の君」などの中国ドラマは、東南アジアの視聴者にCビューティーを紹介する役割を果たしている。

もっとも、中国の美容関連輸出は57億ドルに達したものの、主要輸出国と比べると規模はまだ小さい。ニュースレター「プレーブック・オブ・ビューティー」を執筆するアレクシス・アマン氏によれば、その規模はフランスの約4分の1、米国の約60%にとどまる。

高成長のイスラム教徒人口の多い市場で、中国が一段と差別化を図る方法の一つは、製品がイスラム教の教義に適合していることを示すハラル認証の取得だ。

さらに、イスラム教徒が礼拝前に行う洗浄儀式「ウドゥ」の妨げにならないウドゥ対応の化粧品を開発できれば、その取り組みをさらに後押しするだろう。多くの韓国ブランドはビーガン(完全菜食主義者)やハラルに配慮した製品を展開しているものの、認証取得まで進めるケースは多くない。

Cビューティーは、フランスの高級ブランドを追い落としたり、米国の百貨店市場を制覇したりする必要はない。より現実的な戦略は、近隣の市場で圧倒的な存在感を築き、現地の好みに合わせて製品を磨き上げ、文化的なブランド力を育てた上で、さらに遠方の市場に進出することだ。

韓国エンターテインメントがKビューティーを世界的な現象へ押し上げたように、中国大衆文化の影響力拡大も、中国化粧品産業の追い風になるかもしれない。

(ジュリアナ・リウ氏はブルームバーグ・オピニオンのアジア担当コラムニストで、企業戦略や経営をテーマに執筆しています。以前はCNNでアジア担当シニアビジネス編集者を務めたほか、BBCニュースとロイター通信の記者として働いていました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:China’s Next Soft-Power Export Could Be Beauty: Juliana Liu(抜粋)

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