ブルームバーグがまとめた最新の為替アナリストランキングで、ドル・円相場の予測精度が最も高かったトップアナリストは来年に1ドル=170円まで円安が進む可能性があるとみている。流れるニュースにほぼ左右されず、テクニカル分析に重点を置く独自のモデルで導き出した。

インド東部のコルカタに拠点を置くクシティジ・コンサルタンシー・サービシズの創業者で、通貨ストラテジストも兼任するビクラム・ムラルカ氏は4-6月期のブルームバーグ調査で160円を超す円安を予想した数少ないアナリストの一人だった。円相場は7月初めに一時162円84銭と約40年ぶりの安値を更新した。

同氏の分析は、財務相らによる口頭介入を含む日本政府などからのニュースには反応せず、市場が発するシグナルに集中することが特徴だ。同氏のデスクに並ぶモニターの画面は、日経平均株価と米ダウ工業株30種平均の相対的な強さを示すデータ(ND倍率)や日米短期金利のスプレッド(利回り差)、中国人民元と円相場などさまざまなチャートで埋め尽くされている。

ムラルカ氏はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、「われわれはニュースをそれほど重視していない」と明かした上で、「分析対象は全て価格チャートに落とし込めるものであるべきだ」との考えの下、複数の変数を総合的に分析していると説明した。1991年から為替の取引や分析に従事してきた同氏は、4-6月期の予測ランキングでユーロ・ドルの正確性でも2位だった。

円については、あらゆるデータの中でも近年は日経平均とダウ平均のデータとの相関性が強いと指摘。理由については明確に説明できないとしつつ、相場の予測に役立つことは分かっていると言う。

約40年ぶりの安値を付けた円売りの背景には、米国と日本の依然として大きい金利差や高市政権の積極的な財政政策への懸念がある。円安抑止のため、日本の通貨当局は4月28日から5月27日にかけて過去最高の11兆7300億円に及ぶ円買い介入を行ったが、反発は一時的で早々に下落トレンドに戻った。

ムラルカ氏は、投資家が低金利の円を借り、海外の高金利通貨に投資する円キャリートレードも引き続き円安圧力になるとみている。

向こう1年の相場について「170円が妥当な目標で、それを突破すると一段とドル高・円安が進む可能性がある」と予測。当局の介入は「市場の方向性を変える能力は大きく低下している」との認識だ。同氏の分析で最も円に強気なシナリオでも、短期的に154円程度までしか反発できないと言う。

片山さつき財務相は再三、為替相場について必要に応じいつでも適切に対応するとの姿勢を強調。通貨政策の現場責任者である三村淳財務官は今月行われたブルームバーグのインタビューで、日米当局の連携は最も緊密な状態で、先に行った介入効果はあったとの認識を示した。

さらに片山財務相は先週、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など年金基金に国内資産への投資拡大を促すことを検討すると表明。この発言で円は一時的に円高方向に振れたが、市場関係者の間では財政・金融政策に根本的な変化がない限り、円上昇の持続性に対し懐疑的な見方が多い。

日本銀行は6月に政策金利を31年ぶりの高水準となる1%程度に引き上げ、物価情勢に応じ追加利上げの機会を探るが、市場の金融政策見通しを反映するスワップ市場は年内の利上げは1回にとどまる可能性を示唆。利上げタイミングを模索する米国との金利差は埋まりづらい状況だ。加えて経済成長を重視し、金融緩和に好意的な高市早苗首相の姿勢も日銀にとってのリスクと市場はみている。

コングロマリット企業であるエッサール・グループでトレーダーとしてのキャリアをスタートし、96年にクシティジを設立したムラルカ氏。「世界の中央銀行の中で利上げに非常に積極的な姿勢を見せるのは日銀が最後になるだろう」との認識を示し、「主なシナリオとして円安が進むだろう」と語った。

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