中東情勢の悪化を受けた原油高による業績影響が懸念され、割安な状態に陥った自動車株。たとえ米国とイランの戦争が終結しても、中国勢との競争という構造的な問題が重くのしかかっており、さえない値動きが続くとの見方が多い。

6月に米国とイランが和平で暫定合意に達してから、投資家は戦争によるマイナス影響への警戒を緩め、主要株価指数は史上最高値を更新した。一方、自動車株の景色は異なる。東証株価指数(TOPIX)の業種別指数で、自動車を含む輸送用機器指数は戦争開始以来18%下落。輸出・製造業セクターで最下位だ。中東情勢だけでなく、価格競争力が高い中国勢に押され、世界での存在感に陰りが出てきたことも影響している。

市場の焦点は今後発表が本格化する企業決算に移る。しかし、2026年の輸送用機器指数の1株当たり利益(EPS)予想は前年比19%減と、TOPIXの15%増に大きく劣後する。背景にあるのが、中東情勢や米国の関税、電気自動車(EV)の不振などだ。日本経済新聞の集計によると、25年の世界新車販売で中国車が日本車を抜き、初めて首位に立った。

「あえて今選ぶセクターではない」。富国生命保険の佐藤篤有価証券部長は自動車株についてこう話す。業績がここから悪化することはないだろうが、「中国勢に押され、販売台数の増加やマージン改善の道筋が見えにくい」と指摘する。好決算が期待できる銀行や受注改善の兆しがある機械、価格転嫁で中東影響を抑えられそうな一部の化学などと比べて、投資妙味に乏しいとの見方を示した。

こうした現状は株価に反映されている。ことしの日本株市場では、トヨタ自動車がキオクシアホールディングスや三菱UFJフィナンシャル・グループなどに長年守ってきた時価総額トップの座を明け渡した。TOPIXに占める自動車株の時価総額の割合は約5.6%と、2000年以降で最低水準。株価純資産倍率(PBR)は0.9倍台とTOPIXの半分程度にとどまり、割安に放置されている。

もっとも、日米金利差や財政懸念などを背景に為替が円安基調にあることはプラスに働く。対ドルで160円を超える円安水準が続いた場合、自動車大手7社の今期(27年3月期)営業利益は9000億円超押し上げられる計算だ。

自動車業界では、中東影響によるエネルギー供給の混乱を受け、停滞してきたEVへのシフトが進むとの声もある。これに対して、日本車メーカーは「EV競争で出遅れており、ネガティブではないか」としんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーはみる。自動車株は構造的な事業環境の厳しさからバリュエーションが上がりにくく、決算で懸念を払拭できなければなかなか買えないと語る。

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