(ブルームバーグ):AIブームや戦争、インフレ懸念が熱狂と不安をかき立てる中でも、ウォール街のトレーダーは毎回のように勝つ術を見いだしている。
米大手銀行5行が14日に発表した4-6月(第2四半期)決算では、株式取引部門が相次いで過去最高を更新した。JPモルガン・チェースは株式取引収入だけで60億ドルを稼ぎ、過去最高を記録。ゴールドマン・サックス・グループは74億2000万ドル(約1兆2000億円)と業界最高を更新した。この傾向を象徴するように、シティグループの45%増収でさえ、株主からは物足りないと受け止められた。
AIブームが警戒感をものともせず続く中、大手銀行のトレーディング部門には、投資家が絶えずポジションを組み替える動きが押し寄せている。米軍がイランとの戦争への関与を一段と深め、アフォーダビリティー(暮らし向き)問題が一般消費者を一段と圧迫する中でも、ウォール街の株式トレーディング部門は勝ち組であり続けている。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、過去最高の業績を発表した後、「市場は今まさに活況を呈している。これ以上ないほど好調な状況に近い。ただ、それがいつまで続くかは分からない」と述べた。
特筆すべきは、ゴールドマン・サックスの株式取引部門がこの3カ月間だけで2019年通年の収入を上回ったことだ。それ以降、過去50年で最悪のインフレや100年に一度のパンデミック、従来の常識を覆す大統領、そして革新的な新技術が市場を大きく揺さぶり、長年の低迷を経たトレーディング事業の収益見通しを一変させた。
トランプ大統領が昨年就任した当時、米銀大手6行の株式取引収入の合計額の最高記録は135億ドルだった。その後は6四半期連続でこの水準を上回っている。
モルガン・スタンレーが15日に決算を発表すれば、今回は合計で250億ドルを超える見通しだ。
活況を呈する資本市場も追い風となっている。政府系ファンドや個人投資家が新規株式公開(IPO)や増資案件に積極的に資金を投じ、その流れはイーロン・マスク氏を世界初の資産1兆ドル超の富豪に押し上げたスペースXの過去最大規模の上場で頂点に達した。
こうした動きに加え、企業の合併・買収(M&A)市場も持ち直しており、銀行の市場部門全体が本格的な活況に入っている。
四半期決算では、投資拡大や優秀な人材の確保に向けた報酬増額を急ぐ中、費用の増加も目立った。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の費用は市場予想以上に増加。JPモルガンは通期の費用見通しを引き上げ、急増する収入のうち最終利益にどれだけ反映されるかを投資家が見極める展開となった。
JPモルガンは、従業員に対しAIの利用を戦略的に進めるよう促していると明らかにした。報告書の要約といった単純な作業では、最新の高性能モデルではなく、より低コストのモデルを使うよう求めているという。ジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は、今年上期のAI利用に伴うトークン支出は「ごくわずか」だったと述べた。
一方、大手銀行各行は今回も、米経済の基調や消費者の健全性に対して安心感を示す見解を相次いで示した。これに対しペプシコは、ガソリン価格の上昇を受けて一部の消費者が支出を抑え、買い物の際に厳しい選択を迫られているとの慎重な見方を示した。
景気を押し下げるリスクへの警戒は続くものの、市場の関心は依然として熱狂的な投資姿勢とレバレッジに集まっている。これら2つの要因が、ニューヨークから香港をはじめ世界の市場を過去最高値圏へ押し上げる原動力となっている。
JPモルガンのバーナムCFOは、「今四半期の収益ペースが今後も続くと期待できるかと言えば、答えは明らかにノーだ」と述べた。「懸念を抱かないのは無邪気すぎる。ただ一方で、心配しようと思えばいつでもできるし、それでも相場は上昇を続けている」と語った。
原題:Wall Street Traders Seize on Fervor and Fear to Set Records (1)(抜粋)
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