PPIが弱かったことは株式市場にとって朗報

7月15日の米国株式市場は、6月のPPIが弱めの結果となったことを受け、堅調な推移となった。

注目されていた6月PPIは前年同月比の伸び率が前月から鈍化したほか、前月比は▲0.3%となり、市場予想を下回った。エネルギー製品など財の価格下落が目立った。AI需要に関連する電子計算機や計算機関連機器などは価格上昇が続き、PPIコアの前月比は+0.2%となったことから、今後の推移を見極める必要があるものの、一旦はインフレ懸念を弱める結果となった。前日に公表された6月CPIが弱めの結果だったことを踏まえても、当面はFRBの利上げ観測が後退していくことになるだろう。

企業業績のことを考えると、PPIが弱めの結果になったことは朗報である。
仮に、CPIが弱くてPPIが強いというパターンになっていれば、企業のマージンが圧迫されているという評価になっていただろう。もっとも、しばらくは米経済の動向を確認する時間帯が続く公算である。16日に公表される予定の6月小売売上高や8月7日に公表される予定の7月雇用統計などにより、評価が定まってくるだろう。

弱いインフレ指標に対して、FRBは順当にハト派化

7月15日の米国債券市場では、利上げ観測が後退し、金利が低下した。

長期金利は前日比▲4.2bp、2年金利は同▲5.9bpと、イールドカーブはブルスティープ化した。10年実質金利は同▲2.0bp、10年BEIは同▲2.3bpだった。前日に公表された6月CPIに続き、この日に公表された6月PPIも弱めの結果となったことを受け、インフレ予想が低下した。また、FRBの利上げ観測が後退し、FF金利先物市場では、9月FOMCまでの利上げ回数の織り込みが約0.55回となり、前日の0.66回から減少した。26年中の利上げ回数の織り込みも約1.05回となり、前日の1.24回から減少した。

ウィリアムズNY連銀総裁が「インフレはすでにピークに達しており、向こう数四半期にわたり徐々に低下していくと期待できる心強い理由がある」(ロイター)と述べたことも注目された。FRBは6月FOMCのドットチャートで年内の利上げを躊躇しない姿勢を示したが、27年は利下げに転じるという見方が多かった。6月のCPIやPPIのような弱めのデータが続けば、比較的すぐにハト派化していくことが予想される。もっとも、利下げが議論されるまでにはややハードルがある。

ウィリアムズ総裁は「インフレ率は約4%と、間違いなく高すぎる。FRBが長期的な目標としている2%を大幅に上回っている」(同)と指摘した。インフレ指標の結果で短期的にFRBが利下げの議論を始める可能性は低いため、相対的に雇用統計への注目度が高まりやすい状況である。

ウィリアムズ総裁 いずれのインフレ要因にも楽観的姿勢示す

ウィリアムズNY連銀総裁は15日、“Stability of Thy Times”(汝の時代の安定)と題する講演を行った(筆者訳。以下同)。ウィリアムズ総裁は「インフレ率は約4%と、疑いなく高すぎる水準にあり、FOMCの長期目標である2%を大きく上回っている」とし、「第一は、輸入品に対する関税引き上げの影響」「第二は、中東紛争によるサプライチェーンの混乱とエネルギー・商品価格の上昇」「第三は、テクノロジー投資の急増に伴う特定財および電力に対する旺盛な需要」という3つの要因を挙げた。すでに公表されている6月FOMCの議事要旨と同様の指摘である。

これらについてウィリアムズ総裁は、以下の6つの要因に分けて丁寧に説明した。

①「私の見通しでは、新たな関税が導入されたとしても、それは主として縮小された関税や間もなく失効する関税の代替となるものであり、この要因から今後物価に大きな追加押し上げ圧力が生じることはないであろう」

②「住宅関連インフレは過去3年間に観察された低下傾向を維持すると考えられる」

③「現在の原油価格と来年に向けた先物市場の価格形成を踏まえると、エネルギーおよび関連財の価格はおそらくピークに達しており、ホルムズ海峡が封鎖されるとの懸念が高まる前の水準に近づく方向で低下するとみられる」

④「AI関連投資に起因する需給不均衡は、供給能力が拡大するにつれて徐々に解消されるはずである」

⑤「労働市場がインフレ圧力を高めている証拠は見られない」

⑥「中期および長期のインフレ期待は引き続きしっかりとアンカーされている」

いずれも、インフレ懸念に対して楽観的な姿勢である。ウィリアムズ総裁は金融政策について、「インフレ率は高水準にあり、それをFRBの長期目標である2%へ持続的に戻すことが不可欠である」「現在の金融政策スタンスは、その目的を達成するうえで適切な位置にある」と説明した。この発言は、現在の政策金利は引き締め的な水準にある(中立金利より高い)という判断をしているということであり、将来的な利下げにつながる可能性を示唆する発言と言える。ウィリアムズ総裁は「多くの安定要因が存在するとはいえ、依然として相当なリスクが残っている」と付け加えることを忘れなかったが、ほとんどインフレを懸念していない印象である。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)